本選第一回戦 第一試合
「・・・よりにもよってアルクさんが相手なんて・・・」
頭を抱えるロゼさん。
「ほほう、これは面白いことになったわい・・・」
面白そうに笑うガット。
そして当の俺とラングはと言うと・・・
「とうとう決着をつけるときが来たじゃねぇか、ラング」
「そうだねぇ。・・・このゲームの先輩として色々指導してあげるよ」
「あん? 他のことならともかく戦いで俺に何を教えるって?」
「戦いは剣や拳を振り回すだけじゃないよ。頭も使わないとねぇ」
額を突き合わせて火花を散らしていた。
「・・・あの二人、仲が良いのか悪いのかわからないわね」
「ケンカするほど、っていうやつなんじゃないですか?」
「ああ、ツンデレってやつね」
・・・アテナにアルマ、ふざけたこと抜かしてると揉みしだ・・・いえ、何でもありません。
「・・・というか、我らはここにいても良いのだ? この場所は【インフォガルド】のメンバーが場所取りしたのだ。気まずいのだ」
アヴァンがナナカさんに確認している。・・・確かに、この場所はラングの命令で【インフォガルド】のメンバーが場所取りしてくれたのを好意で俺たち【アークガルド】が居候させてもらっているが・・・
「あ、大丈夫ですよ。リーダーがボコボコにされても私たちは気にしないので・・・」
・・・良いんだ・・・ナナカさん、ラングに何か恨みでもあるのだろうか? ・・・もしや、くノ一衣装を強要させられてるとか?
「皆さんもそれで良いのです?」
アーニャが他の【インフォガルド】メンバーにも聞いている。
「「「「問題無し!!」」」」
・・・ラングよ、もしかしてお前、人望ないのか?
「・・・君たちねぇ」
ほら、当のラングも落ち込み気味じゃないか。
「リーダー、大丈夫ですよ」
と、そこでロゼさんがラングの肩に手を置いた。ロゼさんは先ほどまでとはうって違い、満面の笑みを浮かべている。
「ロゼ・・・」
ラングが暗闇の中に希望の光を見出したような顔をしている。
「この場所は私たちが死守するので安心して死んで来てください。・・・無様な負け方はやめてくださいね? 【インフォガルド】の名が落ちますので」
「・・・」
しかし、見出した光はさらなる闇へと突き落とす魔の手だった。
・・・あ、転送の光が・・・
===転送===>本選第一回戦 第一試合会場
昨日のように転送され、一瞬で舞台上に立っていた。
・・・昨日よりだいぶ広くなってるな、舞台。存分に戦えるようにと言う配慮だろうが・・・思うんだがこの舞台の広さ、人数が多かった昨日の方が良かったんじゃないだろうか?
「・・・で、いつまで落ち込んでんだ、ラング」
そして舞台の中心でorz状態のラング。
「・・・僕、何か皆に嫌われるようなことしたのかな」
「普段からこき使ってるからじゃないか?」
ラングの場合、仕事というかやりたいことに関しては妥協しないからな。リーダーという立場を使ってあれやこれや指示しているに違いない。・・・あれ? 俺も人のこと言えない?
「・・・まあ、それはそれとして」
何事もなかったかのようにすっと立ち上がるラング。・・・心当たりがあるんだな?
『まもなく本選第一回戦が始まります! 出場者はみんな予選を勝ち抜いた猛者ばかり! 熱い戦いが期待できるでしょう!!』
『第一試合はいつものあの方ですね~。頑張ってください~』
『偶然ですよ? 偶然・・・』
とうとう司会にまでいつもの扱いされてしまったぞ。室長さんは否定してるが・・・本当かよ、おい。
「フッ、相変わらず大人気だねぇ、君は」
「・・・あんまり嬉しくないのはなんでなんだろうな」
目立つといっても悪目立ちなんじゃないだろうか、これは。
『バトル開始まで・・・9・・・8・・・』
「お、始まるみたいだね」
「ああ、それじゃあまあ・・・」
「「白黒つけようか!!」」
『3・・・2・・・1・・・試合開始!!』
「【ジェットソニック・ラッシュパンチ】!!」
さっそくの先制攻撃である。
「【限定召喚】! おいでヒュント!!」
対してラングが召喚したのは【グリフォン】のヒュントだ。しかも既に【成体】化してやがる。ラングはヒュントに乗って俺のパンチを回避し、上空へ逃れた。
「危ない、危ない。危うくこれまでの連中みたいに瞬殺されるところだったよ。・・・今度はこっちの番だねぇ・・・」
ヒュントの背に乗りながらラングが取り出したのは・・・【魔道書】か!
「【ファイヤボール】」
ラングの周囲に十数個の火の玉が現れる。確か【魔道書】は予め【魔法】をストックできるんだったか。だからMP消費無しでもあんな数の【魔法】を出す事ができる。・・・だがストックと言う以上、一回使ったら再度ストックしなおさない限りもう使えないはずだが・・・いきなり全開だな、アイツ。
「行け!!」
ラングの言葉と共に一斉に火の玉が襲い掛かってくる。
「おっと!」
しかし、だ。数が多いとはいえ初級の【魔法】だ。スピードも遅い。避けるのは難しくない。
「甘いよ」
「うおっ!?」
・・・と思ったが火の玉の方が俺に向かって不可解な軌道を描きながら襲い掛かってくる。
・・・おかしくね? 【ファイヤボール】って真っすぐ飛ぶだけの火の玉じゃないの? あんな急カーブやら一時停止やら垂直移動やらなんてできたの?
「ふっふっふ、【上級魔法士】のスキルの一つ、【魔力操作】を使えば放った後の【魔法】もこんな風に操ることができるんだよ」
火の玉と追いかけっこをしつつラングをよく見ると・・・手元をくねくねいやらしい動きをさせていた。
「どこがいやらしいんだよ!?」
・・・何故どいつもこいつも俺の考えてることがわかるんだろうか。
「いや、今のは普通に声が出てたよ?」
・・・え? マジで? ・・・ってああ、そんなこと言ってる間に火の玉が・・・
俺は【閃槍アーディボルグ】を取り出し・・・
「【スピンガード】!!」
迫りくる火の玉を槍を回転させながらかき消していく。
その時、視界の端でラングが・・・ニヤリと笑ったのが見えた。
その理由は・・・すぐに分かった。
「ぐわっ!?」
火の玉の一つを受けた途端、火の玉が爆発した。おかげで体勢が崩れてしまった。その隙を突くように残りの火の玉が迫る。
ちっ、まずい。
ドカドカドカドカッ!!
「・・・【ファイヤボール】の中に別の【魔法】を混ぜていたんだよ。それも【ハイ・フレイムボム】・・・【フレイムボム】の強化版の【上位魔法】だ。いかに君でもダメージは免れないだろう? ・・・それにしても君がこんな単純な手に・・・」
パアンッ!!
・・・したり顔で語っているラングに一発、銃弾をお見舞いしようとしたが・・・避けられた。今のはラング・・・じゃなくてヒュントの方が自主的に避けたな。厄介なのはラング本人だけじゃないらしい。
「・・・今のを受けて無事とは・・・さすがガットの作った鎧だね」
ラングの言ったように俺は【攻鎧アルドギア】を着てダメージを免れた。・・・出さざるを得なかったというべきか。
「お前こそやるじゃないか、ラング」
「・・・今日のために色々準備してきたからね。・・・君を倒すために」
ニヤリと笑うラング。
当然、俺も笑っていた。
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