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戦い終われば

『今の試合で本選第一回戦は全て終了しました。一時間の休憩の後、第二回戦を開始します!』


どうやらガットとカオスの試合が第一回戦の最後の試合だったらしい。そして、戦いを終えて戻ってきたガットなのだが・・・


「ガハハハハ!! 手も足も出んかったわい!!」


・・・思いのほか元気だった。・・・信じられるか? こいつさっき刀で滅多切りにされたんだぜ?


「・・・思ったより元気だね?」


同じく負け組(ひどい表現)のラングが尋ねるが、確かにガットはそれほど落ち込んでいるようには見えない。


「もとより戦いが本分ではないからのう・・・とはいえ、【不動の鉄鎧】、【堅牢の鉄盾】、【爆鎖の鉄球】が壊されたり、【撃射の鉄弓】が当たらんかったのはさすがにショックじゃったがのう」


負けたことがショックなんじゃなくて自分の作った装備が通用しなかったのがショックなのか。まあ、コイツの場合、自分の作った装備を試すためにトーナメントに参加したっていう面もあったらしいが・・・


「普通に武器を振り回すだけじゃあさすがに勝てないだろ。戦闘系スキル取ってなかったのか?」


「【鍛冶】に必要そうなもん以外は無いのう。唯一、戦闘に使えそうなのが【メガトンプレッシャー】だったしのう」


・・・ここまで徹底しているとは逆に感心するな。職人の鑑ってやつか? ・・・コイツに負けた戦闘系プレイヤーが逆にかわいそうになってくるが。よくこんな状態で勝ち残れたもんだ。やはり、ガットの作る装備は優秀だということか。


「って、何してんだ?」


当のガットはカオスに壊された武器と防具を並べていた。・・・こんな所で並べんなよ。


「んんー? ちょいと修理しとこうと思ってのう。【フルリペア】」


・・・おお、ガットは唱えたと同時に壊れた武器たちが瞬く間に元の姿を取り戻していく。


あっという間に修理完了だ。・・・なるほど、確かにガットは優秀な【鍛冶士】だな。


「とはいえ、ワシにはもう使う機会が無いからのう・・・お主ら、持っていかんか?」


そう言ってガットは【堅牢の鉄盾】【撃射の鉄弓】【蛇腹の鉄剣】【爆鎖の鉄球】を並べながら俺たち・・・俺、アテナ、アルマ、アシュラを見る。


「俺たちが?・・・良いのか?」


「ワシとしては使用感は分かったし、後は売れるまで【収納箱(アイテムボックス)】の肥やしになるだけじゃからのう。どうせなら使える奴に渡したほうが良いと思ってのう。・・・もっとも、一度見せてしまった以上、トーナメントで使えるかどうかは判らんがのう。【不動の鉄鎧】と【絶潰の鉄槌】はワシ専用だから渡せんがな」


・・・確かに、ガットの試合を見たプレイヤーも大勢いるだろうし、ここで不慣れな武器をあえて使うという機会が早々あるとは思えんが・・・だが、あれば何か役に立つかもしれん。カオス相手には通用しなかったが、優秀な武器であることは変わりないからな。


「・・・分かった。ただし、借りは作りたくないからな。適正価格で買い取らせてもらう」


「・・・そう言うと思ったわい。良かろう。値段は・・・」


思わぬ出費であったが【アークガルド】のクラン装備として全員が使用できるようにするということで、クラン資金から支払った。まあ、トーナメント中は俺たち4人で使うけど。・・・懐が痛まなくて助かった。


「というわけで、お前達、好きに選べ」


「あら? 何時ものならアルクがいの一番に飛びつきそうなのに、私達から選んで良いの?」


・・・どういうイメージを抱かれてんだ、俺は? そんなこと・・・あるな、うん。


「俺が必要と思った装備は既にガットに注文して入手済みだ。お前達の中で使いたい物があるのならそっちを優先して良い」


手数が増えるのは良いことだが、付け焼刃では返って不利になる・・・かもしれない。少なくとも俺は使い慣れた武器以外で実戦には・・・あまり挑みたくない。


というわけで・・・


「私はこれにするわ。中々面白い武器だったし」


アテナは【蛇腹の鉄剣】を。


「私はこれですね。【魔法】以外の遠距離攻撃手段もあったほうが良いでしょう」


アルマは【撃射の鉄弓】を。


「ボクはこれにするっす! 鉄球はロマンっすからね!!」


アシュラは【爆鎖の鉄球】を選んでいった。


・・・選ぶのは良いが、ちゃんと使えるんだろうな? 特にアシュラ。ロマンで武器を選ぶなよ。


そして最後に残った盾を俺が貰う。


【堅牢の鉄盾 ☆10】

特性:DEF+200 MDEF+200 属性:無 消耗度:0%

SLOT1:---

ミスリルタイト製の盾

製作者:アイゼンガルド:ガット


・・・うん、性能は優秀だ。性能は・・・


問題は馬鹿でかい上にくそ重たいって所だ。・・・実戦で使えるか? これ? タンク役なら重宝するかもしれんが・・・


あとカオスの奴、よくこんな盾ぶっ壊せたな。俺も出来なくは無いだろうが苦労しそうだ。


「そうだ、ガット。カオスが使ってた・・・大刀はどんな感じだった? 実際に戦ってみた感想としては・・・」


「うむ・・・率直に言えば見事としか言えんのう・・・性能だけを見ればワシの作ったそれを上まわっとる。どこで手に入れたのか是非聞いてみたいもんじゃ・・・」


・・・職人気質であるガットがそこまで言うのなら、本当にすごいモンなんだろうな。・・・カオスと当たった時の戦い方、もっと真剣に考えた方が良いな。


「じゃあ、スキルはどうだい?」


「スキルじゃと? ・・・最後の大刀の滅多切り以外にあったかの?」


・・・少なくともガットの盾を破壊したのはスキルによるもの・・・だと思うのだが、戦ったガット本人は気が付かなかったようだ。・・・しかし、あんな三連撃、スキルを使わず生身で出来たとは思えんし、スキルを使ったのは間違いないはずだ。


敵に・・・いや、観客にも悟らせないほどスキルの使い方が上手い、とも取れるな。


「・・・厄介だね、あのカオスって男は・・・」


どうやらラングも俺と同じ考えに達したようだ。


「・・・それで? 君なら勝てそうなのかな?」


・・・そして嫌な事を俺に聞いてくる。


確かに俺の中でカオスをボコボコにするのは決定なのだが・・・実際に出きるかどうかと言われれば・・・難しい所だろう。カオスの奴はまだ碌にスキルも使ってないし、武器もそうだ。それに本人の言葉を信じるなら【眷族】がいるらしいし・・・


・・・しかし、それでもあえて言おう。


「勝つさ」


根拠など不要、負けるのを恐れていては戦う前から負け決定だ。俺が選ぶのは勝利一択のみ。


「・・・そうか」


「・・・ふむ」


察したのか、納得したのか、呆れたのか、ラングもガットも押し黙った。


「ガット、お前の仇は俺が取ろう」


「・・・アルク」


ガットが感動したかのような表情で俺を見ている。


「・・・だから、安らかに成仏しろ」


「勝手にワシを殺すな!!」


おおう、なんだガットの奴・・・仇をとってやるって言ってるのに・・・怒りっぽい奴だ。


「・・・まあ、休憩になったんなら戻って二回戦に備えようか」


俺の言葉に全員(ガット除く)が頷いた。


「だう!!」


「ひゃう!!」


アウルとヴァーユもだ。


・・・君たちまだいたのね。すっかり忘れてたよ。

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