助平には制裁が必要
お互いに【魔法】と【超能力】で捕縛しあった結果、お互いににらみ合ったまま動けないという奇妙な状況になりました。
・・・正直、ご老体と見つめ合っても嬉しくありません。・・・見つめ合うといってもご老体の視線は依然、いかがわしいままですが。
早急にご老体を抹殺したい所なのですが・・・なぜか、【魔法】が上手く発動しません。
アスター君の【サイコクラッチ】はただ、相手の動きを止めるだけで【魔法】は使えたのでまた別のスキルなのでしょう。
【魔法】が使えない以上、力ずくで抜け出すしかないのですが・・・残念ながら私は力にまったく自信がありません。【アークガルド】の中でも最下位を争うくらいに弱いです。
「というわけで離してくれませんか?」
「・・・そう言われて離す奴がおると思うかの?」
・・・駄目ですか。まあ、私も無理だとは思いましたが、アルクさんならとりあえず言うだけ言っておこう的なノリで言いそうなので言ってみただけです。
・・・お願いが駄目なら交渉するとしましょう。
「・・・お互い、この状態では動けないでしょう? ここは一つ、お互い同時に解除するというのはどうですか?」
「・・・ふむ、確かにのう。・・・じゃが本気でやるつもりがあるのかいのう? もしや引っ掛けでワシだけ解除させた所を一気に、とか考えておらんかの?」
「・・・」
「・・・考えておったな?」
・・・ばれてしまいましたか。あわよくば自由になった瞬簡にご老体を氷漬けにできるかと思ったのですが・・・そう甘くは無いようですね。
「・・・そもそもの話、ワシにはそんな交渉をせずとも脱出する手段があるのじゃよ」
・・・つまり、あのご老体は自身を縛る木の根を地力で破れる、と? 自慢ではないですが、私は【アークガルド】の中で一番、魔法攻撃力が高いです。そんな私が放つバインド系の【魔法】はアルクさんでも抜け出すのに苦労するのですが・・・目の前のひ弱そうなご老体にそんな力があるとは思えません。
・・・と、思っていましたが・・・なにやらご老体の体が大きくなっている?
「ぬぅぅぅん!【肉体若化】!!」
ご老体が叫ぶと劇的な変化が起こりました。
私より低かった背が劇的に伸び、皺だらけだった体が一気に艶と筋肉を取り戻し、白かった髪も若々しい黒髪を取り戻していきます。
私の放った木の根による束縛をたやすく引きちぎり、現れたのは2メートルを越すであろう、大柄ではちきれんばかりの筋肉をした大男でした。
「ガーッハッハッハ! これぞワシの種族【エイジア】の切り札じゃよ!!」
「・・・なるほど、若作りする種族ですか」
「若作りって言うな!?」
ご老体、改め若作りさんはご老体の時とは考えられないほどの鋭い眼光で私を睨みつけています。・・・体が若くなると精神まで若く荒々しい物になるのでしょうか?
「これで勝負あったじゃろう? 降参するなら今のうちじゃよ?」
・・・体は若返っても喋り方はご老体の時のままなのですね。正直外見とはミスマッチです。・・・だから若作りと呼ばれるのですよ。
そんな若作りさんに言ってやりましょう。
「寝言はくたばってから言ってください」
「・・・お嬢ちゃん、口が悪いと言われんかの?」
・・・そうでしょうか? 私としては丁寧な言葉使いを心がけているのですが・・・そういえばアルクさんが、アルマは身内以外には結構厳しいよな、と言っていたことがありますが・・・そうなのでしょうか?
