負けて悔い無し
===転送===>観客席
「ただいまっす皆さん・・・負けてしまったっす」
「まうー・・・」
ベルバアルさんに負けてしまったボクは、ボクとの合体が解けたルドラと一緒に皆のいる観客席まで戻ってきたっす。
「お疲れ様、アシュラ・・・頑張ったね」
「そうなのです! アシュラちゃんたちは頑張ったのです!!」
「うむ、良い試合だったのだ」
アスター、アーニャちゃん、アヴァンくんが慰めの言葉をくれたっす。
うぅ・・・皆の優しさが心に染み渡るっす。持つべきものは仲間っすね。
「・・・ところであれはなにをやってるんすか?」
ボクが視線を向けた先・・・そこにいたのはロープで簀巻きにされたガットさんと、それを取り囲むアニキにアテナの姉御、アルマの姉御がいたっす。
「あー・・・・ハハハハ」
・・・アスターが苦笑いを返してきたっす。・・・なにがあったんすかね。
と、そこでアニキたちがボクたちに気が付いたっす。
「ん?・・・おお、アシュラ。お疲れさん」
「お帰り、アシュラちゃん。よく頑張ったわね」
「ええ、良い試合でした」
・・・ねぎらいの言葉が嬉しいんすが・・・今はそれより目の前の状況の方が気になるっす。
そんなボクの心を知ってか知らずかアニキたちは縛られたガットさんに詰め寄ってるっす。
「おら、キリキリ吐け」
「ワシは知らんと言っとるじゃろうが!!」
「罪は早めに告白した方が軽くなるわよ?」
「罪ってなんじゃい!? ワシが話せることなんぞなにもないわい!!」
「今なら氷漬けの刑で勘弁してあげますから」
「それは許された時の対応じゃないだろう!?」
・・・うーん、一体ボクがいない間になにがあったんすかね。
「おや? 君は知らなかったんだっけ?」
ボクの疑問に答えてくれたのはラングさんだったっす。
「君が戦ったベルバアル君の装備・・・【魔剣グラトリオン】と【魔鎧ベルゼリオン】だっけ? その装備を作ったのはガットなんだよ」
「そうなんすか!?」
まさかの【魔剣】と【魔鎧】の製作者がここに!?
「より正確に言うならベルバアル君の装備はガットが作った物、ということしか聞いていなかったんだよね。まさかそれが【魔剣】だの【魔鎧】だの僕たちにも予想外で想定外だったんだよ」
・・・なるほどっす。
だからアニキたちは、そんなこと聞いてねぇぞ!ってガットさんに詰め寄ってるんすね。
と、ボクにそのことを教えてくれたラングさんはドナドナされているガットさんの元に歩み寄っていったっす。
「・・・そう言うわけだ、ガット。さっさと吐いてもらおうか? どうやって【魔剣】や【魔鎧】なんて作ったんだい?」
「お主もか!?」
・・・アニキたちの詰め寄りにラングさんも加わったっす。
「だ!か!ら! ワシは知らんぞ!! ワシがベルバアルに渡したときの装備はお主らのものと同じ・・・いや、むしろ劣るくらいのものだったはずじゃ!! 【魔剣】や【魔鎧】なんぞじゃ決してなかったわい!! どうなっておるのかはワシのほうが聞きたいくらいじゃわい!!」
ガットさんが必死な表情で弁明してるっす。
ということはベルバアルさんが持っていた【魔剣】や【魔鎧】はガットさんが作ったんじゃなく、ガットさんが作った物をベースに改造されてできた物ってことなんすかね?
「・・・本当だろうな?」
アニキが胡散臭そうな顔でガットさんを見てるっす。
「嘘は君のためにならないよ?」
ラングさんまで一緒になって・・・さすがにガットさんが可愛そうになってきたっす。
「本当じゃ!!」
ガットさんも必死っす。
「・・・チッ! どうやら本当みたいだな。仕方が無い、これで勘弁してやる」
アニキがそう言うとガットさんを解放したっす。それにしたがって他の皆さんも詰め寄りをやめたっす。・・・にしてもアニキ、ガラ悪いっすよ? たまにこうなる時があるんすよね、アニキは。
「何はともあれ良く頑張ったなアシュラ。ルドラも・・・これをやろう」
「そ・・・それは!?」
「まう!?」
アニキが取り出したのはアーニャちゃん特製クレープ!! それもただのクレープじゃないっす!!
