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超魔法少女グレンオー  作者: 窓井来足
第五章
13/19

第五章「超魔法少女は二人で一人? その1」

『宇宙魔法少女 銀凱のメタリオン』とは!!

スペースマジカルガール・シルバーアーマーメタリオンである!!


……いや、この作品は『超魔法少女グレンオー』ですよ?

 【第五章「超魔法少女は二人で一人? その1」】


「さらばだ、メタリオン!! テメェに会えてマジで良かったぜ……」

「やめるんだ、ミネルヴァン!!」


 桜の家のテレビには今、二人のヒーローの別れのシーンが映し出されていた。

 この作品のタイトルは『宇宙魔法少女 銀凱(ぎんがい)のメタリオン』。

 桜が子供のころに放送していた特撮魔法少女作品だが、登場する魔法少女の〈銀凱のメタリオン〉とそのライバルで最終的に友となる〈漆黒のミネルヴァン〉が変身後はどう見ても男性的な特撮ヒーローだったこと。

 さらに、この作品が放送する前に、この時間帯にやっていたのが普通の魔法少女アニメだったこともあって、視聴率や玩具の売り上げが伸び悩み、結果的にシリーズ化しなかった幻の作品である。

 が、特撮が大人にも受け入れられ、完全大人向けのハードな展開や、逆にすごくコメディな作品も作られるようになった今日(こんにち)

 あまりに時代を先取りしすぎた設定が見直された事と、特撮関係者の中にこの作品の隠れファンがかなり多かったこともあり、この度ついに続編として映画、更にその後に深夜アニメが作られる事が決定したのであった。

 で、この作品。

 桜と(らん)が特撮オタクになる前の、ただの子供としてヒーロー好きだった時期にはまっていた作品であったりもする。

 まあ、こんな作品にのめりこんでしまったからこそ、今の彼女たちのような趣味と性格になっているのだろうが。

 それはともかく。

 思い出の作品が、十年以上の時を経て続編決定となったため。

 桜と嵐は二人で過去に発売していたDVDを使った一挙上映会を開いて、鑑賞していたのである。

 ちなみに、この『宇宙魔法少女 銀凱のメタリオン』は全四十八話で、今のシーンは第四十七話ラストなのだが。

 流石にぶっ通しでそこまでは見られない……というより。

 桜は徹夜で見ようとしたが、嵐が嫌がって揉めて。

 最終的に嵐の「作品鑑賞は体調万全の状態でやるべきだ」という主張を桜が飲む形になって、一挙上映はあきらめたので。

 今日が三日目という形になっていたりもするのだった。

 まあ、それでもすでに夕方なのだけれど。

 さて、そんな鑑賞会だが。

 先のミネルヴァンのシーンを受けて、


「に、してもここで死んだと思っていたミネルヴァンが生きていたなんてね」


 などと、嵐は今度制作される続編映画絡みの発言をする。

 続編の設定が「テレビ版の後、メタリオンとミネルヴァンはそれぞれ別々の銀河系で戦っていて、その後継者の二代目メタリオンと二代目ミネルヴァンが出会う」という話なので。

 このシーンで敵の艦隊に一人で突っ込んでいったミネルヴァンが死亡していたと思っていたファンとしては「嬉しい反面、下手に描かれるとこのシーンの感動が台無しに」というのもあて、結構複雑な心境だったりするのだ。

 まあ、他にも初代さえ使いこなせなかった強化フォームを二代目が使うというようなエピソードもあり、そちらもファンの間で賛否両論だったりするのだが。

 やはり一番の不安どころは「死んだと思っていたキャラクターが実は生きていた」という部分だったりするのだ。


「だよねぇ……絶対死んだと思っていたもんね。ところで」

「ん?」

「嵐ってやっぱりミネルヴァン推し?」

「え、ええと……」


 桜が急に話を変えたこともあるが、それ以上に質問の内容のため、嵐はちょっと戸惑う。

 何故なら。

 嵐の性格上、漆黒とかライバルポジションとかが好きそうなので。

 普通に考えたらミネルヴァンが好きそうなのだが。

 実は嵐はミネルヴァンには〈共感〉はしているという意味で好きではあるが、〈憧れ〉という意味では王道ヒーローであるメタリオン推しだったりしたのである。

 しかし、ここで「王道ヒーローのメタリオンが好き」というと、自分たちにあてはめたら「グレンオー、つまり桜が好き」と言っているような感じがして非常に恥ずかしい……と、嵐は思ってしまったのである。

