表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/29

(幕間)王都の返答/増援なし

王都からの返答書を、ラインハルトは執務室で何度も読み返した。


「現在、王都財政は逼迫しており、辺境への追加増援は困難である。各自の裁量にて対処されたし」


その一文を、ラインハルトは、無表情のまま二度読み返した。


「予算がない、か」


同席していた副官が、苦々しげに言った。


「聞くところによると、来月、王都では大規模な夜会が予定されているそうです。かねて発表のあった侯爵こうしゃく家のご令息の、婚約披露の祝いだとかで」


ラインハルトは、何も答えなかった。ただ、返答書を握る手に、力がこもった。


貴族たちの見栄と浪費のために、辺境の民の命が後回しにされる。この構図は、今に始まったことではない。だが、これほどまでに露骨な形で突きつけられたのは、初めてだった。


「団長」


エリーゼが、執務室に入ってきた。手には、団員たちの装備一覧が握られている。


「返答は」


「増援なし、だ」


エリーゼの表情は、動かなかった。だが、その静けさの奥に、確かな覚悟が見えた。


「では、私たちだけで、やるしかありませんね」


「そうだ」


ラインハルトは、地図を広げた。


「全竜、全団員を動員する。裂け目の本隊が動く前に、こちらの守りを固める」


「私も、先頭に立ちます」


「わかっている」


ラインハルトは、エリーゼを見た。かつて、王都から来た貴族の令嬢に過ぎなかった彼女は、今や、この辺境になくてはならない存在になっていた。


窓の外、竜舎の方角で、フィリアスとドランの鳴き声が、揃って響いた。まるで、来るべき戦いを、すでに察知しているかのようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