戦い方は人それぞれ
俺は渋い顔で【閃槍アーディボルグ】を見る。
全体的に黒ずみ、特に槍先なんてさび付いたような色をしている。
即座に【鑑定】発動。
【閃槍アーディボルグ ☆11】
特性:ATK+300 MATK+100 属性:無 消耗度:---
SLOT1:破壊不可 SLOT2:---
不朽の力が宿ったミスリルタイト製の槍
製作者:アイゼンガルド:ガット 転売不可
状態異常:ATK-300
・・・武器にも状態異常ってあったのか・・・【閃槍アーディボルグ】は破壊不可効果があるから使えなくなることは無いと踏んでいたが・・・とんだ誤算だな。
状態異常である以上、回復手段があるはずだが・・・今それを詮索している時間は無い。・・・もうこの試合中に使用はできないと考えた方が良いだろう。
仕方なく、俺は【閃槍アーディボルグ】を仕舞う。
それにしてもレディの奴、背中から攻撃したのに正確に反撃を・・・しかも武器を無効化してくるとは・・・
「フフフ、【マキナ族】はHPと防御力が高いのよ?」
・・・そういえば聞いたことがあるな。所謂アンドロイドの種族である【マキナ族】は【魔法】に関する適正が低い代わりに、他のステータスが軒並み高いと・・・一撃で仕留められなかったのは俺のミスでもあるが、レディのステータスが俺が思った以上に高かったから、か。
「・・・だからといって間髪いれず反撃されるとは思わなかったぜ」
どんな強者だって予想外の攻撃を受ければ動揺ぐらいする。しかし、レディは動揺なんて微塵も感じさせず反撃してきた。正直、動揺してしまったのはこっちの方だ。
「暴れる患者を相手にするのは得意なのよ? 特に静かにさせるのは大得意!!」
・・・何時から俺は患者になったんだ。それに静かにさせるって・・・息の根を止めるって事じゃないか? ますますこのアンドロイドナースがナースやってんのか分からない。・・・ナースらしくないのは最初からだが。というか【溶解液】撒き散らすナースがいてたまるか。
「まあ、冗談はこのくらいにして・・・貴方は【秘密結社DEATH】のボスから要注意人物としてマークされているのよ? 強者だと判っている以上は肉を切らせて骨を断つ、くらいしないとね」
「・・・要注意人物?」
マークされていたとは穏やかじゃないな。だが、この間の緊急クエストでは【アークガルド】より【秘密結社DEATH】の方が順位が上だったはず・・・正直、腹が立つが・・・もっと上の順位のクランもいたはずだ。マークするのならそっちの方なんじゃないのか?
「うちのボスはとにかく強者を求めてるからね。仮に弱小クランだからと言って所属メンバーまで弱いとは限らない。大小関係なく私達はチェックを欠かさないのよ」
・・・どうやら【秘密結社DEATH】のボスとやらは油断や増長という言葉とは無縁の人物のようだ。・・・悪組織のボスらしくないが。
「ましてや貴方たちは少人数ながら緊急クエストでは結果を残した。でも私達のところには【アークガルド】なんてクランの情報は皆無だった・・・私達としては結構由々しき事態だったのよ?・・・まあ、【アークガルド】が同盟を組んでいるクランを見て納得したけどね」
レディはチラッと観客席を見た。俺もそれに釣られて観客席を見る・・・なんてことはしない。敵から目を離すのは論外な上、視線を向けるだけで情報を渡してしまうような物だ。
どうやらレディの言葉から察するにラングたち【インフォガルド】と俺の知らない所で何やらあったらしいな。・・・だがラングが俺にそれを言ってこない以上、俺がそれを知る必要は無いって事だ。ラングたちが勝手にやったこと、ということもあるが、俺が余計な事を言えばラングたちのやったことに水を差すことになる。・・・感謝は別の形ですれば良い。
「そして貴方たちのもう一つの同盟クランは、強力な装備を作ることでも有名だからね。警戒するなっていう方が無理でしょう?」
またチラッと観客席を見るレディ。だからそれは無駄だって。
・・・しかし、そうか。
こんな目立つ上に特殊な戦い方なのにこれまでの試合で注目されなかったという事は今までの試合では【溶解液】や【弱体粉】を使ってこなかったはずだ。
なのに俺との試合でいきなり使ってきたのは・・・最初から俺を警戒していたから、か。
見事に俺は初見殺しにはまったわけだ。
「言っておくけど私の予想ではもっと早く、簡単に倒せていたはずなのよ? そういう意味では貴方は予想以上に・・・いえ、予想よりずっと強かった」
「そいつはどうも・・・もうそろそろ時間稼ぎは良いだろう?」
俺は【豪剣アディオン】を取りだし、その刃をレディに向ける。
「・・・やっぱりばれていたのね」
レディは正面を向いているから分からないが、よく見ると背中にくっ付いてる・・・【ロボットアーム】?が動いている。・・・多分、背中のダメージを回復・・・いや修理しているんだろう。
このトーナメントは回復アイテムの使用は禁止されているが、【回復魔法】といったスキルによる回復は禁止されていない。
反則にならない以上、何らかのスキルか装備効果か何か分からんが合法的に修理しているのだろう。
今の無駄な会話はそのための時間稼ぎって所か。
・・・まあ、それに付き合ったのは俺の時間稼ぎのためでもあるわけだが。
「・・・仕方が無いわね。こっちも最後の切り札を使わせてもらうわ!!」
そういうとレディは装着していた注射器、ハサミに【ロボットアーム】を仕舞った。代わりに取り出したのは・・・なんだ?両手に・・・また注射器? いや、パイプが付いていて背中に・・・背中にタンクが?
