天へと到る者
赤い鬼のオーラを発してたたずむナユタ。
そんなナユタから感じるこれは・・・間違いなく【神気】。
【勇天ストラッシュ】たちや【戦闘神スサノオ】を対峙したときに感じたものと同じだ。本当に神様・・・いや、仏様か・・・の力を宿したらしい。
【羅刹天】・・・たしか怪力で足が速く、人を惑わし食らう鬼だったはず。【毘沙門天】の【眷属】となったことで鬼神となったとか・・・
つまり・・・
「往くぞ!!」
鬼神のオーラを纏ったナユタが錫杖を構えながら向かってきた。
早い・・・!?
ナユタが振り下ろした錫杖を【閃槍アーディボルグ】で受け止める俺。だが・・・
「うおっ!?」
あまりの圧力に思わず膝をついてしまった。
なんてパワーだ・・・これが鬼神の力!?
「ぬぅぅぅん!!」
「ぐおっ!?」
や、やばい・・・このままじゃマジで押しつぶされそうだ。
「【身代わりの術】!」
ポンッと煙が巻き起こり、視界がぶれる。
視界が戻ると俺は先ほどまでいた位置から2メートルほど後ろの場所に居た。
代わりに俺がいた場所には木でカカシがいた。
【身代わりの術】は文字通り、俺と身代わりを入れ替えるスキルだ。身代わりアイテムを持っていないと発動できないがBPを消費しないので大変助かる。
俺が使った身代わりアイテムは、【身代わり人形】とも呼ばれる手足の短い木でできたマネキンのようなカカシだ。もっと上等な身代わりアイテムを用意すれば他にも色々できるらしいが、今俺が用意できるのはこれが限界だった。基本使い捨てだし。
・・・現に俺の身代わりとなったカカシは・・・五体バラバラでぺしゃんこになってるし。・・・あれも俺の切り札の一つだったんだがな。
「・・・ぬぅ、やはり今の拙僧では【羅刹天】の御力を使いこなせぬ、か」
・・・しかも、まだまだらしい。ホンマかいな。
「その力・・・やはり【神仏界】で得たものか?」
答えてくれるとは思っていないが、なにか策を考える時間がほしい。・・・まあ、俺もそのスキルが欲しいと思ったのも事実だが。
「左様。厳しい修行と試練の果てに御仏に認められし者のみに許されし力よ」
しかしナユタは律儀にも答えてくれた。・・・いや、抽象的過ぎて具体的には何にも分からないが。
「・・・成程、それだけの力を得るには並大抵の努力では成しえないだろうな」
俺は【閃槍アーディボルグ】をしまい、【豪剣アディオン】を取り出す。あのパワーを前に受けに回るのは危険だ。一気にこっちが押し切る勢いじゃないとこっちが潰される。
「然り。どんな道にも楽な道などありはせん。一意専心、一心不乱に己を鍛え上げた者にのみ道は開けるのだ」
「ありがたいご高説どうも」
アーテルかアウルを召喚できれば一気に逆転できるのに・・・いや、ナユタはそれを考慮しないはずがない。今のナユタの状態でこっちの召喚を妨害できるのかは不明だが、相手が未知のスキルやアイテムを使ってくる以上、楽観視はできない。
「これでも僧侶だからな。破戒僧だが・・・」
「破戒僧にしては律儀でまともっぽいけどな」
苦笑しながら錫杖を構えるナユタが。時間稼ぎも限界か・・・MPは残り少ないし・・・こっちも切り札を切るしかかないな。
俺もナユタに向かって【豪剣アディオン】を構える。正眼の構えだ。
「ナユタ・・・お前は強い」
「・・・む?」
ナユタを褒め称える俺に怪訝な表情を見せるナユタ。
「そして仏の力まで使われたとあっちゃあ、俺としても出し惜しみは出来ない。・・・ケリをつけよう。【力天の強豪】!!」
【魔天の叡智】は別に取得していたもう一つの【天凱十二将】のスキル・・・今、ここで使おう!!
