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諦めない心が大事

どうやらガットの対戦相手はカオスのようだ。


このカオスという男のこれまでの戦績は・・・緊急クエスト(ひとりで)一位、予選の三試合を合計10秒(つまり、一試合約三秒)で秒殺してきたほどの手練れだ。


・・・つまり、何が言いたいかというと・・・


「・・・これはガットの奴、終わったな」


「・・・そうだね」


俺とラングは二人揃ってガットの奴に合掌していた。


「ちょっとちょっと! まだ試合が始まってもいないでしょ!」


アテナの奴が、それは早すぎるんじゃないか、と言ってくるが・・・


「いや、ガットのあの目を見てみろよ」


俺はカオスと相対しているガットを指差す。それを見てヴィオレが一言。


「・・・あー、死んだ魚みたいな目をしてるね」


・・・もしくは猛獣の檻に入れられて死を覚悟した小動物の目かな。


「待ってください。確かにあのカオスという男が強いのは確かだと思いますが、ガットさんも優秀な装備を持っていらっしゃるのでしょう? 諦めるのはまだ早いのでは?」


・・・どうやらアルマは技量の差を装備の差で埋められるのでは、と思っているようだが・・・


「確かに装備も重要なのは間違いないんだけどなぁ・・・」


「・・・世の中、どうにもならないことってあるよね」


「お二人とも、諦めが早すぎるのでは?」


ロゼさんのツッコミが俺とラングに突き刺さるが・・・


確かにガットの作る武器や防具は優秀だ。他の連中が使っている装備にも引けを取らない。それは間違いなんだが・・・


どんな強力な武器も当たらなかったら意味が無いわけで・・・その武器を使いこなせるかどうかは、あくまで本人次第だ。


そしてガットはその技量のほとんどを戦闘ではなく鍛冶に向けている。一流の武器を作れるかといって、それを一流の技量で使いこなせるとは限らないわけだ。


少なくとも、武器の扱いに関しては完全にカオスの方が上だ。


つまり、ガットが勝つためには・・・


「あ、ガットが何かし始めた」


もうすぐ試合開始となるところでガットが動いた。


あれは・・・全身甲冑(フルプレートアーマー)? 全身をくまなく鉄の鎧で覆い隠し、首から上もフルフェイスの兜で覆われていて、中身がまったく見えない状態となった。青銅色の輝き・・・おそらく【ミスリルタイト】製かな。


さらに、その手には巨大なハンマーを持っている。随分ごっついな。あんな物で叩かれたら鉄塊だってぺしゃんこになりそうだ。


「【不動の鉄鎧】と【絶潰の鉄槌】かい・・・ガット・・・初っ端から本気のようさね」


ヴィオレがそんなガットを見ながら呟いた。どうやらあれがガットの本気装備のようだ。確かに見た感じ、俺の【豪剣アディオン】や【攻鎧アルドギア】にも引けを取らないだろう。


あれならカオスとも戦えるか?・・・しかし・・・


『試合開始(バトルスタート)!!』


「あ、始まった」


開始と同時にカオスが動いた。カオスが手に持っているのは・・・何の変哲も無い普通の刀だ。見た目だけで判断するのなら、その性能がガットのそれには遠く及ばないだろうが果たして・・・


対するガットは微動だにしない。いや、腰を深く落とし、動かず迎え撃つ気満々だ。確かにあんな重装備で素早く動き回る事は出来ないだろうが・・・カオスの攻撃を正面から受け止めるつもりか。


ガキンッ!!!


