良い子は真似してはいけません
トーナメントに向けて俺は【アークガルド】のメンバーと色々試行錯誤を繰り返していた。
主な内容は対人戦に慣れていないアテナとアルマ、【魔法】や【兵器】に慣れていないアシュラのためにひたすら戦うというものだったが、俺としても良い練習になった。
その試行錯誤の名の通り色々なことを考えて試していた。
自分に合った武器やスキル、【魔法】や【兵器】使い方、【眷属】たちとの連携などなど・・・
その中で強化や弱体化についても試してみた。
試した範囲で言えば強化も弱体化も有効ではあるのだが当然、制限時間があるため、使える場面が限られる。特に強化は任意で使いどころがあるが、弱体化に関してはそもそも相手に当てることから始めるわけだから使い勝手が良いとは言えなかった。
そもそもの話、弱体化を受けたとしても【浄化】を始めとした対抗手段もある。
これがモンスター相手ならかなり有効なんだけどな・・・まあ、ボスモンスターには無効化されることもあるが。
対抗手段を用意してくるプレイヤー相手では厳しい・・・と思ってたらこの様である。
とはいえ、自分で使うことを考えなかっただけで、弱体化対策を考えなかったわけではない。
「も~、なんで当たらないのよ!?」
レディはそこら中に【溶解液】とやらをまき散らしながら憤慨している。
俺はというと・・・【俊天の疾走】を駆使して液体にはかすりもせず避けまくっていた。
【俊天の疾走】はMPを消費しながら加速することができる。MPを消費する以上、当然ながら無限に素早く動けるわけではない。燃費を考えるのなら長期戦には全然向かないスキルなのだが・・・あくまで使い続ければ、の話なのでやり様がある。
要は断続的に・・・もっと言えば危なくなった時に一瞬だけ加速することでMPを節約するのである。さすがに長時間、とはいかないが今までよりも効率的にスキルを使えるようになった。
と言ってもやはり制限時間があるので避けるばかりではいられない。
なのでこっちからも攻撃する。
ダンダンダンッ!!
【グランディスマグナム】で狙い撃ちするのだが・・・
「【DEATHビー】!!」
小型の蜂型メカによって阻まれる。・・・あの蜂メカ、うちの【ビートル君】みたいにシールドを・・・考えることは皆一緒なのか。
だが、こっちの弾丸を正確に防いでやがる・・・あのアンドロイドナース、見た目以上にできるな。
おまけに【溶解液】と一緒に蜂メカたちまでこっちに突っ込んできやがる。・・・針むき出しなんだが・・・あれに刺されたら碌なことにならないだろうな。
しかし、このままじゃ埒が明かないな・・・
俺は【閃槍アーディボルグ】を取り出し、接近戦を仕掛ける。
「・・・!!」
対するレディはというと・・・巨大なハサミを腕に装着していた。
ガキンッ!!
【閃槍アーディボルグ】を巨大バサミで防がれる。さらに・・・
「うおっ!」
チョキンと言わんばかりにハサミで切られる。
「危ねっ!! ・・・おい! 医療機器をそんな使い方しても良いのか!?」
「悪い腫瘍は削除削除♪」
「誰が腫瘍だ!?」
ひどい扱いである。正直むかついた。
「【エクステンドスピア】!!」
高速で連続槍突きをお見舞いする。
「【シザーズガード】!!」
しかし、防がれる・・・ハサミで。
『見事な武器使い・・・もといハサミ使いですが・・・あんなスキルあったんですか?』
『かなり珍しいですが・・・ありますね』
『・・・なんでもありますねぇ、このゲーム』
ハサミのスキルなんてどこに需要が・・・あ、あったな、今。
しかし・・・こいつふざけたキャラの癖して強いな。
でっきり弱体化頼みで戦闘自体はからきしだと思ったのに・・・そこまでの実力があるのなら普通に戦えば良いのに・・・
「普通に戦っては悪の秘密組織の名折れよ!!」
・・・どうやら俺の疑問は顔に出てたらしい・・・向こうの言い分には少しも納得できないが。
「【ナースフラッシュ】!!」
「うおっ!!」
意味不明なことを叫んだと思ったらアンドロイドナースの目がピカーっと光った。
目くらまし・・・ちょっとひるんで目を瞑ってしまった。
「今! 食らいなさい」
ここぞとばかりに攻撃を仕掛けてこようとしてくるレディだが、目を瞑っている俺には何をしようとしているかは分からない。
でも大丈夫。
「【ビートル君】!!」
こっちも小型偵察メカ【ビートル君改】のシールドで対抗。レディの攻撃を防御する。
・・・だが、目を開けた俺の前に衝撃の光景が・・・
レディの攻撃・・・つまり【溶解液】を吹き付けられた【ビートル君】がシールドごとドロドロに溶けてしまったのだ。
「【ビートル君】・・・すまない」
俺がもっとしっかりしていれば・・・身代わりになってしまった【ビートル君】と、【ビートル君】を作ってくれたアヴァンに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ええい! 【DEATHビー】! やってしまいなさい!!」
せっかくできた俺の隙を突けなかったことに激高したのだろう、レディは10体の蜂メカを放ってきた。
「そうはさせるか!【ビートル君】、全機発進!!」
対する俺も手持ちの【ビートル君改】をすべて出す。
攻撃しあう俺とレディ。
その周囲でぶつかりあう【ビートル君改】と【DEATHビー】。
『・・・なんだか良く分からない戦いになってきましたね』
『しかし、あれだけの性能を持った小型メカを量産するとは・・・本人が製作したかどうかは分かりませんが優秀な【エンジニア】がいるみたいですね』
・・・確かに、司会者たちが言う通り、レディの使ってる武器・・・武器? やあの蜂メカもかなり良くできている。あれがクラン【秘密結社DEATH】で作られたものだとしたら・・・彼女のクランにはガット並みの【鍛冶師】やアヴァン並みの【エンジニア】がいることになる。
おまけに相手は正攻法だけはなく策略まで持ち込んでくるとなると・・・まだ隠し玉があると考えた方が良い。
・・・ここは一気に決めた方が良さそうだ。
「【俊天の疾走】!!」
俺は加速して、一瞬でレディの背後に回り込む。そして・・・
「【エクステンドチャージ】!!」
渾身の力を込めた突きを入れる。
途中で蜂メカが何体か割り込んできてシールドを展開してくるが、俺はシールドごと蜂メカを破壊し、槍を突き入れる。
攻撃力は俺の方が上だったらしい。
俺の攻撃はレディに届いた。
無防備の背中に槍を突き入れ、これで決まったかと思ったが・・・
「【ロボットアーム】!!」
なんとレディの背中にもう一本の機械の腕が!?
しかも手に持ってるのは・・・またなんかの袋!?
バシュウ!!
その袋を機械の腕が自ら潰し、中身が飛び出る。
その中から出た粉が・・・【閃槍アーディボルグ】にかかった。
急いでその場から離れようとするが・・・振り返ったレディのハサミが迫っていた。
俺は槍で防いだが・・・力負けし吹っ飛ばされた。
・・・俺が力負けした?
いや、よく見ると【閃槍アーディボルグ】が変色している。
「今のは武器の攻撃力を下げる【弱体粉】よ!これでもうその槍は使い物にはならないわ!」
・・・厄介な奴だ、本当に
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