2-5 『毒花』と呼ばれていた悪役令嬢『お義姉様はこれから先も私のドアマットでいてね。』
明白な事実を突きつけられたというのに、反論するキャロライン。
「こんな、こんなの嘘よ!そう…そうだわ!お義姉様よ!お義姉様がそうしろと私に強要してきたのですわ!」
「私が自ら刺したように見せかけたのよ!!!お義姉様はそういう人なんです。脅されて仕方なく。ぅぅうっ私、本当に怖かった…。」
映し出された映像に音声がないのをいいことに、言い逃れできない状況である筈てあるのだが、とんでもないことを言い出した。
キヌアは汚いものをみるかのような蔑ずんだ表情を強く顔に出しながら「動かぬ証拠を前によくもそんなことを言うものだ。なんという愚かで汚い人間ななのだろうか。お前がアリシアにした事は明白となっているのだが。まあよい、そこまで言うのなら更に動かぬ証拠を、お前にくれてやろう。」
そう言うとアリシアの身に付けている自分の瞳の色とそっくりなネックレスには、録音機能を付与してあるのだと続けて言った。
録音機能があると聞いて、横にいたアリシアは少し驚いていた…。
どうやらネックレスに録音機能が付与されていると聞かされてなかったようだ。
(役立ちはするけれども、それは……盗聴ですね?)
(それは盗聴だな!)
リルダと警備課長はそう思った。
アベルはリルダをマントの中にすっぽりと覆ったままの姿勢で「成る程…。」と言い、アリシアのネックレスを了承を得てから受け取ると、長くセクシーな人差し指を立て何やら呪文を唱える。
すると、ネックレスがふわりと宙に浮き、光った。
先程の映像に合わせて音声が流れ出したのであった。
♢♢♢♢♢♢
高慢で醜悪な表情と低く高圧的な声だ。
「私はね、どんな手を使ってでも、お義姉様を決して逃がしはしないのよ。」
「ウフフフッお義姉様。これからも私のドアマットでいてね。」
邪悪な黄緑色の瞳でアリシアを見下す。
「あまり調子にのるようなら、またお母様に『躾』をしてもらわないといけないわよね。」
そして自分の短剣で自分を刺したのだった。
♢♢♢♢♢♢
アリシアは自分の体が震えるのを感じたが、目を瞑り深呼吸をした。
ドレスの隅を持ちギュッと力を入れ、真っ直ぐにキャロラインを見る。
キャロラインは物凄い剣幕で捲し立てる。「嘘!嘘よ!こ、これはこれは何かの間違いよ!そう、そうよ!悪いのは全てお義姉様!いつも決まって悪いのはお義姉様ですもの!私は悪くないわ!お義姉様が全て悪いのよ!そう、そこにいる『毒花』のお義姉様がね!……とっとと罪を認めなさいよ!お義姉様!」
反省の色は全くみられない。更にはアリシアに罪を擦り付けようとするのだ。
アリシアは勇気を出しきっぱりと言った。「私はやってません。」
こんなにきちんと反論できたのは初めてであった。キャロラインがどう言い返してこようと関係ない、。
きちんと自分で反論出来たこと事態がアリシアの今後の人生に良い影響を与えるのだから。
キャロラインの方は残念ながらアリシアが真実を伝えたことで逆上し更に苛烈に反論し出した。
もう、少しも取り繕うとせずピンク色の髪の毛を振り乱しながらアリシアに醜い感情をぶつけ出したのである。
「こんの!役立たずがっ!あんたごときが生意気言ってるんじゃないわよぉぉっ!身の程知らずめっ。薄汚い『毒花』めが!!!!お母様に、お母様に言いつけてやるわ!」
そうしてアリシアにつかみかかろうとする。
キヌアはとっさにアリシアの前に出て剣を抜き刃先をキャロラインに向けた。、
「貴様。ほとほとあきれた奴だ。自分で勝手に切っておいてよくもそんなことを。流れるように嘘を付き他人を陥れようとする…。もう、我慢ならん舌を切り落としてやろう。」
理性を失ったキャロラインは、それでも襲いかかろうとしてきた。
アベルのマントにすっぽりと収まっていたリルダの茶色い瞳の奥が、ギラリと煌めく。
いつの間にか素早い動きで、キャロラインの後ろまで行ったかと思うと流れるような綺麗な手刀で、首筋を一撃した。
「あっがっウッッ。」
ドサリッ
気絶しその場に倒れ込んだキャロラインに手錠をかけた。
(オーッッブラヴォー!流石だよ!リルダ君。なんと美しい手刀だ!その角度!その鋭さ。誰もか出せるわけではない絶妙な切れ味だね。是非とも一度、私もその美しい手刀で気絶させて貰いたいものだよ!)
警備課長は、リルダの動きに惚れ惚れとしながら、ポンとリルダの肩を叩いた。「リルダ君、ご苦労!
後は私に任せたまえ。罪状が決定するまでこの者は一旦牢獄行きだ。」
リルダは警備課長に敬礼をした。
そんな中たまたま、ふっと警備課長の目にアベルが映る。
何故だかアベルは顔を高揚させ目を潤ませていた。ぼーっとし、リルダを見つめ身震いをしている。
「なんて、なんて美しい!あの、取るに足らない神が奇跡的に呼び寄せることが出来た正に奇跡の存在だ。」
「こんな奇蹟の落とし子…リルダを、他の者に見せるのは、惜しい、実に惜しい。勿体ない、リルダが減るのではないか?嫌、、さっき既に減ったな?警備課長がリルダの肩に『ポン』と手を置いた。いまいましい。このまま他の者の目に晒せ続けていいのだろうか?閉じ込める?しかしそれでは今のリルダではなくなってしまう…か。それでも俺はいいのだけれど。今はまだその時ではないな。リルダが俺といることを望んでいてくれるているのだから。否、もしも誰か別の者に取られてしまう……なんて事があろうものなら、うっかりこの世界をまた滅ぼすのだろうな。クククっ。」とブツブツブツブツ言っていた。
何を言っているのかは、わからなかったが警備課長の目には、アベルがとても黒く感じた。
見てはイケナイものを見た気がして、咄嗟に目をそらした。
警備課長はキヌアからキャロラインの言葉の力について聞いたので、猿ぐつわでもしようとしたが、猿ぐつわを持っていなかった。
すると、アベルが気だるそうに何か呪文を呟きキャロラインの口にチャックを取り付けたのであった。
(ほぉーっ!!!指先一つで。流石はエリート集団の魔法課の中でも飛び抜けて莫大な魔力を持つ優秀な魔術師だ。リルダ君に関しては、かなりおかしな行動をとっているが……。魔法に関しては天下一品だな。実に素晴らしい。実に美しい。惚れ惚れするよ。私も叶うことならその錬金術を巧みに組み合わせた素晴らしいチャックを口につけて貰いたいものだな!)
警備課長は心の中で感嘆しながら、罪人キャロラインをヒョイと担ぎ歩いていったのであった。
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