二年目の始まり/竜舎の再建
一年が過ぎた。
その一年で、エリーゼは、誰よりも早く竜舎に立ち、誰よりも遅くまで残った。壊れた柵を自ら金槌で打ち直し、底を突きかけた餌の在庫を一から帳簿に付け直した。竜が体調を崩した夜は、藁の上で朝まで付き添うことも一度や二度ではなかった。竜との接し方に迷う若い団員がいれば、竜語の勘を頼りに、根気強く付き合った。
気づけば、竜舎は見違えるほどに変わっていた。壊れていた柵は修復され、餌の備蓄も潤沢になった。何より、若い竜たちの多くが、それぞれの使い手を得るようになっていた。
ドランも、この一年で驚くほど大きくなった。よちよち歩いていた体は、もう小型の馬ほどの大きさに育ち、短い距離ならば、危なげなく飛べるようになっている。まだフィリアスほどの力強さはないが、いずれ、立派な戦竜になるだろうと、団員たちの間でも評判だった。
「今日で、正式な竜騎士としての叙任だ」
団長室に呼ばれたエリーゼに、ラインハルトが一枚の書状を差し出した。辺境州総督の署名が入った、正式な任命書だった。
「フィリアスの主として、お前を辺境竜騎士団の一員と認める」
エリーゼは、その書状を、両手で受け取った。震える指先を、今度は隠さなかった。
「ありがとうございます」
「礼を言うのはこっちだ」
ラインハルトは、窓の外の竜舎を見やった。
「お前が来る前、ここがどれほど荒れていたか、覚えているだろう」
「はい」
「今のこの状態は、お前がいなければあり得なかった」
感情を交えない声音だったが、エリーゼには、そこに嘘がない気がした。竜語の声を持つ者には、そういうことが、なぜかわかる気がしていた。エリーゼは、窓の外に目を向けた。整えられた竜舎で、若い団員たちが、それぞれの竜と共に訓練に励んでいる。
一年前の自分には、想像もできなかった光景だった。
学院で、都合のいい道具のように扱われていた自分。今は、竜と、仲間と、この土地に、確かな居場所を持っている。
エリーゼは、任命書を胸に抱いた。
窓の外を、フィリアスが悠然と旋回していた。傍らでは、ドランが、嬉しそうに飛び跳ねていた。




