第五章「超魔法少女は二人で一人? その2」
さて、この回で。ついに「ヒーローの偽物」が登場します!!
が、どうやら。いわゆる「偽ヒーロー」とは違うようで。
【第五章「超魔法少女は二人で一人? その2」】
さて変身し、現場に到着したグレンオーとストームは、目の前に二人の怪人がいることを発見した。
この様子を見て、彼女達は警戒する。
それはもちろん、今まで二人同時に怪人が出現したことがなかったから……でもあるのだが。
問題は、その二人の容姿である。
その容姿、実はグレンオーとストームには既視感のあるものだった。
というか。
さっきまで見ていた思い出の特撮『宇宙魔法少女 銀凱のメタリオン』の主人公であるメタリオン。
そしてライバルであり友であるミネルヴァンを悪役というか怪人バージョンにリファインしたような見た目だったのだ。
これを見たストームは、
「ふん! 過去のヒーローをモチーフにした悪役とは悪趣味だな!!」
と意見したが、一方グレンオーはそれに対して、
「よっしゃ、ラッキー!! 偽物とはいえ、憧れのヒーローと戦えるなんて最高じゃん!!」
と発言。
当然、ストームはこの言葉に対して、
「原作のヒーローに対しての侮辱だと思わないのかい?」
と返したが、一方のグレンオーも、
「原作が好きだからこそ、あえて悪役にするんじゃないの?」
と反論。
どうやら、二人は同じ特撮ファンとはいえ、過去作のキャラをどう利用するかでは意見が一致していないようだった。
まあ、筆者ならここで「そんなの、描かれ方次第だろ」と考えるのだが。
一方で、せっかく過去のヒーローをモチーフにしたのだから「ヒーローの偽者を作ったが、悪の心を持っていたから敗れた」とか「かつてのヒーローの偽者なので、成長を続けた本物には勝てなかった」みたいな設定は、ベタかもしれないが欲しいという個人的な意見もあったりはするので。
グレンオー、ストーム、どちらの意見も一理あるとは思うのだが……しかし。
怪人が登場している際に、ファン同士で解釈違いに関しての揉め事なんてしている場合ではないことは説明するまでもない。
のだが、さっきまで特撮のDVDを見ていた彼女たちのテンションは戦士ではなく、オタクのそれだったので……
「ウオォォォォォ!! どっちを買えばいいんだ!?」
と叫びながら発光する刃を持ったサーベルを構えて突進する偽メタリオンに斬りかかられたグレンオーは、普段の戦士モードの時のように素早い反応ができず。
咄嗟に召喚したソード・グレンマルで応戦したが、踏ん張りがきかず、敵に飛ばされて窓ガラスを割って倉庫のような建物の中に。
一方のストームは、
「ファンとしてはどっちも欲しい――ッ!!」
と、叫びながら鉤爪を構えて突っ込んできた偽ミネルヴァンに対して鏃を放ちながら後ろに飛びのいて回避したのだが。
飛んだ先がグレンオーが入ったのとは別の建物の中だったため。
結果として、咄嗟に応戦した二人は、二対二ではなく〈一対一が二つ〉という形に分断されてしまったのだった。
さて、偽メタリオンと戦うことになったグレンオーは、
「どっちを買えばいいんだという発言と、その容姿……さては、劇場版公開に合わせて発売されるメタリオンとミネルヴァンのフィギュアの事だな」
と指摘、一方その頃ストームは、
「二つ合わせて買わないという事は、高校生だから小遣いが足りないと考えれば不自然ではないな」
と推測していた。
が、既にそれなりの収入があり、両方買えないという発想のないグレンオーは、
「どっちって、両方買えばいいじゃん。ファンなら普通そうするし」
と言ってしまった。
さて、これを聞いた偽メタリオンは、
「そうか! その手があった……って、そんな金持ってねぇ――ッ!!」
と叫ぶ。
が、これにより彼ら二人のネガティブハートの悩みが。
「どっちを買えばいい」よりは「両方は買えない」という悩みに変化したため。
叫んだ偽メタリオン側に、偽ミネルヴァンがエネルギー化して融合。
その結果、二つのネガティヴハートが合体し……なんと。
左右でそれぞれ、別のヒーローをモチーフにしたデザインの怪人になったのだった。
――さて。
結果として〈一対一が二つ〉から、特にその状態での戦闘はなく。
すぐに〈一対一。ただし一方は強化した怪人〉と〈敵がいなくなった〉に変化してしまったのであるが……。
これ、グレンオー視点から見たら「仲間と分断された上に敵が強化された」というシーンであり。
ストーム視点だと「何か知らないが分断された途端に敵が消えた」という場面である。
そして同時に、この状況は。
意識や感覚を共有している敵怪人は現在どういう状況か、把握できているが。
そうではないストームは当然、グレンオーが余計な事を言ったから敵が合体したなんて言うことは知らないという状況でもある。
そのため、ストームは、
「――ッ!! まさか先輩の方を先に始末するために我々を二か所に分断し、その後あの偽ミネルヴァンの方は何かの能力で偽メタリオンを助けに空間転移でもしたのか!?」
