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魔法と超能力

私たち【アークガルド】の中でも【超能力】系のスキルを使えるのはアスター君だけです。


そのアスター君ともトーナメント前の模擬戦を行いましたが、やはり苦戦しました。


アスター君が使うスキル【念動力】によって、目に見えない手につかまれたように動けなくなったり、目に見えない壁に【魔法】が防がれたり、アスター君自身が見えなくなったり、などとにかく見えないスキル、というのは対処が大変でした。


ただし、そんなアスター君でもアルクさんには一度も勝てませんでした。


実際、お二人の戦いを観戦していても、アスター君の【念動力】はアルクさんにはほとんど通用しませんでした。


見えない手には捕まらず、見えない壁も避け、または正面から打ち砕き、姿を消したアスター君も簡単に見つけていました。


理由を聞いてみると・・・


「気配、あとは目線、かな」


・・・正直、よく分かりませんでした。気配は何となく分かりますが、目線というのはなんなのでしょう?


「まず、見えない手とかアスターが消えた時とかは確かに目に見えないし音も聞こえないが、何かが動いている気配がある。見えない壁も同じだ。風の通りっていうのかな。何かが塞いでるっていうのが何となく分かる。それに見えない手とか壁はアスターの目線から大体の位置を察する事はできるから、避けるなりぶっ壊すなりできる」


・・・なんというか、勘と感覚に頼った力技のような気がしますが・・・とにかく対処法があるということですね。


アスター君自身も、


「【念動力】って射程距離もあるし、あんまり応用が利かないんですよね。だから、トーナメントのようなオープンな戦いにはあんまり向いていないと思うんですよ。一回戦くらいは・・・まあ、勝てるかもしれませんが、二回戦以降、こっちの手を知られている相手に勝つのは・・・厳しいかもですね」


と言っていました。


アスター君がトーナメントに参加しなかったのも、そう言う意味で自分に向いていない、というのもあるようです。


なお、アスター君はこんな事も言っていました。


「・・・それにアシュラみたいな戦闘狂やアルクさんみたいなトンデモナイ人もたくさん出るんでしょう?・・・正直僕には荷が重いというか・・・」


この発言をした後、アシュラさんにヘッドロックをかけられていました。


さらにちなみにアルクさんは、


「・・・アスターって、正面から戦うんじゃなく、裏からこっそりと・・・戦い方が暗殺者っぽいんだよな」


という恐ろしい事も言っていました。・・・確かに見えない手で相手を押さえつけたり、姿を消して近づいた所をバッサリと鎌を振るうところは・・・そう見えなくもありませんでしたが。


なんにせよ、相手は【超能力】を使ってきたとしても決して無敵ではないし、対処法はあるということです。


「【ライトボール】」


なのでその対処法を実行しようと思います。


私が【魔杖ブルーゼブル】から放った光の玉は一直線にご老体に向かっていきます。


「ほっほっほ、その程度は無駄じゃよ。【サイコウォール】」


ご老体が前方に右手を掲げると、約2メートル付近で見えない壁に当たったかのように私の【魔法】は砕け散りました。


もちろん、それも予想済みです。


「【アイシクルピラー】」


すぐさま私は次の【魔法】を発動、ご老体の頭上につららを作り、ご老体目掛けて落とします。


「ふむ、切り替えが早いのう、【サイコウォール】」


今度は左手を頭上に掲げ、私の【魔法】を防ぎます。


「【ウォータージャベリン】【サンダージャベリン】」


今度はご老体の左右に水の槍と雷の槍を発生させます。そして防ぐ暇も無いまま槍をご老体に・・・ぶつけます。


バチィッ!!


