1-3【番外編・学園時代】リルダの独り言とヤンデレ気味のアベル
(番外編)
アベルと両片思い中のリルダがただひたすらに独り言を言う回である。
最後は、ヤンデレ気味のアベルの黒く重い思いも綴られている。
───魔術学園メモリアル学園───
メモリアル学園の中庭のベンチに、オレンジ色の髪の毛の女性生徒が一人、真っ赤な顔をして身悶えている。
そう、リルダだ。
……一人ベンチで、何故身悶えているのかというと、同じクラスの、ある男子生徒との最近の出来事を思い出していたからであった。
その男子生徒の名前はアベル。後のリルダの婚約者となる者だ。
♢
アペルの事は、この学園に入学し、同じクラスになり、いつの間にかすごく好きになっていたのであった。
最初は特に異性として意識していなかったし、勿論気になる対象でもなかった。
たまたま前の席に座っているヒョロッとした男子だな、位にしか思っていなかった。
が、それがいつの間にか、もの凄く好きになっしまっていたのだ。
アベルの見た目は、ヒョロッ?スラッとして整った顔だちのクールな印象だった。
アベルが前の席だった為、グループ活動などで一緒になり、グループ活動を共にしていくうちに、ひとつの物事をきちんと考えて真面目に取り組み、周りにさりげなく気遣いが出来るアベルに、どんどん目が離せなくなり……そして好きになった。
♢♢♢♢♢
はぁぁ~。
リルダは、オレンジ色の髪の毛に隠れた耳まで、真っ赤になりながら深い溜め息をついた。
だって、初めてなのだ!恋をしたのが!前世を含めて!
わっかんないよ~。
しかし…そんな恋愛超初心者なリルダでもわかるのだ…多分…アベルも、私の事が好き!なのだ!多分きっと…絶対。
色々と思い当たる節がある。
例えばリルダは、アベルの事を自然と目で追っていた。
気付いたら赤色の美しい瞳をじっと見つめてしまうのである。最初の方はただ一方的に見つめているだけという感じであったが、それがいつの間にかアベルと日に何度も目が合うようになった。
そして……最近では、リルダがハッと気がつくと、その先にはアベルの赤い瞳が目に飛び込んでくるようになったのだ…。キュンとなる笑顔と共に。
はぁぁ~。
リルダは、また大きな溜め息をついた。落ち着け!自分!
柔道界では『最強の猛獣』と恐れられていたではないか、。しっかりするんだ。
ブンブンと首を横に振った。
しかし、あるのだ。他にも思い当たる節が……。
この前もリルダの一番苦手な呪文の授業で、先生に当てられた。
とても簡単で重要な呪文であるが、リルダの最も不得意とする古代語であった為か、すっかり忘れてしまったのだ。
そんな時、アベルはこっそり教えてくれたのだ。
その時は随分離れた席だったが、アベルが魔法で私のノートに呪文を書いてくれた。
そのお陰で答えることが出来、先生にも怒られずに済んだのだ。呪文を言い終わった後、アベルの方を見たら、何とアベルは微笑みウィンクしてくれたのだ。
ウ、ウィンクだと!もうアイドルみたいだね。
惚れてしまうやろ!
落ち着け。しっかりするんだ、自分。
実家の騎士団たちの間では『最恐の獅子』とゴリラのような男たちにも恐れられているではないか。
リルダは真っ赤になった頬をバチンッと両手で5回ほど叩いた。
ハハハッ
そして、また、今日決定的なことがあったのだ。
それは授業の模擬戦終了後の出来事だった、。
私は強すぎる為、模擬戦の時はいつも男子チームと一緒に戦う。…で、試合に圧勝し皆に体育会系のノリで、ハイタッチをしたのだが、アベルにもそのノリでハイタッチしたのだ。
そしたらキュッッてそのタイミングで、キュッて私の手を握ったのだ。
ダーーッッ!
アベルの手って、指が長くて骨張っていて、華奢なんだけど大きくて……セクシー、総じてセクシーな手!
そうして、じっと私を見て「可愛い顔にすり傷がある。」と言って私をっっ。
他の女子に比べたら筋肉質な私をヒョイッと抱き上げて転移魔法で医務室に連れていってくれたのだ。
勿論、手当てもしてくれた。心配そうに丁寧に消毒してくれたのだ。
ねっ!?
知らんけど、、私の事好き?だよね。
中庭に来てから、ずっとそんな考えがループしていた。
♢
クシュンッ。
季節は12月になろうとしていた。気付いたら小1時間程、1人で悶々と考えていたようだ。
陽が落ちるのも早くなってきた。もうそろそろ陽が落ちそうである。急に寒くなってきた。
両手で自分の腕をさする……。
…と……。
大きくて暖かなコートが肩に乗せられた。
私は思わず斜め上を見た。
「風邪引くよ。」
キャャーーアベルだ。アベルがアベルのコートを私に被せてくれた。
大きくて温かなコートを私に。
わざわざ被せてくれたのだ。
アベルは走って来てくれたのか、息が弾んでいる。
アベルも?私の事好き?だよね?
お礼を伝え、少しうつむく。
夕日のせいか、リルダの顔が赤く染まっている。
♢♢♢♢♢♢
アベルは赤い瞳で愛らしい人を見つめる。
(俺のコートの中にすっぽり収まっているリルダは可愛いな。ずっとこのまま閉じ込めておきたい位だよ。)
(ごめんね…。やっぱり一生離してあげられそうにはないな。)可愛らしく人を疑うことを知らない、温かな茶色い瞳を覗き見た。
(こんなに可愛いリルダを、他の男共が不躾にベタベタと触っているのは、非常に不愉快だった。ハイタッチのついでにどこか、2人だけの世界に連れて行きそうになり、思わず力が入ってしまった。
衝動的に医務室ではなく、何処かに閉じ込めそうになったのは…。危なかったな。)
(仕方がないんだよ、リルダ。俺が君と出会うように仕組まれたから、この世界は壊れずに済んでいるんだよ。)
優しく温かな笑顔を浮かべているアベルが、まさかこんなにも重く深く自分に執着しているとは、リルダは知る由もないのである……。
♢♢♢♢♢♢
それから数年後…。
片方は非常に重すぎる愛を妄信的に注ぎ過ぎていたのだが、片方は肉体も強靭であるが、なかなか精神も強靭だ。
……身体、精神ともにまるで鋼のようなのだ!!!
それでいて恋愛に関しては、鈍感なリルダの心は壊れることなく、二人の愛は順調に育っていった。
流石は転生者にして、武道を志すものだ。
……でなければ、アベルに心を壊されていた可能性もある程、アベルの愛は重くて深くて黒かった。
♢♢♢♢♢♢
アベルは学園を首席で卒業し、リルダも騎士科目は非常に優秀な成績で卒業した。
アベルは王宮の魔法課に就職し、リルダも王宮の騎士警備課に所属された。
……そうして2人は恋人から婚約者となったのであった。
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