危ないナース
【秘密結社DEATH】・・・ラング曰く情報がほとんど無い謎のクラン。
謎というわりに堂々とクランホームを構えていて、よく他のクランとPvPを繰り広げているらしい。
一応、クランとしては、力こそ全て!を掲げていて、実力さえ示せば誰でも加入でき、一番強いこと証明すればリーダーになることもできるそうだ。・・・とは言ってもクラン結成以来、リーダーが変わったことは無いそうだが。
どうもこのクランには所謂、悪役やダークヒーローが好きなプレイヤー達が集まっているらしい。そんな訳で表向き他人と仲良くする事がほとんど無いとの事で情報が少ないらしい。逆にスパイごっこのごとく他のクランの情報を集めたりする事の方が多いそうだ。
「ちなみに私は悪の組織に改造された哀れな改造ナース、という設定よ!」
「別に聞いてねぇよ」
設定って・・・何故悪の組織がナースを改造するのか意味不明である。素直にクモ怪人とかじゃあ駄目だったのだろうか。しかも自分で哀れとか言っちゃってるし。
なお、余談だが彼らはあくまでそういう役が好きなのであって、悪辣非道な行為とか倫理に反する行為とかは一切しない。・・・とクランのホームページにしっかり記載されているらしい。随分親切な秘密結社である。・・・まあ、そんなことしてたら通報されてアカウント凍結されるから、ゲームの規約に違反するようなことはできないのだろう。
また、彼らは完全実力主義のため、レベリングや武器作成、アイテム収集などの強くなるための行動に余念がない。なので彼らのクランの実力は高い。・・・そういえばこの間の緊急クエストではヒーロークランより順位が高かった。・・・ヒーローもっと頑張れ。
さらにそれだけでなく、知略や謀略も実力の内だと考えている為、合法であれば罠にはめるのも彼ら的にはOKらしい。そのためのアイテムや【兵器】開発にも余念が無いというワイルドでアグレッシブな集団だ。
・・・情報ないという割に結構色々分かってんじゃん、と思わなくもない。
まあ、そんな訳で俺が食らった弱体化の粉なんかも、彼らが作った成果物なのだろう。
何が言いたいかというと彼らは必ずしも真っ向勝負を仕掛けてくる訳ではないということだ。
で、今の状況に繋がるわけだ・・・
「ほらほら、逃げないと大変なことになっちゃうわよ〜」
レディが調子に乗って攻撃を仕掛けてくる。対して俺は【エナジーフェザーマント】で宙を飛び回りつつ、レディの攻撃をしのいでいる所だ。
そのレディの攻撃というのがまたエグイ。
腕に装着した巨大注射器から液体を水鉄砲のように噴射してくるのだ。
もちろんただの液体ではない。
『おーっと、レディ選手の猛攻だー!謎の液体を所構わずまき散らしているー!』
『・・・なんか液体のかかった地面が溶けてる気がするんですが気のせいですか〜?』
『いわゆる【溶解液】ってやつですね』
『そ、そんなの有りなんですかー!?』
『有りですね』
有りですね、じゃねぇよ!なんちゅう危ねぇもん出してきてんだ!
『あ、プレイヤーに当たっても皮膚が溶けるようなグロテスクな事にはならないので安心してください』
そんな心配してんじゃねぇよ!
『・・・まあ、ダメージはあるはずですが』
それのどこが安心できるんだ!!
「ほらほら〜、ぼやぼやしてると溶けちゃうわよ〜」
「うおっ!危ねぇ!ナースがそんなことやって良いと思ってんのか!?」
危険物を撒き散らすとはなんてナースだ!
「私、悪のナースだから〜」
悪のナースってなんだよ!?
『良い子は決して真似しないでくださいね』
良い子は【溶解液】なんて持ってねぇよ!
しかしあれはやばいな・・・
溶解液がばら撒かれた地上の舞台がちょーっと大変な事になってる。・・・これ、もう地上に降りられないんじゃないだろうか。まだ弱体化の粉も残ってるし。
あの溶解液・・・生身もそうだが武器や鎧に受けるのはまずいよな? 地面が溶けてる所を見ると俺の装備も・・・ガットに怒られそうだ。
多分、俺の装備破壊も狙ってるんだろうが・・・弱体化といい、正面から戦うタイプじゃなくこっちの戦力を削ってくるタイプか・・・今まで戦った事が無いタイプだな。
パーティ戦なんかだとメンバーの役割が大事だとされている。攻撃役、防御役、回復役、支援役、妨害役・・・そういえば内のクランには妨害役はいなかったな。
・・・なんか新鮮。
それにしても先ほど受けた弱体化の粉のせいか、妙に体が重い。
何時ものように動こうとしても体が付いてこない。
このままじゃあ、防戦一方で逃げ回るしかない・・・なんてことは無い。
確かに今は逃げ回っているが、他に手が無いわけじゃない。
ただ、確認しておきたかっただけだ。
「・・・お、戻った」
弱体化の効果時間を。
約1分か・・・やはり効果時間には制限があるのか。永続効果じゃなかったのは安心したが・・・さすがに何度も食らうのはまずいな。
「あちゃー、時間切れかー・・・ならもう一度!!」
そう言ってレディは懲りずにまた同じ袋を投げつけてきた。
・・・アンドロイドナースはポンコツなのか?
同じ手に二度も引っかかるわけあるまいな。
「【ウィンドプレッシャー】」
【風魔法】を使って袋ごと弾き返してやらぁ!・・・と思ったら・・・
「・・・あら?・・・うおわあ!!」
【魔法】が跳ね返ってきた!
「ふふん、あの袋に入ってたのは【反射粉】よ!【弱体粉】はこっち!!」
間一髪で【魔法】を避けたところにまた袋が!しかし、まだ避けられる!
「もちろんそれも想定済みよ!【溶解液】!!」
こっちが避けようとする場所にちょうど良いタイミングで液体を吹きかけてきやがる。・・・こうなったらあの袋をキャッチして投げ返してやる!
「甘い!!」
メスを投げて来やがった。あ、袋が破れて・・・
「おわあっ!!」
・・・おおう、なんてこった、粉まみれになっちまった。
「ふふん、勝ったわ!今のは防御力を極端に下げる【弱体粉】よ!それだけ浴びればかすっただけでも大ダメージよ!」
さっきとは別の種類の弱体化もあるのか・・・これはしてやられたな。
「・・・【浄化】」
【浄化魔法】で回復を試みるが・・・効果がない。
「無駄よ!それは【魔法】じゃ無くてアイテムの効果!粉を全部払い落とすか、効果時間が切れるまで回復はできないわ!」
・・・おー思ったより厄介だったな。
「今がチャンス!!」
ここぞとばかりに【溶解液】をばら撒くレディ。
ちょっとでもかすったらお陀仏か・・・
これは気合入れないといけないようだ。
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