3-1 夜会の終盤は、聖女に婚約破棄をする小国の王子
お父様…。勿論覚えておいでですわよね。
お父様は仰いました。
『己の更なる価値を証明してみろ。さすれば、お前の望みを叶えてやろう。』
ありがとう、お父様。このような素晴らしい舞台を用意して下さいまして。
心より感謝申し上げますわ。
少しくすみがかかった金色の瞳の奥で、強い光を放った炎が揺らめいている。
♢♢♢♢♢♢♢♢
リルダは回廊を1人歩いていた。
先ほどの事件が一段落し夜会も佳境を迎えようとしている。
事件後、アベルは泣く泣く魔法課に戻って行った。
ちゃっかりと、リルダのおでこにキスを落としてから。
♢♢♢♢♢♢
(フゥッ。やはり今日も物語のようなすごい出来事に出会ってしまったな。)
(夜会も中盤を過ぎたな。もう、あんな強烈な事件には遭遇しないよね?…いや、わからないか!気を引き締めてとりかかろう!)
心の中で呟き、辺りを見回っていく。
(ん?…あの方達は!?)
リルダは、またもや100メートル程先で揉めているような2人を発見した。
2人の近くには…、ちゃっかり赤い首輪を付けた黒猫
確認した。
♢♢♢♢♢♢
なにやら男性が、ものすごい剣幕で怒鳴り散らしている。
かたや、女性の方は高貴な雰囲気をまといくすみがかっている金色の瞳でその状況をじっと見ていた。
男性は、遠く離れた小国ハバスの第3王子サイノスだ。女性の方は、我がメモリアル帝国の第3王女アリアである。
2人は半年前に帝国のパーティーで出会い、サイノスがアリアに一目惚れをした。
サイノスが猛烈にアタックをした後に、婚約をしたのであった。
もう間もなく結婚をすると言うことで、夜会前ギリギリに帝国に到着をし、国王達に結婚の挨拶を兼ねて、夜会に参加していたのだ。
(何か揉めているのだろうか?)
リルダは2人を見つめ、非常に速いスピードで2人のもとに駆けつけるのであった。
♢♢♢♢♢♢
第3王子サイノスは目の前にいるアリアを指差し、物凄い剣幕で一方的に怒鳴り散らしていた。
「お前!お前といういう奴は、役立たずの薄っぺらい人間だよ。っったく。全くもって見当違いの程度の低い人間だ!その、くすんだ金色の髪と瞳のようにな!!!」
(おっと!すんごい事言ってるけど……、間に入った方がいいのか?)
リルダは息を潜め、回廊の大きな大理石の後ろに隠れた。すると…不意に後ろから肩をポンと叩かれる。
(あっ、貴殿方は!)
リルダは咄嗟にビシッと敬礼をした。
リルダは相手の表情を読み取り(了解いたしました!暫くこのままで状況確認、情報収集ということですね。)
リルダと他数名は、そのまま柱の影でひっそりと2人の状況を伺うのであった。
♢♢♢♢♢♢
そんな事とは露知らず「容姿だけ、その容姿も我が国に来てからというものの、いつの間にか美貌が薄れ、何にも取り柄のない、何にもない女だよお前は!」
第3王子サイノスは罵声を浴びせながら捲し立てるのであった。
一方的に罵り続ける。小国とはいえ、一国の王子とは思えぬ程、品のない振る舞いだ。
反対に第3王女アリアはこんなに怒鳴られているというのに、取り乱すことなく高貴な金色の目でじっとサイノスを見つめている。
その佇まいは気品が、漂っている。
サイノスを見つめうっすら笑みを浮かべながら静かな口調で話し出した。
「それで、貴方はわたくしを別邸の塔に幽閉したのですわね。」
フンッと鼻で笑いながら「薄汚れた何も持たない女等見たくないからな!俺の目に写り込むだけで不愉快だ!虫酸がはしるわ!塔に閉じ込められるのも当然だろう。」
「そうですか…食事も腐りかけの物しか与えられてなかったのも、貴方はご存知でしたの?異臭がしたりカビが生えていたものもありましたわ。」
(ヒッ嘘でしょ!?帝国の王女にそんなもの食べさせてたのですか?)
リルダは思わず心の中で叫ぶ。
「ハッ!そんなことは知らないが食事を与えられる価値もないのだよ、お前という女は!だから使用人達もそういう食事を与えたのだろっっ!」
「嫌がらせで、貴方の元婚約者から体罰を受けていたこともご存知でしたの?」
「はぁあ~!?そう言えば俺の愛しい女が、そんなことも言っていたな。お前ごときが婚約者であること事態が気にくわないから『仕置き』をしてやったとな!」
♢♢♢♢♢♢
リルダは黙って2人の会話を聞いていた。帝国の第3王女がまさかそんな仕打ちをうけていたことに驚きを隠しきれなかったが、出来るだけ平静を装った。
なんて人だろう。しかも、第3王子が一目惚れしたとかなんとかで、帝国の王キングに頼み込んで、遠く離れたハバスにアリアを半ば強引に連れていったと聞いていたのだけれど…。
リルダは思わず目の端で、隣にいた帝国の王キングと女王クイーンを見た。
2人はまるでトランプに描かれているような風貌で金色の瞳と髪に威厳を感じる。
2人とも口元は涼やかに笑みを浮かべていたが、目は全く笑っていなかった。
その目は、鋼の精神を持つリルダでさえ思わずゾッとするほどおそろしく冷たかった。
♢♢♢♢♢♢
「そうですのね…。つまりはサイノス様が認識していなくとも、そのようなひどい仕打ちは受けて当然ということですね。サイノス様は使用人達や元婚約者のしたことを容認しているという訳ですのね。」
手のひらを上に向け、当たり前だと頷いたあと
「フンッ当然だ!帝国の王女というだけで、お前のような何の価値のない女とは…!今日をもって婚約破棄をする!」
サイノスが婚約破棄宣言をしたタイミングで、キングとクイーンが、大理石のの柱の影から、動き始めた。
リルダも、それに連れ立ちアリアとサイノスの元へと歩みを進めるのであった。
♢♢♢♢♢♢
「俺は、美しい元婚約者エミーリアと結婚することにしたからな!お前は、もう用済みなのだよ!」
リルダ達はサイノス達の目と鼻の先に来ており、もう既にサイノスの目の端にはリルダ達が見えている筈なのたが、サイノスは興奮しているのか全くリルダ達には気付かずベラベラと喋り続けるのだ。
「えっ?王の許可は取ったか?だって?そんなものわざわざ伝えずとも父上達は認めてくれるに決まっているさっ!お前みたいなみすぼらしい女と、俺の子を身ごもっている美しい女と、どっちがいいのかは一目瞭然だろーがっっ!!!」
突然「ハーッハハハハハッ」と、のけ反り出し大きく高笑いをする。
(ハハハッ!これでこの女…。くすんだ瞳に髪の毛の俺には全く釣り合わないみすぼらしい女とは………。おさらばだー!!!!!ハハハハハハッ)
悪意のある醜く歪んだ顔には青筋が立っている。
一通り笑い終えたあと、アリアを睨み付けながら「わかったな!」蔑みながら指を差した。
……が、指差した方には帝国の王キングと、王女クイーンがいたのであった。
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