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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第25話 向こう側の言葉

 ――異常検知。


 その言葉は、“音”じゃなかった。


 頭の内側に、直接落ちてくる。


 理解だけが先に成立する、不快な感覚。


「……今の、聞こえたか」


 フェルナンが顔を歪める。


 弓を構えたまま、明らかに動揺している。


「……はい」


 ミレイアが短く答える。


「言語化されています。完全に」


「……言葉を使ってきたってことか」


 レグナスが低く呟く。


 剣を押し込みながら。


 上位個体はまだ止まっている。


 だが、それも長くは持たない。


「……来るぞ」


 嫌な予感が、確信に変わる。


 “向こう側”が、こちらに合わせてきた。


 今までは一方的だった。


 でも――


「……対話が成立する」


 ミレイアが言う。


 その声は、わずかに震えている。


「成立しちゃいけねえ相手だろ、それ」


 フェルナンが吐き捨てる。


 だが、否定できない。


 むしろ――


「……やるしかない」


 俺は言う。


 自然と。


 もう、それしかない。


「……アーヴェル?」


 レグナスが、わずかに視線を向ける。


「……言葉を返す」


 短く答える。


「向こうが使ってきたなら、こっちも使う」


「……正気か」


 フェルナンが言う。


「通じる保証ねえぞ」


「通じたら終わる」


 逆だ。


 ここで逃げたら終わる。


「……行くぞ」


 前に出る。


 “根本”に向かって。


 圧が強い。


 さっきよりも、さらに。


 でも――


 今は、意味が分かる。


「……お前」


 声を投げる。


 “向こう側”へ。


「何をしてる」


 問いかける。


 シンプルに。


 余計な装飾はいらない。


 その瞬間。


 空気が止まる。


 完全に。


 そして――


 返ってくる。


 ――修正処理。


 短い。


 だが、明確な応答。


「……処理、か」


 呟く。


 予想通り。


「何を修正してる」


 さらに問う。


 畳みかける。


 沈黙。


 一瞬。


 そして――


 ――不整合。


「……不整合?」


 フェルナンが眉をひそめる。


「何のことだよ」


「……俺たちだ」


 俺は言う。


 即座に。


「俺たちが、“ズレ”てるってことだ」


「……なるほどな」


 レグナスが、わずかに笑う。


「気に入らねえ理由がはっきりした」


「……じゃあ」


 さらに踏み込む。


 圧を無視して。


「何を基準にしてる」


 問いを重ねる。


 深く。


 核心へ。


 その瞬間。


 “間”が生まれる。


 初めてだ。


 明確な。


 処理に迷っているような、空白。


「……効いてる」


 ミレイアが呟く。


 信じられない、という顔で。


 そして――


 返ってくる。


 ――基準:完全性。


「……完全性」


 その言葉が、やけに重く感じる。


「……曖昧な言葉だな」


 レグナスが言う。


「説明になってねえ」


「……いや」


 俺は首を振る。


「むしろ、全部だ」


 完全。


 欠けていない状態。


 ズレがない状態。


「……だから」


 理解する。


「“揺れ”を消してる」


「……ああ」


 ミレイアが頷く。


「矛盾や曖昧さを、排除するために」


「……ふざけんな」


 フェルナンが吐き捨てる。


「それが人間だろうが」


 その言葉が、空気を震わせる。


 意味を持つ。


 強く。


 その瞬間。


 “根本”が反応する。


 明確に。


 ――矛盾:排除対象。


「……やっぱりか」


 苦笑する。


「話が合わねえな」


 価値観が違う。


 根本的に。


「……なら」


 決める。


「合わせる必要はない」


 自分の言葉で行く。


「……矛盾があってもいい」


 言い切る。


 はっきりと。


「それが人間だ」


 その瞬間。


 空気が、大きく揺れた。


 今までで一番。


「……っ!」


 ミレイアが息を呑む。


「今のは……!」


 “根本”が、明確に反応している。


 だが――


 止まらない。


 さらに続ける。


「不完全でいい」


 言葉を重ねる。


「ズレててもいい」


 押しつけじゃない。


 定義を、置く。


「それでも、“選べる”」


 その言葉で、すべてが繋がる。


 少女の“選ぶ”。


 ナイルの“残る”。


 全部が。


「……それが」


 最後に。


 叩き込む。


「人間だ」


 その瞬間。


 “根本”が、明確に“揺れた”。


 初めて。


 完全に。


「……っ!?」


 全員が、同時に反応する。


 信じられない、という顔で。


「……効いてる……!」


 ミレイアが叫ぶ。


 確信を持って。


 そして――


 少女の目が、ゆっくりと開く。


「……あ」


 小さな声。


 かすかに。


 でも、確かに。


「……私……」


 言葉が出る。


 自分の言葉で。


 その瞬間。


 上位個体が、完全に止まった。


 動かない。


 微動だにしない。


「……やった」


 思わず、声が漏れる。


 今度こそ。


 完全に。


 だが――


 次の瞬間。


 “根本”から、強烈な圧が放たれる。


 今までの比じゃない。


 桁が違う。


「……っ!!」


 全員が、膝をつく。


 立っていられない。


 押し潰される。


「……拒否」


 その言葉が、響く。


 今までより、明確に。


 そして――


 “選択そのもの”を、否定する圧。


「……くそ……!」


 歯を食いしばる。


 でも、分かる。


 今のは届いた。


 確実に。


 だからこそ――


 潰しに来た。


「……まだだ」


 顔を上げる。


 倒れながらでも。


「……終わってない」


 その瞬間。


 “根本”の奥で――


 “形”が見えた。


 今まで見えなかったものが。


 明確に。


     ◇

 ついに「言葉」で対話が成立しました。

 そして、“向こう側”も揺れ始めています。


 ただし、それを認めるつもりはないようです。

 ここからが本当の衝突です。


 続きが気になったら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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