・・・まあ、目の前の若作りさんは身内でも何でもありませんので気にしません。
「ならば致し方ない・・・悪く思わんでくれよ!!」
そう言って若作りさんが向かってきます。・・・正直、暑苦しいので来ないでの欲しいのですが。
しかも私が身動きできないと思っているのか、無防備に向かってきています。
・・・確かに【魔法】は使えず、地力では脱出できませんが、手がないわけではありません。
「【限定召喚】・・・来なさい、フィオレ」
「ピュイ!!」
召喚して現れたのは私の【眷属】、【不死鳥】のフィオレです。
既に【成体】化した状態で私の前に現れました。
「なんじゃと!?」
「フィオレ、【フレイムトルネード】」
「ピュイィィィ!!」
フィオレは全身に炎を纏い、回転しながら若作りさんに突撃していきます。
予想外だったのか、若作りさんはフィオレの攻撃を避ける事が出来ませんでした。
炎に飲まれる若作りさん。
同時に私を縛っていた【超能力】スキルが解除されました。これで自由に動けます。
「ありがとう、フィオレ」
「ピュイ!!」
フフフ、頼もしい相棒です。
「・・・ふむ、【眷属】もおったのか・・・油断したわい」
一方で炎に飲み込まれた若作りさんも無事でした。・・・いえ、正確には着流しの上半身が燃えてなくなったようで、上だけ裸でした。・・・ボディビルダーのように筋肉質なので見苦しくは無いのですが・・・正直見たくありません。
「じゃが勝負はこれからじゃよ!!」
そう言って向かってくる若作りさん。・・・若返って格闘メインにすることにしたのでしょうか?
「【インパルスショック】」
「あうちっ!?」
最近覚えた【衝撃魔法】で迎撃します。威力はまだあまりないのですが、衝撃を与えるだけの【魔法】ですので、目には見えません。予想通り、若作りさんも防ぐ事は出来ずに鼻をおさえています。
「フィオレ、【ファイヤーブレス】」
「ピュイー!!」
「何の!【サイコウォール】!!」
フィオレの炎は見えない壁で防がれますが、予想通りです。
「【アイスジャベリン】」
見えない壁とは別方向から氷の槍を飛ばします。
「ぬ?どっせい!!」
氷の槍は若作りさんの拳で防がれましたが、ここは一気に畳み掛けます。
「【フレイムジャベリン】」
「あっついのう!?」
「【アクアジャベリン】」
「おわっぷ!?」
「【サンダージャベリン】」
「いだだだだ! ちょ! まっ!!」
「【ウィンドジャベリン】」
「だから、ま・・・!!」
「【ランドジャベリン】」
「おわあああああ!!」
若作りさんに防がれないよう、あらゆる角度から【魔法】の槍を放ちます。フィオレも陽動を手伝ってくれたので面白いように若作りさんにダメージを与える事ができました。・・・途中から若作りさんの悲鳴のような物が聞こえてきましたが、無視します。
アルクさんの教えその4、相手の話は文字通り話半分に聞いておこう、です。
実際、あの悲鳴がブラフである可能性は0ではありませんからね。
しかし、見た目どおりタフですね、若作りさん。
これだけダメージを与えてもまだ倒せないなんて・・・
と、思っていたら変化が起こりました。
若作りさんの体がみるみるうちにしぼんでいって元のご老体の姿に戻り、膝をつきました。
「し、しまった。時間切れじゃ!!」
・・・なるほど。あの若作りには時間制限があったようですね。
しかし、これで形勢逆転・・・元々逆転はしていませんでしたが・・・これでご老体に勝ち目はなくなったと思ってよいでしょう。
他の【超能力】スキルがあるかもしれませんが、今はフィオレもいるので対処は可能でしょう。
私はトドメをさすべく杖をご老体に向けます。
「・・・容赦ないのう。降伏勧告くらいしてくれるとありがたいんじゃが・・・」
「・・・残念ながらうちのリーダーはスパルタなので」
アルクさんの教えその5、相手の弱音発言は99%罠、だそうです。
本当にギブアップするのなら潔く自分からギブアップするはずなのでで、そうでは無い場合は罠の可能性が高い、だそうです。
「・・・ほっほっほ、どうやら優秀なリーダーのようじゃのう。・・・じゃが切り札はワシにもあるんじゃよ!!」
・・・やはりというべきか、ご老体は勢いよく立ち上がりました。
「見とれ! ワシの眷属でお嬢ちゃんをヌルヌルのグショグショに・・・!?」
・・・なにやらご老体がわめいていましたが、途中から聞こえなくなりました。なぜなら・・・氷漬けになったからです。
【魔法遅延】を使った【アイシクルコフィン】で文字通り、氷の棺おけの中に閉じ込めた状態ですね。
「・・・フィオレ、お願い」
「ピュイ!!」
トドメとしてフィオレの【フレイムトルネード】で氷の棺おけごと砕いて貰います。
『勝者!! アルマ!!!』
・・・ご老体は最後に何かわめいていましたが、私から言えるのは一つだけ。
・・・セクハラ親父は死ねば良い、です。
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