水と雷がぶつかった事による放電と爆発が起こりました。ご老体には壁を作る暇も無かったはずです。


【超能力】系のスキルの使用には【魔法】以上に集中力が必要とするようです。より強い【超能力】を使おうとするとその場から動けなくなるくらいに・・・


アルクさん曰く、使用する本人にも目に見えない分、余計に集中力を使うんじゃないか、とのことです。


つまり、あのご老体が、試合開始地点から動かず、その場で【超能力】を使うのもそういう理由があるのでは無いか、と推察したのです。そこへ、【超能力】の使用が間に合わないほど連続して【魔法】を叩き込みました。


・・・とはいえ、相手も本選の二回戦まで勝ち残ってきた猛者。この程度で倒せるとは思っていません。


なので油断無く次の手を打ちます。


「【ワイド・サンドバインド】」


【魔杖ブルーゼブル】で地面を叩きながら【魔法】を発動します。


すると、私を中心に大量の砂が広がっていきます。


舞台全面を覆い隠さんとする大量の砂はやがて・・・


「ぬおっ!?」


目に見えない何か、を捕らえました。・・・やはり、姿を消して移動していましたか。しかも、この短時間で驚くほど距離が出来ていました。中々足が速いようです。


【ワイド・サンドバインド】は複数人を捕らえる為のスキルです。使用者を中心に広がっていく砂の結界は、足を踏み入れた者を容赦なく捉えます。無論、相手が透明になっていようが関係ありません。


「ほっほっほ、やるのう、お嬢ちゃん」


砂に囚われたご老体が透明化を解除してその姿を現します。・・・しかし、砂に囚われているあの状態ではこちらに攻撃を仕掛ける事も避ける事もできないでしょう。


私は【魔杖ブルーゼブル】をご老体に向けます。今度こそ【上級魔法】で一気に決着を付けるつもりです。


「冷静に冷酷に、相手の言葉には耳を貸さず淡々と敵を追い詰める。まるでロボットのようじゃのう」


・・・ご老体が何かを言っていますが、耳を貸すつもりも、何か答えるつもりもありません。


「それにしてもここまで冷静に対処できるとは、事前に対策を練ってきておったか・・・どうやらお嬢ちゃんには優秀な仲間、もしくは指導役がおるようじゃのう」


・・・答えるつもりはありませんが、ご老体の冷静さが気になります。諦めて観念した・・・ようには見えません。


「じゃが、冷静に徹するには・・・お嬢ちゃんはまだ若い」


・・・そこで私は気が付きました。


「怒りを飲み込み、迷いを消し、視野を広く持つ事は容易では無いんじゃよ」


・・・体が動かなくなっている事に。


辛うじて動く首を上空に向けるとそこにはフワフワと浮いているもう一人のご老体がいました。


地面で砂に囚われているご老体は・・・よく見ると同じ格好をしたマネキンでした。距離ができていた為に遠目で気が付きませんでした。


「ほっほっほ、さながら傀儡子の術じゃな。【超能力】を使えばこんな事もできるんじゃよ」


・・・なるほど。【念動力】でマネキンを透明にし、動かしていたというわけですか。その間に自身も透明化し、空中に逃れて、機をうかがっていた、と。そして私を【念動力】で捕らえているわけですね。


【超能力】は応用に乏しいと聞いていましたが、考えを改めないといけませんね。


【ワイド・サンドバインド】が解けるとご老体のマネキンは力なく地に伏しました。


「ほっほっほ、さてはて申し訳ないが、このままトドメを刺させてもらうとするかのう」


そう言ってご老体は地面に降り立ちました。


・・・私がもう手も足も出せないと思ったのでしょう。


・・・甘いです。


ボコォッ!!


「なんと!?」


地面から木の根が飛び出し、ご老体を締め付けます。【ウッドバインド】ですね。


「【魔法】かのう、しかし何時の間に!?」


【ワイド・サンドバインド】を使う前ですね。


上級魔法士(ハイメイジ)】のスキルの一つ、【魔法遅延】というスキルを使えば詠唱後、任意に時間を遅らせて発動させることができます。


【ワイド・サンドバインド】だけでは捕らえきれない場合を想定し、時間差で【ウッドバインド】を発動するようにしておいて正解でした。


「最後の最後に油断するのはアホのすること、だそうですよ?」


「・・・なるほどのう・・・お嬢ちゃんに戦いを教えた者も随分優秀なようじゃのう」


ヘックシ!!


・・・どこからかクシャミが聞こえてきましたが・・・無視しましょう。


・・・さて、お互いに捕らえあったこの状況、どうしましょうか。




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