と、やや間違った解釈をしてしまった。
なので、本当はグレンオーの自業自得なのだが、ストームは、
「おのれ、偽者どもめ!! 先輩を罠にかけるために卑怯な真似を……」
と、あらぬ誤解から怒りを胸に抱いたのであった。
さて、そんな彼女の元に。
「お嬢さん、お困りかね?」
という怪しい声が。
ストームは何者? と思い、その声の方を振り返る。
するとそこには。
白衣を纏ったフーコが。
「……何やっているんだ? 君は?」
思わずそうツッコむストーム。
まあ、そもそもロボットである為ある意味では常時裸あるともいえる上に、虎のような形態をしているため当然四つ足で歩いている彼が。
わざわざ急に白衣のようなものを着ているあたりからして、最早そう指摘するしかないわけだ。
が、フーコは。
「ふむ。どうやら仲間が危機に瀕しているため、新たな力を求めているようだな。そこで私の新しく発明したこれを……」
と、ストームのツッコミを無視して話を進め、そして先ほど桜の家で取り出したあのグレンストームに変身するアイテムを尻尾を使って渡そうとする。
この、フーコの奇妙な行動だが、実のところ。
フーコは実際には自身が超魔法少女の装備の開発などで努力や苦労をしている自分に、物語的には何の活躍もない事に不満を抱いていた。
ので、ここで博士キャラっぽい雰囲気を出して、印象付けようという狙いがあって、このような事をしているのである。
また、フーコはオウリュウと通信ができ、オウリュウからグレンオーは大して苦戦していないという情報を受け取っている。
その為、あまり焦っていないというのもある。
そもそも。
先の偽メタリオンと偽ミネルヴァンは同じ悩みから生まれた怪人。
なのでそのため、一人当たりの戦闘力は通常の二分に一しかない。
しかもヒーローに似ているとはいっても単に彼らが誕生したきっかけの悩みがヒーローのフィギュア関連だったからであって、別段ヒーローの偽者として作られているわけでもない。
つまり、彼らは元々「ヒーローみたいな外見をした、能力が通常の二分の一の怪人・二人組」だったのであり。
それが「普通の強さの半分こ怪人・一人」になっただけなのである。
ちなみに、さっきグレンオーたちが完全に油断した状態だったのに、咄嗟の判断で一応は対応できたのには、そういった理由もあったりする。
まあ、なので当然、普通の怪人と一対一で善戦できるグレンオーが、今の敵に苦戦しているわけもなく。
グレンオーは現在、
「なぁんだ。怒って変形したから強くなったかと思ったけど、いつもの怪人と同じ程度じゃん」
などと言いながら、余裕で戦っている。
……のだが。
そんな事は当然知らないストームからしたら、今は緊急事態。
フーコの冗談に付き合っている暇はないのであった。
なので、ストームはフーコから無言でグレンストームに変身するアイテムをやや強引に、下手をしたら奪い取ったかに見えるような形で受け取ると。
礼も言わずにグレンオーを助けるために倉庫の外に駆け出して行ったのであった。
さて、一方の残されたフーコだったが。
彼自身はグレンオー側の事情はオウリュウから送ってもらっていたので理解しているが。
ストーム側の事情は自分が登場したのがついさっきである以上、知るわけもない。
ので、何故ストームが不機嫌そうな反応をしたかしばし考え。
結果として、このいかにも作ったような博士キャラが駄目だったのだろうと解釈し。
これはしばらく様子見をしようと、後を追わず、オウリュウからの通信で状況を把握することにしたのだった。
そして、場面は目まぐるしく切り替わり。
ストームが向かった先の、グレンオーがいる側についてだが。
そこで、グレンオーは、余裕を持って戦っていた上。
「この怪人。デザインはカッコいいのに、こんな弱いとか残念なんだけど。ま、面倒だからそろそろやっちゃおうか!!」
と、予想外に弱い敵怪人に飽きてしまい。
必殺技を放つために、ベルトに〈チャージジュエル〉を差し込み、操作。
そして必殺技の飛び蹴りであるグレンオーストライクを叩きこもうと構えを作る。
一方、それを見た怪人は、
「や、やめろぉ!! 俺は劇場版を見るまで倒されたくねぇ!!」
と叫びをあげる。
そのタイミングで。
「そこまでだ!!」
と、声が聞こえた。
まあ、その声の主は言うまでもなくストームのものである。
ストームは倉庫の中でのグレンオーと偽メタリオンの戦闘がどうなっているか、当然知らず。
さっきまでしていた、彼女自身の見当違いの推測から。
「きっと先輩が酷いことされているに違いない。エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!!」と勝手な展開を想像していた。
いや勿論、別に怪人がグレンオーに性的な事をしているというのは全く根拠がないはずなのだが。
冷静ではないストームは何故か「酷い事といったらそういうものだ」という思い込みをしているから、そう考えているのである。