レディはその注射器のような物の先端を俺に向けると・・・
「【ヘドロハイプレッシャー】!!」
「うお!?」
これまでとは比べ物にならないほどの勢いで【溶解液】を噴出してきた。
なんとか避けるが、高速噴射された【溶解液】が俺の軌跡を辿るように追いかけてくる。
これは・・・何時までも避けきれんな。
だが、これだけの量だ。そう長くも続かないはず・・・勝負を賭けて来たか。
ならばこっちも!
「【魔天の叡智】!!」
【豪剣アディオン】を右手に持ち、左手の掌をレディに向ける。
「【ウォーターストリーム】!!」
次の瞬間、俺の左手から膨大な量の水が高速でレディに向かって飛んでいく。
「!?」
レディの方も高速噴射した【溶解液】を俺に向ける。
俺とレディの丁度中間で大量の水と【溶解液】がぶつかりあう。
そこら中が水浸しだ。
しかし、レディの【溶解液】もこちらに届く事はなかった。
「・・・やりますね。【溶解液】の欠点に気づきましたか」
「水が溶けることは無いからな」
あの【溶解液】がどれほど強力なのかは分からないが【ビートル君】がシールドごと溶けた以上、【豪剣アディオン】や【攻鎧アルドギア】だって危ないだろう。
では対抗策はないのだろうか?
【溶解液】でも溶けない防御力の装備を用意する?・・・この場では無理だ。
となると対抗策は一つ、洗い流す事だ。
俺は【俊天アクセルの祝福】の効果で【俊天の疾走】使用後のMP自然回復量が増加している。時間稼ぎに付き合ったのは【魔天の叡智】を使用しても十分な威力に出来るようMPの回復を待つためでもあった。
そして今、まさにその対抗策で【溶解液】が食い止められている上、レディの両手はふさがっている。
対して俺の右手には・・・
「【マキシマムスラッシャー】!!」
左手で水を打ち出しつつ、右手に持った【豪剣アディオン】を振り、巨大な飛ぶ斬撃でレディを攻撃する。
「【DEATHビー】!!」
途中、蜂メカたちがシールドを張って邪魔してくるが・・・斬撃に巻き込まれ、シールドごと真っ二つになった。
それでもなお威力の衰えない斬撃は・・・レディにまで届いた。
レディの両手に持っていた注射器たちが真っ二つになる。
「・・・本当に強いですね、貴方は・・・」
レディはそんな自分の武器を見ながらも、戦意が消えなかった。
対して俺は【溶解液】が消えた事により、レディに突撃を仕掛ける。
「しかし、まだ!!」
レディは再び袋を取り出すと自分がかかるのも厭わず中身の粉を振り舞いた。
「この【弱体粉】で貴方の武器は・・・!?」
レディは驚愕の表情を見せる。
それは驚いたのだろう。
俺は武器を何も持っていなかったのだから。
既に【豪剣アディオン】を仕舞っていた俺はレディの直ぐ目の前まで来ていた。
そしてレディの・・・腹の部分に両手を添える。
「・・・最後の最後で選択を誤ったな。【波動掌】!!!」
発剄・・・貫通ダメージのある素手による攻撃で・・・レディは沈んだ。
『勝者!! アルク!!!』
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