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人を体現する者

我が【眷属】たるアーテルを召喚できずショックを受ける俺。


この分じゃアウルを召喚するのも無理だろう。


助っ人が期待できない以上、俺一人で【前鬼】【後鬼】、そしてナユタを倒す必要がある。


問題はナユタたちの連携だな。


【前鬼】【後鬼】を単体撃破するのは問題ないと思う。問題はナユタが使ってくる【真言】と【印】だ。


こちらの攻撃を封じてくるスキル。


対処が出来ないわけじゃない。


問題なのはその対処で隙ができ、ナユタたちはその隙を確実に突いてくるということだ。


それにナユタはかなり慎重だ。


自分からは積極的に攻撃に出ず、【前鬼】【後鬼】に攻撃を任せて自身は後方で待機している。そして俺が二匹の鬼を倒そうとした所でこっちの攻撃を邪魔する。


ナユタ本人を攻撃しようにも【前鬼】【後鬼】が邪魔をするし、自身を守る為のスキルもある。二匹の鬼を無視してナユタを倒すのも難しそうだ。


そんな相手たちに俺がとれる選択はそう多くない。


セオリーとしては各個撃破だろう。1体でも数を減らすことが出来ればかなりこちらが有利になる。


勿論、できれば、の話だが。


ナユタの【真言】と【印】は確かに強力だが、無敵では無いはずだ。消耗もするだろうし何らかの制限があるはず。突破口は必ずある。


となると俺がやるべきことは一つ。


「まずは邪魔な鬼どもには消えてもらおうか」


まずは俺に向かってきていた【前鬼】を迎撃する。


「【双刃・疾風連斬】」


飛ぶ斬撃で【前鬼】を攻撃する。


「ガァア!!」


・・・やはり硬い。ノーダメージでは無いだろうが、それほど有効打のようにも見えない。コイツ一匹に手間取ってる猶予は無いんだがな。


「グゥオ!!」


「おっと!?」


【前鬼】が足を止めたところで【後鬼】が刺又で攻撃してきた。連携もしっかりしてるな。だから厄介なんだが・・・少し引っ込んでてもらおうか。


「【結晶の障壁(クリスタルウォール)】」


結晶の壁で【後鬼】の周囲を取り囲む。直ぐに壊されるだろうが時間は稼げるはずだ。


今のうちにだ。


俺は日本の刀をしまい、代わりに・・・


「【グランディスバンカー】セット」


()()にバンカーを装着。狙うは【前鬼】。斬撃が駄目なら打撃ならどうかな?


「させん!【オン・インドラヤ・ソワカ】!!」


案の定、ナユタが俺の邪魔をしてくる。先ほどと同じ【帝釈天】の雷撃だ。


だが、それはさっき一度見ている。


「【閃槍アーディボルグ】!」


俺は()()で【閃槍アーディボルグ】を雷撃に向かって投げた。


予想通り、避雷針の役割を果たした【閃槍アーディボルグ】が俺を守ってくれた。


「なんと!?」


驚いているナユタに構わず俺は【前鬼】に向かってバンカーを打ち出す。


「ガァア!!」


「どっせい!!」


対する【前鬼】も金棒を振り下ろしてきた。


ぶつかりあうバンカーと金棒。


結果はというと・・・


ピシピシピシッ! バキンッ!!


・・・【前鬼】の金棒が砕け散った。科学の勝利だな。


とはいえ、【前鬼】本体にダメージは与えられなかったが・・・それも想定済みである。


「【グランディスマグナム】バスターモード・・・シュート!!」


再度空いた左手に今度は【グランディスマグナム】を取り出し、バスターモードで発射。


発射された光が【前鬼】の顔面を捉えた。


「【前鬼】!?」


焦るナユタを横目に再度バンカーをセット。アヴァンが追加した新機能を見せてやる。


「リボルバーモード! ウラァ!!」


ドンドンドンドンドンドンッ!!!


顔から煙を出して棒立ちになっている【前鬼】の腹にバンカーを打ち込む。それも5連打ちだ。


【グランディスバンカー】ラピッドモードは一発目を打ち出したあと、更にもう五発を高速で打ち出す新【兵器】だ。強烈な反動とバンカーに高負荷をかけるため、そう何度も使用することは出来ないが、その威力は一発こっきりだった従来の物とは比べ物にならない。


「ガ・・・ァ・・・」


倒れこむ【前鬼】・・・体がどんどん薄くなり、残ったのは破れた札だけだった。


・・・なんとか倒せたか・・・まずは一匹。


「グゥオオオオ!!」


パリィン!!


