4-1 「席で見ていろ!」と私の曲を一人占めした婚約者殿。…。フフフッアーハハハッ。あの人のお陰で最高の曲が出来ました。
まだ朝早く、東の空が赤く染まってきた頃。
ハッハッハッ……
リルダがジョギングをしている。
空き地が目に入りそこでトレーニングをする事にした。
「フンッフンッフンッッッ!」
腹筋、スクワット、腕立て伏せなど凄まじいスピードで数をこなしていく。
お次は柔道の組手だ。
相手がいるとイメージして組手をするのである。
栗色の瞳がギラリと光る。もしも、ここに本当に相手がいたらその相手はリルダに睨まれただけで怖じ気づき動けなくなるであろう。
流石は前世『最強の猛獣』今世『最恐の獅子』だ。
ビュンッッ!!!シュッッ!!!
1人で組手をしているだけなのに空を切る音なのか、とんでもなく凄まじい音がする。
「フンッッ!そこだっ!」!ギラギラとした栗色の目から光線のようなものが出る。
相手を一気に仕留めるのだ!!!
圧倒的な力でねじ伏せる。
「ハッ!」
「フーッ」
額から汗が滝のように出る。
一呼吸し、収納鞄からタオルと水筒を取り出す。
フカフカのクマのアップリケ入りの黄色いタオルで汗をふいた後、水筒の冷たい水をゴクゴクと一気に飲んだ。
朝から闘志がみなぎっている。
朝から、メラメラと燃えているのには理由があった。
何故かというと、たまに見る夢のせいだった。
赤い瞳の黒い角のある黒くて巨大な魔王の夢だ。
今回も魔王はリルダに寄りかかり、乗りかかり、いつしかリルダとひとつになろうとしてきたのだ。
その為、今回は、リルダは魔王に寝技をかけて、魔王を倒したのであった。
夢とはいえ、魔王の夢は妙にリアルである。
故に、朝から闘志がメラメラと燃え盛っている。
今日も仕事であるが朝早くから闘志の波にのり、走り込みや筋トレ、組手等を気の向くままにこなしたのであった。
「よしっ!!帰ろう。」
そういうと、非常に早いスピードで愛しい人アベルのいるアパートメントに戻っていくのであった。
♢♢♢♢♢♢
アパートメントに戻ると、アベルはスヤスヤと寝息を立てぐっすりと眠っていた。
(フフッ可愛いなアベルは。)
鳥のさえずりが聞こえてくる。辺りは大分と明るくなってきた。
カーテンから差し込む陽の光りは、アベルの長い睫を照らしキラキラと輝いてみえた。思わずそっと艶やかな黒髪に触れる。
暫く撫でていたのだが、アベルは少しも反応がなくスヤスヤと眠っていた。
(まるで天使だね、アペルは。…しかし本当にぐっすりと眠っているな。)
リルダは、またクスッと笑うとキッチンに向かい朝食の準備を始めたのであった。
♢♢♢♢♢♢
今日は豆腐と大根入りの味噌汁と、卵焼き、それとハニーバタートーストだ。
お弁当は、サンドイッチだな。
何だか前世でいうところの和洋折衷だが、この漫画のような世界は食べ物はなんでもあった。
基本は、西洋の食べ物が多いのだが和食もしっかり材料など揃えることができるのである。
リルダはすごい速さでトントントントンッッッと大根を切っていく。
具材を、鍋にいれて大根に火を通していく。
ボールに入れてあった豆腐を取り出して…なんと、豆腐を宙に放り投げ、ササッと賽の目に切ったかと思うと包丁で豆腐を一回受け止めて鍋に静かに投入していく。
絶妙な力加減で豆腐は崩れることなく鍋の中に収まった。
1度火をとめた後、味噌をといていく。後は、甘めの卵焼きと、こんがり焼けたトーストに風味豊かなバターと蜂蜜を塗る。
食卓にそれらを並べアベルを起こしに行く。
♢♢♢♢♢♢
布団をかぶりスヤスヤと眠っているアベルの肩を優しく揺らしながら起こす。
すると、長い睫の瞼がゆっくりと開き、ルビー色の瞳がこちらをぼんやりと見る。美しいルビー色の瞳にリルダが映る。
甘やかに、にこりと微笑んだかと思うと、グイッと引き寄せられ、ギューッと抱き締められた。
そしてルビー色の瞳が熱を帯び「やっぱりリルダは最高だよ。」
耳元で呟いた後、耳をチュッと吸われる。アベルの表情は恍惚としている。
リルダはそんなアベルの頭を優しく撫でた後、ヒョイっと抱き抱え食卓に座らせた。
アベルはどうやら寝ぼけているようだ。
温かな紅茶を入れる。リルダ用にコップに牛乳を注いだ。
(今日の朝ごはんは、ホント和洋折衷だな。…今日はいつもより体が糖分を欲しているようだ。)
手を合わせ、朝食を食べる。
甘くて温かくて美味しい。糖分が体内を駆け巡る。
徐々にアベルも目が覚めてきたようだ。
しょんぼりとしながら「リルダ、ごめん。全部用意してもらって。今日は起きれなかった。」
リルダはにこりと笑い大丈夫!と伝えた。
アベルは、おいしい、おいしいと言いながらた食べてくれた。
♢♢♢♢♢♢
赤い瞳で、温かな栗色の瞳を眩しげに見つめ、心の中で自分の思いを叫んでいた。
(クククッ。リルダ、リルダ、リルダ。
今日のリルダの寝技は素晴らしかった…。うっかり防御魔法をかけ忘れてしまう程のキレのある美しい技だったよ!)
美しい技に溺れて、余すことなく堪能したい欲望にかられ、回復魔法を死なない程度に最低限かけ続けた。
その結果、気絶しそのまま朝までぐっすりと、寝てしまっていたのであった。
(なんて、幸せな時間だったんだろうか!)
リルダは、アベルの奥深い本性は全く知らない。
しかし、本能は黒いアベルをブッ倒しているのだ。
そんなことを全く知らないリルダは、朝食を終え目の前にいるアベルに微笑んだ。
♢♢♢♢♢♢
その後、身支度を整え、2人で王宮に向かったのであった。
───── 勤務中
背筋を伸ばし赤い騎士服にに身を包み、王宮を見回る。
ふと今朝の事を思い出す。
(今日のアベル、何だかいつもより幸せそうだったな!そして朝から美しく色香が漂っていた。)
(よし!仕事に集中、集中!)
リルダは、軽く自分の頬をパチンと叩くと、見回りを再開した。
今日は王宮で、カルティアナ伯爵協賛の芸術祭が行われる。
いつもより人が多く訪れる為、気を引き締めなければならない。
この漫画のような世界では、必ず何かトラブルが起こるのだから…。
…と、リルダが思った直後に、令嬢の理不尽なトラブルに遭遇するのである。
王宮のホールの入り口の少し外れたところで、すごい剣幕で怒鳴っている銀髪に水色の瞳の男性がいた。
「だからっっ!俺のピアノがあってこそなんだよっっっ!!!俺のピアノが評価されたのさっっっ!君の曲ではないんだよ!君の曲は取るに足らない物なのだよ。君は…。君は観覧席で見ているんだ!!」
身のほどを弁えたまえ。
そう言い放つと、1人だけスタスタと足早に会場に向かうのであった。
残された黒髪の女性は、うつ向きカタカタと肩を震わせているのであった。
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引き続き、リルダとアベルをよろしくお願いいたします!