スキルを使用した途端、俺の体が黄色いオーラに覆われる。
「・・・クックック、面白い。ならばお前の力! 御仏の前にどれほど通用するか見せてみよ!!」
目を滾らせ、獰猛な笑みを浮かべながら向かってくるナユタ。その様はまさしく鬼・・・なるほど確かに破戒僧かもな。
ナユタが振り上げた錫杖を今度は【豪剣アディオン】で受け止める。
ガキンッ!!
・・・しかし今度は・・・力負けしなかった。
「!?・・・なんと、鬼神の剛力を受け止めるとは!!」
「これもある意味で神の力だからな」
理由はもちろん俺が使ったスキルにある。それがこちら。
【力天の強豪】
BPを消費しながら攻撃力を強化するスキル
要するにBPを消費し続ける代わりにパワーアップするっていうスキルだな。
なので暢気に会話している余裕は今は無い。
俺は通常の剣技でナユタを攻撃する。
斬る、突く、薙ぎ払う。
ガキンッ! バキンッ!! ドギンッ!!
・・・お互い超パワーで攻撃し合っているせいか、武器がぶつかりあう度にとんでもない金属音が鳴り響いている・・・消耗度、大丈夫かな。
しかし、それでも攻撃の手は緩めない。ぶっちゃけ、BPが0になるといよいよ後がないからな。
今まで【力天の強豪】を使ってこなかった理由もその辺りにある。
【俊天の疾走】はMPを消費するので【魔法】の使用を控えれば温存できたのだが、【力天の強豪】はBPを消費する。そして俺の攻撃のほとんどがBPを消費するスキルばかりだ。乱用していたらあっという間にBPが0になってしまう。
だから使いどころの見極めが重要なのだ。丁度今のように。
ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!!
剣と錫杖のぶつかりあい。
パワーとパワーのぶつかりあい。
ぶつかり合う度に大気が振るえ、地面が揺れる。
しかし、そんな強力なぶつかり合い何時までも続かない。先に音を上げたのは・・・ナユタの武器だった。
バキンッ!!
「・・・!?」
何度目かのぶつかり合いの末、ナユタの持っていた錫杖が折れた。
どうやら武器としての性能は【豪剣アディオン】の方が上だったようだ。
チャンス!とばかりに【豪剣アディオン】を振り上げた俺だったが・・・
「【オン・アミリテイ・ウン・パッタ】!!」
ナユタの唱えた【真言】により、見えない衝撃が俺を襲った。
・・・しまった!【軍荼利明王】の【真言】か!!
まるで弾かれるように・・・俺は【豪剣アディオン】を手放してしまった。
【印】は組んでいないのに・・・【真言】だけでも使えたのか!?
「この機は逃さん!【オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ】!!」
俺に出来た隙を逃さずナユタが別の【真言】を唱える。こんどは【印】も一緒だ。
するとナユタの右腕が黄金に輝きだす。
「食らえい!【毘沙門天】の一撃を!!」
そして黄金の拳を突き出してくるナユタ。
・・・やばい。あれはやばい。
俺の【勇天の一撃】並みに受けたらヤバイ予感がヒシヒシとするぞ。
あれを受け止めるのは無理だ。
かといって避けるにもこの位置では・・・こうなったら一か八かだ!!
「【韋駄天の俊走】!!」
俺は一瞬だけ超加速スキルを発動する。
一瞬にも関わらず、スローモーションのようにゆっくり動く世界では長い時間のように感じる。
そんなスローモーションの世界で俺は一歩だけ、後ろに下がりナユタの拳を避ける。
ナユタの拳が空ぶった所で【韋駄天の俊走】が解ける。
やはり残り少ないMPでは一瞬が限界だったな。
一方で驚愕の表情を浮かべるナユタ。
だが、その隙は俺も逃さない。
「【豪覇・正拳突き】!!!」
残った全ての力を込めて、ナユタを殴る。
俺の拳は見事、ナユタの頬に入る。
吹っ飛ばされるナユタ。
と、同時に【力天の強豪】が解けた。やはりBPもギリギリだったか。
俺は倒れこんだナユタを見た。
これで決まってなかったら万事休す・・・どうだ!?
『勝者!! アルク!!!』
・・・ふぅ~、なんとかなったか。
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