 これ、端から見るといくら何でも話が飛躍しすぎという感じだが。

 実は嵐が〈腐女子〉あるいは〈BL〉〈百合〉という言葉を知る前の幼い頃。

 同性同士のカップリングで考えていたのがこの作品のメタリオンとミネルヴァンだったので。

 彼女からすると非常に妄想が捗るネタなのである。

 さらにそれに加えて。

 前回、第四章の〈語られなかった部分〉つまり文章的には〈あれこれ色々あった〉と表現されている深夜の部分での出来事をきっかけに。

 嵐の中で桜が「いい加減なところもあるけど頼れる先輩」からちょっと違う、なんというかは微妙な、しかし好意的な扱いに変化しており……まあ、読者の方々はそれがどういう扱いなのか、妄想して楽しんでいただきたい。

 とはいえしかし、そんなことは知らない桜が。



「ミネルヴァンってかっこいいよね!! ってか、なんか嵐に似ている気もする」


 などと言い始めたので、嵐の脳内で妄想と現実が混じり。

 さらにそこに連続上映会のテンションも相まって暴走気味になってしまい。

 ついに彼女は「鎮まれ、鎮まれ!!」と何か中二病くさいことを呟き始めるに至ったのであった。

 ちなみに。

 この時に桜が言っていた〈似ている〉は実は性格ではなく、嵐と戦闘スタイルが似ているという発言だったのだが、嵐がそう受け取らなかった訳である。

 で、桜と嵐はこんな状態のまま残り一話を鑑賞したのだが。

 桜は最後の一話も楽しんでいたが、嵐は自分を抑えるのに必死で楽しむどころではなかったのは言うまでもない。

 このままではまずいので、さっさと帰って妄想百合小説を書いて溜まってきた危ない情熱的な感情を全部ぶちまけよう。

 そう決めた嵐であった。

――が。


「さて、全部見終えたから。嵐の提案通り、あたしたちの探している魔法少女についての事を話さないと……ね?」


 と桜が言い出したので、帰るに帰れなくなった嵐である。

 こ、これはまずい……が、下手な事を言って先輩に怪しまれてもまずい。

 そう判断した嵐は、


「先輩の事だから、上映会が終わって、感想を話し合ったら満足して解散するかと思っていたよ」


 といつもの様子で、表面上は普通に返した。

 嵐も伊達に長年、人前で出すのは恥ずかしい妄想を抱いているわけではないので、内面で物凄く興奮していてもそれを表に出さないで対処するのは慣れているのである。

 そのため、この平常を装った演技が、演技であると桜にばれることもなかった。

 ので、桜は、


「やっぱりあたしたちが追っている魔法少女の正体って、うちの文芸部の一人でしょ?」


 と普通に話し合いを始め、そしていつものように前置き無しで率直に意見を言った。

 この意見に関しては嵐とすでに共有済みであり、また嵐の方も「僕の事を知っていて、オタク的な知識もある人なんて文芸部員が一番怪しい」と思っていたので異論はないという状態でもあった。

 ので、嵐の方も、


「多分、タマちゃんがそうだと思うんだよね」


 と率直に怪しいと思っている女子部員をあげる。


「やっぱりタマちゃんか……でも何で彼女が?」


 タマちゃんこと霊崎(れいざき)魂輝(たまき)とは髙上丘(たかがみおか)西高等学校文芸部に属する一年生である。

 桜とは入れ違いに入った部員なので同じ時期に文芸部として活動したことはなく、また桜がOGとして文芸部に頻繁に出入りするようになった時期にはスランプであることを理由に部室に顔を出さなくなっていたので、桜にとっては顔は知っているがあまり話したことがない部員なのだが。

 まず、タマちゃんが文芸部……文化芸術総合部に入った理由は「特撮が好き」であること。

 また例のスランプとして部活に来なくなった時期と、ネガティヴハートが頻繁に表れるようになった時期が一致していて、スランプを言い訳に実際には怪人を生み出して何かをしている可能性がある事。