まあ、それはともかく。
ストームはグレンオーの方が苦戦しているはずと思い込んでいるのである。
なので、先ほどの台詞とともに現場に登場したのだが……
当然、彼女の勝手な、妄想交じりの推測など知らないグレンオーと怪人からしたら。先の台詞は。
「グレンオーが怪人にとどめを刺すのを、ストームが止めた」としか解釈できなかった。
結果、グレンオーは。
「え? もしかしてこいつ倒しちゃダメなタイプの怪人なの?」
と考えて攻撃をやめ、一方の怪人は、
「何か知らんが、仲間割れか?」
と考えた。だが、
「そこの怪人!! かつてのヒーローの姿を真似て、少女に不埒な事をしようと企てるとは不届き千万!! 作品に対しての愛を知らないお前に、このストームがお前に正義の力で遥かな眠りの旅をささげてやろう!!」
などと言い出した。
さて、それを聞いた怪人は最初、あまりに的外れな発言に、ストームが何を言っているのか全く意味が解らなかった。
だが、とりあえず怪人自身の作品に対しての愛を否定されたという事に気が付き。
その後、何故か自分が卑猥な事を企てていたとされているとも理解した時。
怪人が腸が煮えくり返るような、あるいは堪忍袋が温まってきたとでも表現するべきような熱く激しい感情が、ふつふつと沸いてきたのは言うまでもない。
そして――
「……テメェ……なんか知らないが好き勝手言いやがって……許さねぇ……」
ゆっくりと、彼の中で怒りが沸きあがるのに合わせて、彼の姿も徐々に変化していく。
「な……」
驚いたのはストームである。
何故なら、彼女としては彼は不届きな怪人であり、ヒーローの姿を模してはいるが、ヒーロー作品に対しての愛などは持っていないと思っていたからだ。
此処には「ヒーローが好きなら、ヒーローの評判を下げるようなタイプの偽ヒーローにはならないはず」という彼女の解釈が入っているのだが。
それは「ヒーローに悪印象をつけるための偽ヒーロー」として登場した怪人の場合である。
今回はあくまで「ヒーローをモチーフにして生み出された怪人」なのでその例に当てはまらないし。
そもそも世の中には、ヒーローに憧れた結果、偽ヒーローとしてヒーローを演じる迷惑なヤツも存在する以上。
「偽ヒーローにはヒーロー愛がない」というのは、誤った認識であると冷静に考えればわかるのだが。
「強そうな怪人が不意打ちをして自分と先輩を分断し、先輩だけを狙うという卑怯な手段を使った」という形に未だ状況を誤解しているストームは冷静ではなかったのだった。
そして。
そんな冷静ではないストームの前で敵怪人が強化形態になった。
当然、ストームはそれを軽視したりはできない……が。
彼女が興奮状態にあったことで、逆に「これはもう、さっき渡された装備で合体フォームを使うしかない!!」とだけしか考えられなくなり。
結果として、
「先輩!! これを!!」
と合体フォーム用の部品のうちやや細い形状の方を投げて渡した。
そしてストーム自身は、投げて渡した部品と同じ部品をバックルを分解して組み込み。
その際に余った元のバックルに使用していた部品を内部が亜空間に通じている、普段はジュエルを取り出すのに使用しているポーチに収納しつつ、そのポーチから合体用のジュエルを取り出す。
そして、グレンオーも同じように、しかし左右逆にバックルを組んだのを確認してから。
「超・魔導合体!!」
と叫びながらジュエルをバックルに挿入したのだった。
そして、それを見たグレンオーも……
「え? ちょ……ちょっと待っ……もう! 超・魔導合体!!」
とあまり締まらない形ながらも合体フォームへの変身を試みる。
説明するまでもなく。
今回の戦闘について事態を把握していないストームが一方的に指揮している上に。
まだ相談をしていない「合体フォームへの変身時の台詞」をストームが勝手に決めてしまったのでグレンオー側は流されるように変身することになったので締まっていないのだが。
ただし、一方で。
敵が強化した際にグレンオーも「あ、これはこちらも新フォームで応戦する展開だ」と思ったので、変身そのものは実行したのである。
まあ、ただ普通の作品ならば。
ここで変身しようとしたが失敗して敵に苦戦し、一度敗北した後。
二人で意識を共有する特訓や、絆を深めるようなエピソードが入り。
その後再び怪人が暴れて、ようやく合体フォームになる……のだろうが。
この小説はそのあたりについて、しっかり展開が描かれるような作風じゃな……ではなく。
いくらグレンオーが特撮のお約束が好きだからって、それを守るために怪人に苦戦したりしたくはないという事情があるので。
まあ、ここで。
合体フォーム。グレンストームWに。
初めての変身でも、特に問題なく変身できたのであった。
(続く)
そして、ついに。合体フォームが登場!!
……するのですが。こんな作品なので、果たしてどんな扱いになるかは。
まあ、次回を見てくださいね☆