【前鬼】を倒された事で怒ったのか【後鬼】が【結晶の障壁(クリスタルウォール)】を破壊して向かってくる。


・・・こっちも【グランディスバンカー】はしばらく使えない。


俺はバンカーと【グランディスマグナム】を仕舞うと先ほど投げた【閃槍アーディボルグ】を回収に向かう。


「甘いぞ!【ナウマク・サマンダ・バザラダン・カン】!!」


しかし、地面に転がっていた槍を拾うとしたその時、その隙を逃すまいとナユタも攻撃をしてきた。先ほど雷撃が避けられたためか、今度は【不動明王】の浄化の炎だ。


・・・だが、それも先ほど見せてもらった。


「【スピンガード】」


俺は【閃槍アーディボルグ】を回転させ、盾にすることでその炎を防ぐ。この槍には破壊不可効果がある。どんなに強力な炎でも溶かさせる心配は無い。


「クッ!!」


悔しそうな顔をするナユタだが、それ以上の追撃をすることはなかった。


・・・先ほどの【帝釈天】の雷撃と言い、直ぐに追撃してこない所を見るとやはり使用制限があるのか。連続して使用できないのか、消耗が激しいのか、それとも他になにか・・・?


「グゥオオオ!!」


おっと、今はそんなことを考えている場合じゃないな。


「【エナジーフェザーマント】」


俺は【後鬼】の攻撃を空中へ逃れることで回避する。


「【全天の属性(アーク・エレメント)】」


【閃槍アーディボルグ】にMPの半分を消費して俺が持つ全属性を付加する。【後鬼】に弱点属性があるかどうかはわからないが、威力は上がったし、弱点属性があった場合は更に強力になる。


「【スピアディスチャージ】」


虹色に輝く【閃槍アーディボルグ】を【後鬼】に向かって力一杯に投擲。パワー、スピード共に申し分なし!


「やらせんぞ!【オン・バザラ・ヤキシャ・ウン】」


あれは・・・【金剛夜叉明王】の【印】と【真言】か。先ほどと同じ防御力を上げてきたか。


バチバチバチバチッ!!


【後鬼】を貫こうとする槍と【後鬼】を守ろうとする力がぶつかりあい、空中で火花を散らしていた。


・・・だが・・・


「ぬう!?」


俺が放った【閃槍アーディボルグ】はその力を打ち破り・・・


「グゥオオオオ!?」


【後鬼】を貫いた。


後に残ったのは【閃槍アーディボルグ】によって貫かれたお札のみ。


【閃槍アーディボルグ】には属性付加を行っていたんだ。物理攻撃力を上げるだけじゃなく、魔法防御力も上げないとあの槍は止められないぜ。


残るはナユタ本人だけだ。


・・・しかし、これではっきりしたな。


ナユタは同時に二つ以上の【印】と【真言】を同時に使用することが出来ない。まあ、当然といえば当然か。【印】は手を、【真言】は口をそれぞれ使う以上、他のことなんてできるわけがない。


また、連続使用も出来ない。一度【印】と【真言】を使うと再使用にはインターバルができると思って良いだろう。こっちの狙い目はそこかな。


それに、おそらくだがナユタの力は【印】と【真言】がセットになって初めて強力なスキルになるのだと思う。つまり、何らかの方法でどちらかの動きを阻害できれば防ぐ事ができる可能性が高い。


ナユタの力は強力だが・・・勝ち目は十分にある。


そんな考察をしていたところで、


「・・・さすがだな」


ナユタが話しかけてきた。


「【武術】【魔法】【兵器】を駆使して戦う、か・・・拙僧が仏と鬼の力をお借りして戦う者なら、お主はさしずめ人間の持ちうる力で戦う者・・・まさに人間という者を体現しておるな」


・・・そう考えると、人間に持ちうる力が仏様や鬼に通用するかどうか試すための戦いにも思えるな。


「ならばこそ、拙僧も全力で戦わねばなるまい。そして知るが良い。人間の身の程を・・・【オン・アラキシャ・サヂハタヤ・ソワカ】!!」


そう言うとナユタは【印】を組み、【真言】を唱えた。


今度は何だ?


と思ったらナユタ自身に変化が訪れた。


ナユタの全身が赤いオーラで覆われ、そのオーラが鬼の形をしている。


・・・一体何をしたんだ!?


「【羅刹天】の【印】と【真言】だ。その御力をこの身に降臨させたのだ」


・・・おうふ。


ようやく【前鬼】【後鬼】を倒したと思ったら・・・


ここからが本番だったらしい。



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