アスターの畑で取れた【精霊界】産の果物と【幻獣界】で採れた極上素材をふんだんに使った超豪華クレープ!!
あまりの美味しさに、普段からこればかり食ってたら駄目人間になる!! とまで言われるほどの一品っす!!
なもんで特別な時以外は厳重に管理されているという・・・まさかここでそれが出てくるなんてっす!!
「い・・・良いんすか、アニキ?」
プルプル震えながらクレープを受け取るボクとルドラ。
「うむ。負けたのは残念だが、良い試合だったからな。全力で戦った結果にケチをつけるほど俺も野暮ではない・・・存分に堪能するが良い」
「アニキ・・・ありがとうっす!! 頂きますっす!!」
「まうー!!!」
ボクとルドラは貪るようにクレープを口につけたっす。
・・・ああ、幸せっす・・・
===視点切替===>アルク
アシュラとルドラは幸せそうに極上クレープを頬張っている。・・・ほとんど昇天しかけている気がするが気のせいだろう。
・・・正直な所、アシュラは自らフラグを立てまくって強敵に挑み、負けたんだからある意味で自業自得なんだが・・・まあ、フラグがどうあれ強敵とどこかでぶつかるのは時間の問題だったわけだし、アシュラ本人の頑張りは本物だからな。
労うのは悪くことではないだろう。
それにベルバアルの【魔剣】や【魔鎧】の情報を事前に知れたのは大きい。何も知らないまま挑めば俺だって負けていたかも知れん。
そういう意味ではアシュラは良い仕事をしてくれたってことだが・・・
「・・・とはいえ、俺たちの妹分をボコボコにしてくれた事は許せんな。この後の試合でベルバアルとぶつかったら・・・速やかにその首を刎ねてやろう」
「いえ、私の矢で串刺しにしてやるわ!!」
「いいえ、私が氷漬けにします」
「・・・皆さん、物騒すぎますよ」
物騒な事を言いあう俺たちにアスターが苦笑気味に言ってきた。
いやいや、別に俺たちはアシュラの敵討ちをしたいとか、そんなんじゃないんだよ? 単に俺たちの妹分をかわいがってくれたお礼をしなきゃいけないと思ってるだけだよ?
「・・・皆さん、落ち着いてくださいっす」
極上クレープを食ってやばい顔しながらトリップしていたアシュラが戻ってきた。
「ボクは満足したっすよ? 確かにアニキたちと一緒にベスト16まで残れなかったのは残念っすが・・・ベルバアルさんほどの強者と戦えたんすから!!」
・・・満面の笑みで答えるアシュラからは微塵も悪い感情を感じない。本当に強者に挑んで満足した、という感じだ。
・・・負けたにも関わらず悪感情を残さないのは素直にすごいな。
俺だったら・・・死ぬほど悔しがって相手に悪態ぐらいつくだろうな。
まあ、アシュラが気にしないと言っている以上、俺たちが気にすることではないだろう。
・・・どっちにしろ、ベルバアルと試合でぶつかったらフルボッコにすることは確定なんだしな。
===視点切替===>ベルバアル
「・・・ひっ!?」
「どうなされたんですか、ベルバアル?」
「・・・いや、今なんか悪寒が・・・」
「おいおい、口調が戻ってるよ! 勝ったんだしシャッキリしな!!」
「む?・・・そうだな。フハハハハ、あの程度の小娘、我が敵ではないわ!!」
「そんなことおっしゃってますとアルクさんにボコボコにされてしまいますよ~?」
「・・・すいません、失言でした。アシュラさんはとってもとっても強かったです」
『・・・なんでこんな奴が俺様の持ち主なんだよ』
『偉そうに言える立場ですか? 大して役に立たなかったのに・・・』
『なんだとゴラァ!!』
「・・・ハァ・・・なんで君たちはそんなに仲が悪いんだよ」
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