職人の意地
カオスの奴が取り出したのは刀・・・というには刀身が巨大すぎる大刀だった。しかもそれらを両手に一本ずつ・・・あれも二刀流と呼んでも良いのだろうか?
「・・・なんだか、某死神代行さんが初期に持ってた斬〇刀みたいっすね・・・アイタッ!!」
なにやら不穏な発言をしたアシュラに手刀を食らわせるアスター。・・・アシュラよ。そういうことは思ってても口には出さないもんなんだよ。・・・勿論、頭の中で考える時も伏字を忘れてはいけない。それがお約束という物だ。
しかし・・・あの大刀二本、どちらも同じデザインで豪華な装飾こそ無いが・・・なんで真っ白なんだろうか? 刀身が白いのはまあ、普通かもしれないが、鍔や持ち手まで真っ白なのはなんか意味があるのか?
「あ・・・動き出したわ!!」
大刀を二本携えたカオスがガットに迫る。ガットもクロスボウで迎え撃とうとしているが・・・かすりもしないな。あんな重そうな大刀を持っていてもスピードは変わらずか・・・いや、むしろスピードアップしているな。
そしてカオスが右手に持った大刀を・・・ガットが構えていた盾に突き入れる。
バキィィィン!!
・・・ガットの盾がカオスの大刀を止めた。カオスの奴が少し驚いた表情を見せる。
「【メガトンプレッシャー】!!」
その隙を逃すことなくガットはハンマーに持ち替えてカオスに攻撃する。・・・が、やはり避けられる。距離ができた所で再びクロスボウで追撃するが・・・効果がない。
・・・こっちの攻撃が当たらないのは致命的だな。しかも・・・
・・・ピシピシピシィ!!
「な!? そんな! 一撃であの盾にヒビが!?」
ヴィオレが驚きの表情で叫ぶが・・・
「いや、今のは一瞬だが三撃は入れていたぞ」
俺の言葉に全員が驚きの表情を浮かべる。
・・・大刀が盾にぶつかる直前、カオスの奴がボソボソと何かを呟いていた。直後の金属のぶつかる音にかき消されたので聞こえなかったが・・・おそらく加速系のスキル。それを一瞬だけ発動して、あの盾の同じ箇所にピンポイントに三回は突きを入れていた。
「・・・だ、だからってあの硬い盾をああも簡単に・・・」
・・・確かにヴィオレの言うとおり、一撃だろうが三撃だろうが、ガットの作ったあの頑丈そうな盾にあっけなくヒビを入れたことには変わりないな。
「・・・あの大刀もかなりの業物ね~ん。レイドイベントの報酬かしらん? それとも・・・ガットちゃんに並ぶ【鍛冶士】がいるのかしらね~ん?」
同じく【アイゼンガルド】のヒューナスも驚いている。・・・ちょーっとオネエ口調なせいで本当に驚いているのかイマイチ良く分からんが。
現状、武器の性能に関してはドロップ品と【鍛冶士】たちによる作成品では後者の方がやや上らしい。ドロップ品の場合、武器自体の攻撃力よりも武器についている特殊効果のほうが目立つ。むしろ強力な特殊効果が付いている物ほど武器自体の性能は低い場合が多いらしい。俺が手にいれた【不朽の槍】なんかもそうだ。
逆に、特殊効果は無いが【鍛冶士】たちの作った作成品の方が性能が高い場合が多い。無論、素材の良し悪しや、【鍛冶士】のレベルにもよるが・・・より高レベルの【鍛冶士】の作る武器はそんじゃそこらの武器では相手にもならない。・・・だからこそガットたち【アイゼンガルド】にはトーナメント前に依頼が殺到したというわけなんだが。
現状、プレイヤーが使用する武器の中でも一級品と呼ばれる物は、特殊効果を持った武器を素材にして高レベルの【鍛冶士】がより強力な武器に生まれ変わらせた物だそうだ。
つまり、カオスが使っているあの大刀も高レベルの【鍛冶士】が関わってる可能性が高い、というわけだな。無論、他の可能性もあるけど。例えば高難易度イベントの報酬とか。
しかし・・・今のぶつかり合いに皆驚いているようだが、おそらくカオス自身も驚いてると思うぞ。
多分だが、カオスの奴は今の突きで決めるつもりだったと思う。
