表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境海の不思議探偵リリィーナ『夜の遊びの国』  作者: ゆめあき千路


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/65

(五十四)秘められた禁足地③

「残念だが、この程度で我らは死なん。首を切り落とせ」

 蒼白な顔色で、騎士団長は血と一緒に吐き捨てた。右を下にして床に横たわった腹部からは内臓の一部がはみ出し、右肘下の切り口からも大量に出血している。普通の人間なら瀕死の重傷だ。だが、リングマスターの契約が有効でこの島に居る限り、頭部を完全破壊されなければ、不老不死の彼らに死は訪れない。


「そのくらい知っているさ。君にはリングマスターの罪を証言してもらう」

 白猫は騎士団長の首に剣を突き付けながら、リリィーナへ目配せした。

 リリィーナはラリゼル姫を連れて祭壇へ上がった。倒れている黒騎士の体を避けて、祭壇の後ろの扉へ行きついた。


「ラリゼル姫、扉を開けてください」

 リリィーナに言われるままに、ラリゼル姫が扉のノブに手を掛けた。

 扉は音も無く内側へ開いた。

 リリィーナと白猫の注意は扉の奥に向けられ、倒れて動かなかった騎士団長から完全に視線が離れた瞬間だった。

 風を切る音がした。


 ラリゼル姫が声も無く仰け反った。

 

 リリィーナは、ラリゼル姫が倒れる前に、抱き留めた。

 その背に突き刺さった短剣を見、騎士団長を見た。

「手に入らぬならば、いっそ……」

 横たわって動けないと思っていた騎士団長は頭をもたげ、短剣を投じた左手を伸ばした姿勢で呻いた。

 そのとき、リリィーナの腕の中からラリゼル姫が忽然(こつぜん)と消えた。だが、――――リリィーナも白猫も、眉一つ動かさなかった。


「どういうことだ、姫は……姫は、どうなった?」

 己の道連れにせんとして殺害を目論んだ騎士団長だけが、蒼白だった顔色を紙のように白く変えた。血を吐きながらの問い掛けには、リリィーナも白猫も答を与えなかった。

「思惑が外れて残念だったな。姫はここにはいない。お前の罪が増えただけだ」

 リリィーナはラリゼル姫の姿が消えた場所から、子指の先ほどの人形を拾い上げた。小さすぎて、騎士団長からは何も見えなかっただろう。


「貴公は境海の悪魔に成り果てたとみえる。その方がわたしも躊躇(ためら)わないで済むが、殺しはしない」

 白猫が、剣の先で騎士団長の左の肩口に触れた。ギチリ、と騎士団長は全身をこわばらせ、白目を剥いて失神した。それでリリィーナには、白猫が恐ろしく強度の拘束魔法を掛けたのだとわかった。人形とは言え、ラリゼル姫を傷つけた者を許せなかったのだろう。

 だが、白猫は、ギロリと横目でリリィーナを睨んだ。

「なぜ、短剣を止めなかった、リリィーナ?」

「そっちこそ」

「今日はえらく機嫌が悪いな」

「君のせいだぞ。心当たりを思い出して反省しろ」

「匠の館の件だな。人形でも、今のはこたえたよ。黒騎士たちは先に待機所へ引き渡してくる。でないと素手で八つ裂きにしそうだ」

 白猫は黒いマントを翻すと、倒れていた黒騎士三人ともども消え去った。

 リリィーナは右手の銀の短剣を長剣に変化させ、重い扉をゆっくり押し開いた。


 眩しいほど白い部屋だった。

 さっきの祭壇の間が舞踏室ほどの広さなら、ここはその半分くらいしかない。

 どこかで、ぴちょん、と水音がする。

 純白の部屋の中央に、黒ずんだ赤い染みが見えた。

 血だらけのエプロンを付けた人が、白い真珠質の玉座に腰掛けている。その両手は力無く肘置きに置かれ、顔はガクリと前に俯けられていた。

 トイズマスターだ。真珠の玉座にロープで縛り付けられている。

 と、玉座に近付こうとしたリリィーナは、あと一メートルの処で床を蹴って後ろに跳び、扉近くまで後退した。

 玉座を囲むように、真珠色の大きな棘が何本も生えていた。一本一本がリリィーナの膝に届くほど長く、尖端は針のように尖っている。

「お待ちしておりました」

 椅子の背の後ろから、くの字に体を曲げた白髪の老人が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