 さらにタマちゃんのクラスメイトから「落とした小銭を拾ってもらった」「家族でカニを食べたという話を聞いた」というような情報を嵐が得ていること。

 今までのネガティブハートから得た情報と一致するので。

 ほぼ確実にこのタマちゃんが魔法少女ではあると推測されるのだ。

 まあ、さらに言うと、いま彼女たちが変身しているグレンオーやストームについて知っている人は。

 桜が部誌に書いた『仮面戦士グレンオー』と、桜卒業後に嵐がその続編として書いていた『仮面戦士ストーム』を知っている人であり。

 特に後者は今度の文化祭で発表するためまだ、文芸部員の一部の人しか知らない作品であったという事で。

 怪人が変身後のグレンオーとストームだけを見て桜や嵐と結びつけたのは、この小説を知っている人物からの影響だと考えれば話しが通る……というのもある。

 余談だが。

 桜と会う前から、ストームが敵を倒した際などに現れるシンボルマークが、桜のものと一致していたのは『仮面戦士グレンオー』の挿絵の影響である。

 まあ、それはともかく。

 これらの要素から、タマちゃんこと霊崎魂輝こそ、ネガィブハートを生み出している闇の魔法少女ということになるのだが……。

 しかし。

 嵐の印象だとこのタマちゃんは、名前の漢字から受ける印象とは違って非常におとなしい感じの控えめな印象な女の子で。

 しかも同時に先の小銭を拾ってもらったエピソードなどもあるようにいい子でもあるので。

 善良でおとなしい女の子が怪人を生み出して何を企んでいるのかが、全く謎なのである。

 が。


「まあ先輩、女の子何てどんな悩みを抱えているかわからないからね」


 と嵐の方はさっきまで、百合百合した悩みを抱えていただけに読者的には結構説得力のある説明をした。

 これに対して、桜もまた、


「そうだねぇ……女の子なら仕方がないよね」


 と返す。

 普通なら、筆者(わたし)としてはここで「女の子なら悩みを抱えていて当たり前みたいのは、男女どちらにとってもセクハラでは?」とか指摘したいのだが。

 今回の場合は、発言者が発言者だけに「お前がそれを言うのかよ!! むしろお前はもっとなんか悩めよ!!」という指摘の方をしたいところである。


「で、先輩?」

「何?」

「このタマちゃんなんだけど……どうしようか?」

「どうするって?」

「いや、さすがにいきなり魔法少女かどうか確認したのが刺激になって、何か事件を起こされたらマズいと思うんだよね」


 嵐がここでこういう発言をしているのは当然、自分とそしてその後の心先輩に対して桜が「あんた魔法少女でしょ?」とストレートに発言した事を考えると、今回もやりかねないと思ったからである。

 今までの二人は被害を受けたのが本人のみで、その被害も「人前で魔法少女とか言われたら恥ずかしい」程度のものだったが。

 今回は下手に刺激したら大変なことになりかねないので。

 桜に暴走しないようにしてもらって、ここは慎重に行きたいというところだったのだ。

 一方、桜は過去の失敗などもう覚えていない……どころかあれを失敗だとさえ感じておらず、自分のおかげで話がスムーズに進んだとさえ思っているので。


「え? もうタマちゃんで決定なんだから、ストレートに聞いちゃえばいいじゃん」


 と反論した。これに対して嵐は即座に、


「そんなことをして怪人を大量に生み出すとか、良からぬ計画を強引に実行するとかそういうどうするんだい?」


 と心配していることを口にするが、対して桜も、


「でも、このまま何もしなかったらより一層怪人による被害が増えるじゃん。じーっとしててもどーにもならないでしょ」


 と返す。


「そんなだから先輩は放っておけないんだよ」

「ちょっと、先輩に対してそれはないんじゃない?」

「ここでいきなり先輩面しないでくれたまえ。というか先輩扱いされたかったらもっとしっかりしてくれたまえ」


 などと揉め始めた二人。

 そんな二人を見ていたオウリュウとフーコは。


「困ったな……」

「これではこれを使いこなすことはできない……」


 と言いながら何かの部品を取り出す。

 もちろん、彼らは本当に困っているというよりは、こういう素振り(そぶり)をすれば、とりあえず二人の関心が一点に集まるから揉め事を一時中断できると判断した結果、こういう発言をしながらアイテムを出しているのである。

