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追放された無能と呼ばれた俺、言葉で仲間を取り戻す  作者: 紅蓮シュウ


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第24話 残った意味

 ――動いた。


 ナイルの指が、確かに動いた。


「……っ!」


 息が詰まる。


 錯覚じゃない。


 見間違いでもない。


 さっきまで完全に止まっていたはずの指先が、ほんのわずかに震えている。


「……ナイル」


 名前を呼ぶ。


 今度は、祈るようにじゃない。


 確かめるように。


「……聞こえるか」


 返事はない。


 でも――


 “ゼロじゃない”。


 それだけで、世界が変わる。


「……まだ、残ってる」


 思わず呟く。


 意味が。


 完全には消えていない。


「……アーヴェル!」


 レグナスの声。


 鋭く、短い。


 振り向く。


 上位個体が来る。


 さっきよりも速い。


 完全に、こちらを狙っている。


「……くそっ」


 ナイルから目を離せない。


 でも――


 離さないと、死ぬ。


「……任せろ」


 レグナスが前に出る。


 もう限界のはずなのに。


 それでも、立っている。


「フェルナン!」


「撃ってる!」


 矢が飛ぶ。


 だが、やはり通らない。


「ミレイア!」


「防御、維持します!」


 魔力が震える。


 ギリギリで持っている。


 全員が限界だ。


 それでも――


 崩れていない。


「……ナイル」


 もう一度呼ぶ。


 今度は、はっきりと。


「戻れ」


 命令じゃない。


 願いでもない。


 ただ、置く。


 言葉として。


 その瞬間。


 ナイルの指が、もう一度動く。


 今度は、さっきよりもはっきりと。


「……っ!」


 確信する。


「……残ってる」


 完全に消えていない。


 “上書きされても、残るもの”がある。


「……これだ」


 理解する。


 やっと。


「……消えない意味」


 上書きされても、削られても。


 残るもの。


「……記憶じゃない」


 違う。


「……関係だ」


 誰と、どう繋がっていたか。


 それは、消えない。


 完全には。


「……ナイル!」


 声を強くする。


「お前、覚えてるだろ!」


 言葉を重ねる。


「ガルドと一緒にいたこと!」


「……っ」


 ナイルの体が、わずかに反応する。


「……釣りしてたこと!」


「……ああ……」


 かすかな声。


 でも、確かに。


「……焦がしてた魚!」


「……うるせえ……」


 小さな、いつもの口調。


 その瞬間。


 胸の奥が熱くなる。


「……戻ってる」


 完全じゃない。


 でも――


 確実に。


「……やれる」


 立ち上がる。


 ナイルの横で。


「……何をする」


 レグナスが問う。


 押されながらも。


「……繋げる」


 短く答える。


「“残ってるもの”を」


「……なるほどな」


 レグナスが、わずかに笑う。


 理解が早い。


「なら、時間を作る」


 踏み込む。


 さらに前へ。


 限界を超えて。


「フェルナン!」

「分かってる!」


 矢が、さらに速くなる。


 連射。


 足止めだけでも。


「ミレイア!」

「支援、強化します!」


 魔力が膨らむ。


 空気が歪む。


 全員が、限界を超え始めている。


「……ナイル」


 もう一度、目を見る。


 揺れている。


 でも、ある。


 ちゃんと。


「……お前、まだいるな」


「……ああ……」


 弱い声。


 でも、肯定。


 それで十分だった。


「……なら」


 少女を見る。


 まだ、意識はない。


 でも――


 さっき、“選んだ”。


 それも、残ってるはずだ。


「……お前もだ」


 小さく呟く。


「完全には消えてない」


 だから――


「……二人でやる」


 決める。


 ナイルと。


 少女と。


 “残ってる意味”を全部使う。


「……いくぞ」


 深く息を吸う。


 集中する。


 “根本”の圧が、まだ強い。


 でも――


 今なら、分かる。


 届かない理由が。


 そして、届く方法が。


「……お前は誰だ」


 ナイルに向けて。


 同時に――


「……お前は誰だ」


 少女にも向けて。


 重ねる。


 二人分。


「……ナイル……」


「……私は……」


 声が重なる。


 揺れが広がる。


 上位個体が、止まる。


 明確に。


「……効いてる!」


 ミレイアが叫ぶ。


「そのまま!」


「……続けろ!」


 レグナスが叫ぶ。


 押し返す。


 わずかに。


「……名前を言え!」


 俺が叩き込む。


 さらに強く。


「……ナイル……」


「……私は……」


 少女の声が、震える。


 でも――


 止まらない。


 あと一歩。


 届く。


 その瞬間。


 “根本”が、再び脈打つ。


 強く。


 今まで以上に。


「……来るぞ!」


 フェルナンが叫ぶ。


 補正が来る。


 分かってる。


 でも――


「……止める」


 俺は言う。


 はっきりと。


「……どうやってだ!」


「……分からない」


 即答。


 でも――


「……でも、やる」


 その瞬間。


 “根本”の圧が、一瞬だけ揺らいだ。


 ほんのわずかに。


 だが、確実に。


「……っ?」


 ミレイアが息を呑む。


「……今のは……」


 その時だった。


 少女の指が、動く。


 ナイルと同じように。


 ほんのわずかに。


「……来てる」


 確信する。


 両方。


 繋がっている。


 その瞬間。


 “根本”の奥から――


 声がした。


 今までとは違う。


 明確な、“言葉”。


 ――異常検知。


 空気が凍る。


 完全に。


「……は?」


 フェルナンが声を漏らす。


 それは、初めてだった。


 “あちら側”が、言葉を使ったのは。


     ◇

あとがき


 「消えないもの」が見えてきました。

 ここから戦いのルールがさらに変わります。


 そしてついに、“向こう側”が言葉を使い始めました。

 次は大きく動きます。


 続きが気になったら、ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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