カオスのあのスピードなら盾を避けながら攻撃することも可能だっただろう。しかし、あえて盾を攻撃した。しかも斬る、ではなく突き、という不安定な攻撃で、だ。
おそらく一撃目で盾を砕き、二撃目で鎧を貫き、三撃目でトドメを狙ったんだろう。しかし、実際には盾すら完全破壊できていない。ある意味でガットがカオスに一泡吹かせた形になったと思う。
・・・だが、状況は変わっていない。盾があんな状態ではカオスの攻撃を防ぐ事は不可能だろう。
今の一瞬のやり取りで、カオスの攻撃はガットの用意した盾を砕く事が出来る事が証明されてしまった。盾があの様子じゃあ、ガットが今着ている鎧もそう当てになるとは思えない。
・・・受けに回れば直ぐに潰されるぞ、ガット。
ガット自身もそう思ったのかどうか知らないが、更なる武器を取り出していた。
「・・・今度はモーニングスターか」
ガットが取り出したのは・・・持ち手の先に鎖がついており、鎖の先には巨大な棘付き鉄球がくっ付いている、いわゆるモーニングスターだった。
「【爆鎖の鉄球】さね。しかし、あんな鈍重な武器が通用するかい?」
確かに、威力を求めたであろう巨大鉄球は振り回すだけでも苦労しそうだ。
「ぬぅうん!!」
ガットはその場で鉄球を振りまわし始める。・・・あれでカオスを近寄らせないつもりか?・・・あ、片手で鉄球を振り回してもう片方の手でクロスボウを・・・なるほど。片手でも撃てるのがクロスボウの良いところ、か。射線がブレッブレだけど。
それにしても・・・
「・・・君も気が付いたかい?」
・・・そう言ってくるラングも気が付いたようだ。
「なあ、ヴィオレ。さっきからガットの奴、ハンマーのスキルを一回使っただけで他のスキルを全然使わないんだが?」
その言葉にヴィオレは・・・顔を逸らした。
アイツ・・・生産系のスキルばかり取得して、戦闘系のスキルはほとんど取得してないな!?
「な、なら【眷属】は? たしか【鍛冶の精霊】を【眷属】にしていただろう?」
ラングが慌て気味にヴィオレに尋ねるが・・・
「・・・グラントは鍛冶が得意なんだけど戦いのほうはあんまり・・・」
「・・・」
・・・マジかよ。前に見たときのグラントは巨大なハンマーを持ったマッチョでいかにも強そうだったのに!?
ってことはアイツ、武器以外の戦闘手段をほとんど持ってねぇんじゃねぇか! 何しにトーナメント出てきたんだ!?
「・・・いや、逆に武器の性能だけでここまで勝ち残ってきたんだから生産職としては逆にすごいんじゃないかな?」
・・・確かに職人の意地みたいなのを感じるが・・・ラングよ。今ガットが戦ってる相手はそれだけで勝てるような相手じゃないんだぞ。
「ぬう!?」
ほら。モーニングスターの鎖が切られて鉄球がどっか飛んでいった。
クロスボウの矢も・・・完全に見切られてるな。
あ、カオスの奴が駆け出しだ。ケリを付けるつもりだな。
ガットの方はそろそろ品切れか?・・・と思ったら今度は普通の剣を取り出した。
・・・いや違う、ただの剣じゃない。あれは・・・
「連接剣か!?」
「【蛇腹の鉄剣】さね」
連接剣、または蛇腹剣とも言うが、いわゆる鞭に分割した刀身をいくつもくっ付けたような一風変わった武器だ。ガットの奴あんな物まで作ってたのか。
たしかにあれなら素早く、しかも不規則な攻撃も出来る。だが・・・
「フッ!!」
そんな付け焼刃が通じるような相手じゃない。
鞭のようにしなりながら迫り来る刃をカオスはいともたやすく大刀で弾き、一気にガットの懐にまで入り込んだ。
そして・・・
「【双覇・疾風連斬】」
二本の大刀による滅多切りで・・・盾も・・・鎧も・・・ガット自身も切り刻まれた。
『勝者!! カオス!!!』
・・・野郎、俺が使ったスキルを・・・当て付けのつもりか?
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