勝利を掴んだ者
===転送===>観客席
「・・・ただいマンモス」
「「「「しょーもなっ!?」」」」
・・・おおう、ちょっと寒い親父ギャグ挨拶をしたら総出で面白くないツッコミを受けてしまった。・・・無念。
「急につまんない事言ってどうしたのよ、アルク? 何か面白い事があったの?」
「いえ、むしろ面白い事があったから面白い事を言おうとしたのでは? どんまい、です」
観客席には既にアテナとアルマが戻っていた。そういえば今回は司会者たちの茶々が聞こえなかったが・・・そうか、アテナたちの試合の実況に行ってたのか。・・・俺たちの試合も盛り上がってたと思うのだが・・・残念だ。あと二人とも、大きなお世話だ。
「また面白い相手と戦っていたね、アルク。観客も司会者たちも盛り上がっていたよ」
ラングの奴が面白そうに話しかけてきた。お前は新情報が見つかって嬉しいだけだろ。
「って盛り上がってた? 司会も?」
「うん、あの鬼はなんだー!とか、なんて馬鹿力だー!とか、アルク爆発しろーだとか」
・・・全然聞こえなかった。・・・あとラング、最後のは嘘だろ?
「どうも選手側だと戦いに集中していると司会とか観客の声が聞こえなくなるみたいよ? 集中すればするほど周りの声が聞こえなくなるみたい」
「対戦相手の声 > 司会の声 > 観客の声みたいな優先順位があるみたいですよ? 現に私も試合中は対戦相手の声以外はほとんど聞こえませんでしたし」
・・・ふむ、ゲームの中の不思議仕様だったか。そういえば俺も途中から司会の声も聞こえなくなるし、観客の声なんて全然聞こえなかったな。
「中にはヤジを飛ばす観客もいるからね。 試合に集中する為の配慮なんだろうさ」
なるほど・・・ってことはそのぐらい俺は試合に集中していたという事か・・・確かにナユタは強敵だったが・・・
「集中っていうより興味津々だったんじゃない? 【陰陽師】に【法力】だっけ?」
「確かに【忍者】と並んで興味がもたれそうですからね。さらに今回の試合で実物まで知ることが出来たとなると・・・また掲示板が荒れそうですね」
・・・確かに【忍者】クラスが発見された時はあっちこっちで阿鼻叫喚だったからな。情報を求めて掲示板が荒れ、情報が公開されるとプレイヤーが一斉に移動し始めた。【陰陽師】とか公開されたらまた同じ事が起こりそうだ。
まあ、ナユタに公開する気があればの話だが。ただ公開しなくても存在する事は確実になったわけだから・・・探し回るプレイヤーは増えるだろうな。
「神様ならぬ仏様の力を借りてくるプレイヤーがいるとは思わなかったのです」
俺もだ。
「うむ、正直、我の【兵器】とは相容れない分野なのだ。・・・アルク、予備の【ビートル君】を渡しておくのだ」
すまん、アヴァン。さっきの試合で補充したばっかりだったのにな。これも全て拙僧の未熟さゆえ・・・精進せねば・・・とナユタ風に反省しておく。
「・・・で? ロゼさん他、【インフォガルド】のメンバーはどこに行ったんだ? ラング?」
「ハハハハ・・・」
・・・ナユタを探しに行ったのか。情報を売ってもらえるよう交渉する気だな。
しかし、【陰陽師】についてはともかく【法力】・・・【印】や【真言】の事まで教えてもらえるか? 坊さんが金で動くとは思えんのだが・・・ああ、アイツ【破戒僧】だから可能性はあるのか。
だが、情報の価値は計り知れないしな。俺だって教えて欲しい所だ。
それだけナユタの使った【法力】は強力だった。特に召喚が阻まれたのは衝撃だった。
ぶっちゃけ、俺の切り札の中にはアーテルやアウルのスキルも含まれているからな。
アーテルかアウル、どちらかだけでも召喚できたなら勝率はグッと上がるのだが、召喚できないとなると・・・正直厳しい。
かと言って試合のルール上、予め【眷属】を召喚しておくなんてことは出来ないしな。
この後の試合でも召喚が邪魔されることを想定しておいた方がよさそうだ。
「まあ、何はともあれアルクとお嬢ちゃん二人はベスト16に残る事が決まったのう」
思考の海に飲まれそうになった所でガットの言葉に呼び戻される。
「・・・そうか、アテナもアルマも勝ったんだな?」
「ええ」
「なんとか。アルクさんほどではないですが苦戦しましたけどね」
ふむ、となると今回のトーナメントの上位16人の内、3人が【アークガルド】のメンバーということになる。これって結構優秀な成績なんじゃね?
あと、残るは・・・
「次はボクが勝てば4人になるっすよ!!」
見るからにやる気が漲っているアシュラを残すのみ、か。
ここまで来れば【アークガルド】の中から脱落者なく最終日まで行きたい所だが・・・あ、これもフラグかな。
「気がはやるのも分かるけど落ち着いて、アシュラ。まだどんな相手と対戦するのか分からないし、冷静に対処しないと駄目だよ?」
アスターがたしなめるようにアシュラに言うが・・・
「分かってるっすよ!アスター!ボクは何時だって気合十分っすよ!!」
・・・分かってねぇじゃねぇか、アシュラ。アスターが頭抱えちゃったよ?
「と、言うわけで時間が来たみたいなんで行って来るっす!!」
そう言ってアシュラは転送の光に包まれて消えていった。
「・・・まだ、試合が始まってもいないのに慌しい奴だ」
「まあまあ、あの元気な所がいかにもアシュラちゃんらしいじゃない」
「むしろ元気が有り余ってるみたいですけどね」
子供か。・・・見た目十代だから子供なのか・・・リアル年齢は知らんが。少なくとも精神年齢は子供だな。
「・・・本当に大丈夫なんでしょうか?」
アスターはやはり不安そうだ。その不安ってアシュラが負けないかどうか不安なのか、やり過ぎないかどうかの不安なのか、どっちだ? ・・・多分、両方だな。
「さあな・・・盛大にフラグ立てまくってたし・・・やばいんじゃないか?」
俺はアシュラが転送された試合会場を指差す。
正確にはアシュラと対面している対戦相手を、だが。
「え?」
「あ・・・」
「おー」
「む」
「・・・はぁ」
その対戦相手を見た【アークガルド】のメンバー全員がため息を漏らした。
その残念そうなため息は果たしてアシュラに向けたものなのか、それとも対戦相手に向けたものなのか・・・
そう、アシュラの対戦相手は・・・
「ダーッハッハッハ!! 小娘! お前が我輩の対戦相手か!?」
あの偉そうで、それでいてうっとおしい叫び声。
クラン【ディアボロス】のリーダー、ベルバアルだった。
・・・アシュラの奴がかつてなく満面の笑顔なのは気のせいだと思いたい。
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