 そして彼ら二人の予想通り、そのアイテムを見た桜と嵐は。


「このデザイン……もしかしてベルトの」

「例のあれ、まさか完成していたのか……」


 と言い争いを中断して、その部品の方に注目するようになった。

 この部品。

 見た目は結構小さく、ヒーローの強化アイテムとしては地味なのだが。

 その色やデザインからしてグレンオーとストームが使っている変身ベルトのバックルと関連して使用することが想定できるもので。

 それに加えて新しいジュエルがいくつかあるので、桜と嵐は以前少しだけ話題となった「ベルト分解ギミック」の関連アイテムと判断したのだった。


「そう、これこそグレンオードライバーとストームドライバーをグレンストームドライバーに合体させることができるアイテムである!!」


 フーコのその説明に。


「まあ、グレンストームという名前は僕たちが勝手につけた名前なんだけどね」


 と解説を加えるオウリュウ。

 それを聞いた桜は、


「グレンストーム……つまり合体フォーム!!」


 と、目を燦燦と輝かせて反応した。

 その目つきはアニメなどなら〈目がシイタケ〉と呼ばれるもので表現される類のものであった。

 一方、嵐は――


「が、合体……」


 と顔を赤らめていた。

 いや、勿論。

 特撮ヒーローでは二人が一人のヒーローに合体して変身という作品はいくつかあり。

 さらには三人が一人になったり、逆に一人が二人とか、もっといっぱいに増えるとか。

 他にも、それぞれ意思を持った巨大メカのような存在が合体して、一つの巨大人型ロボみたいになったり。

 あるいは宇宙人のような超常的存在が人間と融合というのまで含めたら、合体するのは実はかなり定番だとか、色々いえる事あるのだが。

 まあ、そういうのはおいといて。

 さっきまでの嵐の妄想から合体変身の話題というのは、非常に危ない感情を駆り立てられるのだった。

 少なくとも嵐的には。

 いや、決して彼女がそういうヒーローを扱ったその手の薄い本を読だり、書いていたからではない……とも言い切れないのが、嵐の辛いところだ。

 実際先の『銀凱のメタリオン』に関しては、年齢制限のあ――いや、なんでもない。


「どうしたの、嵐? 顔が赤いよ?」


 流石の嵐も顔色までは隠せないため桜もその様子を見て彼女の様子がおかしいとは気が付いた――が、


「あ、そうか。強化フォームの登場に興奮しているのか。なぁんだ、嵐の事だからこういうのにそこまで夢中になるとは思っていなかったんだけど。案外、可愛いところあるじゃん」


 と桜が自分基準の勝手な解釈をしたために、嵐は特に何かを悟られたりはしないで済んだ。

 ……いや、ある意味強化フォームの登場に興奮はしていて、夢中になっていて。

 そして、それが彼女の可愛いところなのかもしれないけど。

 多分、桜の考えているそれとは意味が違うというか。


「ええと、桜君達、いいかい?」

「何?」

「そのグレンストームの事だけど」


 オウリュウは桜たちを放っておくと話がどんどん脱線していきかねないとして、話を自分達が開発したベルトについての話題に戻す。

 ここには「ヒーローの装備についてちゃんと説明しなければならない」という事と、同時に「せっかく頑張って説明の練習もしたのにこのままでは無駄になってしまう」という理由があるのだが……まあ、それはともかく。


「さっき、君たちが揉めているのを見て、これを使いこなせないといったよね? それは――」


 と説明を続けようとしたオウリュウだったが、


「大体わかった。つまりあれでしょ? 心を一つにしないと変身できないという」


 と桜が先に答えを言ってしまったので、結局そのあとの詳しい説明をする必要性がなくなり、


「あ、ああ、そうそう、そうなんだ」


 と返事をするだけになってしまった。

 そんなオウリュウの様子を見ていたフーコは、オウリュウの担当であった「グレンストームに変身するのには心を合わせる必要がある」という事の説明が終わったと判断し、


「さらにそのグレンストーム、一つのフォームだけではなく――」


 と自身が担当する部分の解説をしようとしたのだが、こちらも、


「あ、このパーツとあたし達のバックルを組み合わせるとXとWの二つの形が作れるってことか。つまりグレンストームXとグレンストームWがあるという」


 と先に桜がギミックを発見して解析してしまったので、説明する必要性が無くなってしまったのだった。

 この事に「優秀な戦士を選べてよかったといえばそうなのだが、そのせいで我々がサポートする必要がなくなっているのはどうなのか? 解説はもう、全部(あいつ)一人でいいんじゃないかな?」とか思ったオウリュウとフーコ。

 だったが、そんな彼らことは気にしない桜が、たまたま、


「ねぇ? WとXでどう能力が違うの?」


 という質問をしたためオウリュウ達は「そうだ。いくら桜でも変身後の性能まではわからない。まだ我々にサポートキャラとしての役目があった」とやる気を取り戻す。

 が――

 グレンオー感覚に感知あり!

 このタイミングだが、どうやら虹華夢幻郷(こうかむげんきょう)にネガティヴハートが出現してしまったらしい。

 この事態に桜は、


「―― っと、聞いておいて悪いけど、なんか怪人出たみたいだから、いかなきゃ――魔導填身!(まどうてんしん)!」


 といって虹華夢幻郷に向かい。

 それを追うように嵐も、


「全く、タイミングの悪いところで出るな……まあ、怪人に僕らの都合なんて関係ないだろうけどね――魔導填身!!」


 と同じく虹華夢幻郷に向かったのだった。

 さて、彼女たちが虹華夢幻郷に向かったため、オウリュウとフーコも虹華夢幻郷に向かわねばならなくなった。

 例え、何もかもうまくいかない状況でも、魔法少女のサポートをしなければならないのが、サポートキャラの辛いところなのである。


(続く)

ちなみに。まあ、当然のように。

メタリオンとミネルヴァンも簡単なものですが絵を描いたことがありまして。


大体どんなヤツかは……ご了承ください。

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