2-4 『毒花』と呼ばれていた悪役令嬢『お義姉様はこれから先も私のドアマットでいてね。』
正に宝石のようにきらめく美しいペリドット色の瞳からは涙が流れ、肩を震わせ泣く。
「まさか、まさかお義姉様が私に急に襲いかかってくるなんて…。怖かった。」
キャロラインはそっとレースのハンカチで自分の涙を拭う。
(フフフッ見た?見たわよね?美しいでしょ?儚いでしょ?こんなに可憐な令嬢が弱々しく泣いているのよ?庇いたくなるわよね。……ウフッ。さぁっいつものようにお義姉様への『断罪タ~イム』の始まりよ!)
キャロラインは自分勝手で醜悪な考えを大暴走させていた。
今までであれば、思惑通りに事が進んでいっていたのだろう。
しかし、今回ばかりは取り巻く環境が悪すぎた。
キャロラインの思惑通りにはいかないであろう。
♢♢♢♢♢♢
押し潰されないようしっかりと前を見つめる紫色の瞳アリシア。
(キャロラインは自分の言葉を信じこませる力を持っている……。言葉の力で操られ歩いていってしまったメイドのルシアはキヌア様のお話では無事だった…。無事を確認出来て本当に良かった。)
(…、ルシアは一瞬操られただけだったから、正気に戻るのも早かったのね…。)
アリシアは自分の手にギュゥッと力を入れた。
(大丈夫。私の隣には自分を信じてくれるキヌア様がいる。そして、初めてお会いした騎士様達…。あの温かい栗色の瞳を見ていると、不思議と私なんかでも頑張れば、何か出来そうな気がしてくる。)
隣には、アリシアを優しく包み込みながらも、依然としてゴミ虫を見るようにキャロラインを見るサファイアブルーの瞳キヌアがいる。
(キャロライン…。奴は夜会に招待されてないことは、確かに事前に確認していた。…にも関わらず、まさか夜会に現れるとは。迂闊だった。
関わりのある貴族に声をかけられたからと言って、メイドをたった1人だけしかつけずにアリシアを自分の傍から離してしまうとは。俺の完全な落ち度だ。しかし、今回は王宮の騎士に助けられたようだ。どうやらあの強靭な騎士達にはキャロラインの言葉の力など効かないようだな。)
♢♢♢♢♢♢
アリシアとキヌアの視線の先には筋肉達かいた。
2人の筋肉達は、何故か黒猫を抱き抱え、あーでもないこーでもないとぶつぶつと言い出したのであった。
(あれ?あら?あらあら。皆どうしたのかしら?ここはお義姉様を取り囲み責め立てなくてはいけないのでなくって?何故?何をしているの!それに、なぁに?あの2人は、急に黒猫なんて抱き抱えて!あー、もうっっじれったいわ!)
苛立ちを隠しきれず可憐な乙女とは程遠い表情のキャロラインは、邪悪な感情を剥き出しにした醜い表情でギラリと2人を睨んだ。
♢♢♢♢♢♢
「そうだ!リルダ君。一層の事、ヒゲでも引っ張ったらいいんじゃないか?それとも耳か?いや尻尾だな。」
「あっ警備課長」
シャーッッバリバリ。警備課長の顔が猫に引っ掛かれる。
「あぁあ。大丈夫ですか?」
「痛たたっ、だ、大丈夫だ、問題ない。」
「これは、初めての試みですからね。それにしてもすごい物を開発しましたね、魔法課は…。」
「そうだな。まだ試験段階だが、この首輪に取り付けられた魔道具で、魔道具を通してリアルタイムで魔法課のスクリーンに映し出され映像が見れる。…更にだ。録画機能もあるときたもんだ。」
「流石エリート揃いの魔法課の魔術師達だよ。大したものだ!…が、しかしリルダ君。我々ではさっぱり使い方がわからんな。」
恐らく脳みそまで筋肉の2人は、録画機能の使い方がわからなかった。
「えっと、魔法課で教えて貰ったのは、確か…すごく簡単な呪文だったような!」
「呪文?それだ、リルダ君!賢いな、君は!流石は警備課の希望の星だよ…で、呪文は?」
すごく初歩的で何なら学園に通う学生でも唱える事ができるような至極簡単な呪文だった筈だ。
「さっぱりわかりません。えっとー真実を映せ?照らせ?ニャンニャカニャンと?なんて。」
…当然何も起こらない。
黒猫がニャーッと鳴くばかり。
途方に暮れかけた、その時だった。
何処からともなく長身で黒マントを羽織った魔術師が、小さなリルダに覆いかぶさりピタリと背後に寄り添っているではないか。
黒髪を高い位置で一つにまとめ、赤い瞳の色香漂う魔術師「あ、アベル。」
後ろを見上げるとアベルがいた。どうやら転移魔法で駆けつけてくれたようだ。
「おぉっ!良いところに来てくれた。すまない、アベル君、我々2人ではさっぱり操作できんかった。」
折角素晴らしい魔道具をつくってくれたのにな、と警備課長が言った。
アベルは静かに首を横に振る。
「いえ、こちらこそ申し訳ございません。可愛いリルダが可愛い口で可愛らしく『ニャンニャカニャンと』と呪文を唱えたというのに、この魔道具は、全く作動しない。こんなものダメですね。改良?もしくは廃棄しなくてはなりませんね。」
「お?ぉおう。い、いやかなり画期的な素晴らしい魔道具だと思うがね。ところで、相変わらずさらっと、惚気るな。」
警備課長は頬をポリポリと掻いた。
猫を両手で持ち上げていたリルダの小さな手に、華奢だが大きな手を重ねる。
指の一つ一つをリルダの小さな指にピタリと絡ませた。
リルダに重ねられた手は温かった。
すぅーっと余分に息を吸いリルダの匂いを確かめたついでに「ハルエイ・ハ・マレ」
アベルが低く甘美な声で呪文を唱えると、黒猫の赤い首輪のチャームから、ぼうっと光が出て映像が映し出された。
(あっ!あちゃ~古代語か、そうか、そりゃそうだよね。ニャンニャカニャンとは、いい線いってたと本気で思ってた自分が本当に恥ずかしいです、、、アベルありがとう。)
映し出された映像は、リルダが暗闇の中の庭園から見ていたそのままのものであった。
しかし、元々の不具合かリルダ達が余計なことをしたからかはわからないが、映し出された映像は無音でだった。
だが、とても鮮明にキャロラインが自分の短剣を取り出し、思いっきり短剣を振り上げ自らを傷つけた後に、アリシアに血のついた短剣を放り投げたシーンが映し出されていた。
勿論、他の者には見せないような歪んだ醜い表情も……。
例え音声がなくとも、映像だけでも決して言い逃れ出来ない動かぬ証拠を突きつけられたのだ。
だが、追い詰められた自己中心的な者というものは決して自分が悪いとは認めないものである。
キャロラインも、そんな自己中心的な考えを持つ者だ。
普通の者からすれば、全く理解できいような事を言うのだ。
「はぁぁあーー!!何っ?これ、これはっっっっっっ!
違うっ違うっっっ!!違うわよぉぉおー!」
急に大きな声で怒鳴りだすのであった。
最後までお読みいただきありがとうごさいます!
少しでも面白いと思われましたら是非ブックマークお願い致します!
執筆の励みになります!
☆→★★★★★感想なども嬉しいです。
とっても嬉しくなり、ヤンデレさも増します。
警備課長いいぞ!と思われた方は…是非
どうぞ宜しくお願いします!