硬い金属同士がぶつかる音が響いた。


・・・やはり、ガットはカオスの攻撃に反応できていない。カオスの刀がガットの胴に入った。・・・だが、その刃はガットの着こんだ鎧・・・【不動の鉄鎧】だっけ? に阻まれている。


「どっせい!!」


そして自ら懐に潜り込んできたカオスに向かってガットはハンマーを振り下ろす。


攻撃直後の無防備な瞬間を狙ったんだろうが、カオスの反応も早い。戻した刀でハンマーをかち上げ、距離を取った。


・・・どうやらガットの瞬殺は免れたらしい。アルマの言ったとおり、強力な防具に助けられたな。


それから何度もカオスの攻撃が続くが、その度にガットの鎧がその身を守り、ハンマーでカウンターを仕掛ける・・・が、カオスには当たらない。


それにしても・・・


「・・・アルク、あの刀・・・」


「ああ・・・」


あのガットの鎧やハンマーとまともにかち合ってもビクともしてない。・・・【不朽の刀】か。破壊不能の刀・・・だが、そのまま使用するには性能がかなり低いはずだ。俺の【閃槍アーディボルグ】のように素材にして新しい武器にでもしない限り、あまり使い物にはならないはず。


・・・つまり、カオスは破壊不能効果のみが目的で、あとは自身の膂力のみで戦っているって事か。


それに問題はもう一つある。


ガットの攻撃が当たらないという事だ。


あの重装備で、あの素早い動きをするカオスを捉えるのは至難の業だ。いくらガットの鎧が優秀でも身を守るには限界がある。このままじゃあ・・・


「・・・ふむ、やはり、このままでは無理かのう・・・」


とカオスとの距離ができた所でガットの声が聞こえた。ガットはハンマーをその場に置くと代わりに取り出したのは・・・


「・・・クロスボウ?」


ガットが取り出したのはクロスボウ、またはボウガンと呼ばれる物だった。しかも弦以外は鉄製のようで、これもごっつい。あんな物使えるのか?


「【撃射の鉄弓】さね。わざわざ矢を番えなくともトリガーを引けば発射される上、連射も可能なガットの特別製さね。・・・まあ、その分、威力は一定で強弱を付けることは出来ないんだけどね」


解説どうも、ヴィオレ。確かにあれなら重い鎧を着てても弓を引く動作がいらないから問題ないな。


・・・問題なのは。


バシュッ、バシュッ!!


・・・問題なのはその放たれた矢をカオスが残らず斬り落としてることだな。


「・・・むう、あの威力もスピードも、我の作った【グランディスマグナム】の実弾より上なのだ・・・なのになんであんな簡単に落とせるのだ?」


モノクルをかけたアヴァンが【撃射の鉄弓】の解析と、それに対するカオスの・・・呆れにた感嘆の声を漏らす。・・・ということは【グランディスマグナム】もカオスには通用しないってことか。しかもカオスにはスキルを使ってる様子が無い。・・・要するに素で、飛んできた弾丸のような矢を斬り落としてるってことだ。


・・・あ、今度はカオスが構えた。あれは居合いの構え? しかし、ガットとは距離がある。


「・・・【刀刃・居合い斬り】」


カオスが居合いと共に放ったのは・・・俺もやったように飛ぶ斬撃だ。・・・しかもかなりでかい斬撃だ。巨人すらも真っ二つに一刀両断してしまいそうだ。


バキィィィン!!!


「ぬうぅぅん!!」


対するガットはこれまた巨大な鉄の盾で斬撃を防いだ。ガットの全身を覆い隠せるほどの巨大な盾・・・あれ、絶対持ち運び出来ないだろ。


「【堅牢の鉄盾】さね。・・・とにかく堅い盾を作ろうとしたら、ああなった・・・らしいよ」


・・・とりあえず作ってみたけどお蔵入りになったんじゃねぇのか? まあ、実際には役に立ってるけど。


しかし、ガットの奴・・・思ったより引き出しが豊富だな。今のところカオス相手にも善戦してるし・・・


「・・・あれは皆、アンタ対策に作ったモンだよ」


ヴィオレが俺を見ながらそういった。


・・・つまり、俺がガットと当たっていたらあれらの攻略を考えなきゃいけなかったって事か。くわばらくわばわ。


「・・・面白い」


カオスは刀を仕舞うと・・・大刀を取り出した。


本番はこっからのようだぜ、ガット。








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