1-6『婚約者と悪役令嬢(親友)の浮気現場を目撃する伯爵令嬢。』
ジャンとミーナの直属の上司の文官長が、眼鏡を人差し指で押さえながらこちらに歩いてくると、一気にその場の雰囲気が変わるのであった。
「ジャン君、ミーナ君、先程までの事は、しっかりと記憶と記録に残させて貰ったよ。」
低い声で淡々と告げられると、途端に2人の顔から血の気が引くのであった。
特にミーナは先程までの勢いのある態度とは一変して言葉を失い、文官長を縋るように見たが、
「はぁーーーっ。君達は本当にとんでもない事をしてくれたものだ。処分が決まるまでは仕方がない、投獄させて貰うよ。」
「!!!!!っっ。」
何とも無慈悲な言葉に、ミーナは力なくその場に崩れ落ちた。そして、弱々しい声でサラナに縋りつくのであった。
「サラナ、許して頂戴。私が悪かったわ。助けて、お願いよ。ねぇ、お願い。…私達の仲でしょ。」
お願い、お願いよと涙を浮かべながら訴える。
(うげっ、えぇっ、それはいくらなんでも都合が良すぎると思うけどもな!)
リルダはミーナのあまりにも自己中心的で自分勝手な言動にあきれ果てた。
心の中では、叫んでいたが、こちらが騒ぎ立てることではない為、表情をなるべく表には出さないように振る舞う。
そして、隣にいたサラナをチラリと見た。
サラナは崩れ落ち座り込んでいるミーナの前まで歩み寄った。
口元を覆っていた家紋入りの扇子を、パンッと一気に閉じると、閉じた扇子を片手で持ちミーナの肩に扇子の先でトンッと、指し示した。
サラナはとても冷たい表情で見下ろしながら「わたくし達の関係ですって?そんなものはあなたとジャンが関係を持った時点でなくなっていたというのに…。」と冷酷に言い放った。
「な、何ですって?」唇がワナワナと震える。
「ミーナ・キアナ男爵令嬢。王宮の処分とは別にカルティアナ伯爵家として、この度のあなたの醜態に対しての、こちらが被った不名誉の代償はきっちりと払っていただきますわね。」
にこりと微笑み、「勿論、あなたもですわ。ジャン・ミハルド子爵令息。婚約破棄はそちらの不貞によるものですので、それ相応の代償はきっちりと払っていただきますわね。」
ジャンにもさらりと言い放った。
「なっ!な、、、サラナ謝るから許してくれよ。頼むよ。この通り…。」
両手を合わせ懇願するが冷たく一瞥されるのみであった。
2人は何故こんな仕打ちをさせられるのかという表情だ。
自分達がした事への反省は微塵もする事はなく伝えられた事柄に対して、ただ信じられないというように愕然としている。
嘘でしょ、こんなのあんまりだ、信じられないわ、勘弁してくれよと、繰り返しそれぞれに言うのであった。
♢♢♢♢♢♢
はぁっ。
また溜め息をつき文官長が片手を揚げ合図をすると騎士達がどこからともなくやって来て2人を拘束し始めた。
「ジャン君、ミーナ君。全く勘弁してほしいのはこちらのセリフなのだよ。ジャン君、君は本当に表面上の態度はすこぶる良かったが、文官の仕事は全く出来なかったね。ミーナ君。君はそこそこ仕事は出来たが、業務上の態度がとても悪かった。やはり身だしなみは心を表すものたのだよ。はぁっっ。君達は勤務中に突然姿を消して、どこで何をしているのかと思ったらこんな所で、こんなっ……。とんでもないことをして。」
文官長はそう言うと、もう一度長い溜め息をついた。眼鏡をクイクイと上げていた人差し指を、今度はこめかみに持っていきクルクルとまわし始める。
ブツブツと、しかし大きめな声で「えらい事をしてくれたものだよ。ハァァア…。今までも、私を含め他の文官達が、君達が業務上発生させた失敗の穴埋めをしていたというのに…。フフフハハハ。そうだな。過去には数字の書き間違えがあり、とんでもない数の備品が到着した、何て事もあったね。それも何回かあったな。数字だけでなく品目事態間違えていたこともあった。その度に私たち他の文官は方々に謝りにいったり、本来の品目を注文し直したりと…。しかし、今回は更にとんでもない事をしでかしてくれたものだ。これは、もうとんでもなくどうしようもない事だ。完全に自分達の故意でした大失態だよ、此れは。」
フフフフハハハッと笑ったり溜め息をついたりと、文官長は少し壊れ気味だ。
(文官長…、おいたわしや。)憐れみの色の混じった栗色の瞳で文官長を見つめる。
最後は騎士達に捕らえられた2人に対して「君達の処罰はきっと重いものになるだろう。檻の中で反省し心して待つように。」と、きっぱりと伝えるのであった。
ジャンとミーナは騎士達に拘束されながらも、またお前が悪い、あんたが悪い、どこででも発情しやがって、あんたが強引に誘ってきたんだ、と今度は互いを攻撃し合い、醜さをひけらかしながら騎士達に連れ去られて行くのであった。
♢♢♢♢♢♢
2人が連れたさられた後、辺りには静けさだけが残った。
青い空と美しい青と水色の花が美しく咲き誇る生け垣の前で、品の良い美しい水色のドレスを着たサラナは、家紋入りの扇子をおもむろにしまうのであった。
最後までお読みいただきありがとうごさいます!
少しでも面白いと思われましたら是非ブックマークお願い致します!
執筆の励みになります!
☆→★★★★★感想なども嬉しいです。
宜しくお願いします!




