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アーク・ライズ 地平線から昇る太陽を夢見て  作者: 仲仁へび
第四幕 輝きを放つ世界

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第79話 人工太陽アーク・ライズ



 光明の施設を制圧した後は、迅速だった。

 フィー達が機材を起動して、この世界の真実を伝える。


 彼等に言葉を届けるのは、この世界を守った英雄であるアーシェだ。

 伝説の存在である彼女以上に、適切な人選など存在しない。


 ……自分達は、人々に希望を見せて、穢れの発生を少なくし、自然相殺できる量まで落とし込もうとしている。


 ……穢れはもともと人の正の感情で浄化できるものだった。


 ……それが、過去に起こった世界中を巻き込む大きな戦争がきっかけで、許容量を超えたのだ。


 そう、全てを伝え終わった後、彼女には大きな仕事が残っていた。


 人工太陽、アーク・ライズをこの世界に打ち上げるのだ。


「キャロさん。クオンさん。私に力を貸してください」

「もちろんよ」

「当たり前です」


 けれど、アーシェ一人に負担を貸すのは重過ぎるから、三人で協力しながら魔法を行使するのだ。


 残りの二人はキャロとコスモス。


 複数人で同じ効果を放つ魔法をおこなうのは、かなり難易度が高くなるが彼女達ならば、問題ないだろう。


 ユミィアの魔力に触れたことのあるキャロやアーシェならそれが可能らしいし、コスモスならユミィアの魔力を復元できるというらしかったから。詳しく知っているからとか言っていたな。


 なんとなくコスモスが生まれた時代を推理できそうな情報だったが、突っ込んでいる暇はない。


 みんなで相談して音魔法を組み込んでいく。






 数週間ほどかけて魔法の図案は、魔法陣を使ったものもあった。


 今も俺たちが生まれた時代もほとんど使われていなかったものだが、大きな魔法を行使するにはそちらのほうがいいらしい。


 キャロたちは、それらをしっかり頭に叩き込んでいた。


 フィー達もそれをバックアップしていたけど、マルガリータ達との付き合いが大変そうだったな。


 飼い主に放置されていたフィーの猫がマルガリータに突っかかってって、何度か騒動が起きたようだ。


 それと同時に各所に世界の真実を伝えていかなくちゃいけないから、かなりてんやわんやの状態だった。


 スズネ達はあいかわらず、普通に傭兵をやっていた。


 俺達が暴れた影響で何人もの警備兵がやられちまったから、その穴埋めだ。


 一般人がそのわりを食うのは確かに可哀想だしな。


 そんなこんなでそれぞれ忙しい毎日を送っていたが、今日は久々に皆で夕食を取れることになった、


 俺の家に、いつものメンバーにプラスして、クオンやコスモス、ミナトがきたし。

 フィーやマルガリータ達も集まった。


 そこまで人数が多いと普通の料理じゃ間に合わないから、夕食のメニューが鍋になったんだよな。


 器に引っ付いたモチに苦戦してると、キャロがやってきた。


「いよいよ明日にやるのよね」

「緊張してるのかキャロ」

「当たり前でしょ。この世界の未来がかかってるんだから」


 キャロは俺の隣で、紅茶をちびちび飲みながら言葉を続ける。


「もう誰かを失いたくないから。誰かの犠牲の上で過ごすなんて、私は絶対に嫌」

「俺もだ。できることなら皆で明日も明後日も、この世界で過ごしたいよな」

「だから、私の肩はすっごく重いのよ。何か気分が晴れることでも言ってくれないと、夜も眠れる気がしないわ」

「うーんじゃあ。……、明日何もかもうまく行ったら」


 俺は何となく気恥ずかしくなってきたので、小声でキャロに伝えた。


 それを聞いたキャロは驚きに目を見張って、けど嬉しそうに笑った。


「珍しく良い事いうじゃない。約束だから、忘れないでよね」

「忘れないよ。俺にとっても大事なことなんだし」







 翌日


 俺たちが集まったのは、この世界で一番空に近い場所だ。


 山の上にある神殿で、ハテノ交信所よりも高い。


 ケーブルにつるされた乗り物に乗って上まで移動したけど、すごい景色だったな。


 あんな乗り物どうやって設置したんだろう。


 神殿についた後は、各々が最後のチェックを済ませて祭壇へ。


 補助要員としてクオンの力も必要なようだから彼女もだ。


 キャロやアーシェ、コスモスとクオンはは儀礼衣を来て揃った。


 いよいよ始まるのかと思ったが……。





 妨害があった。


 一体いつから好機をうかがっていたのか。


 どうやってここまでやってきたのか。


 そいつは、俺達の目の前に現れた。


 部下の人間らしき人達をひきつれて、魔法を放つように命令している。

 自身も、丸い円を描く投てき武器…戦輪で攻撃を加えてきた。


「させん。させんぞ! この世界は我々が導くのだ。旧世界の英雄は、古き世界と共に滅するがよい!!」

「コロンゾ!」


 生き残った光明の頭と構成員だ。


 なんでそこまで俺達を邪魔にしに来るのか理解できない。


 全員が、狂気的な表情を浮かべてこちらに襲って来た。


「オルタ!」

「こっちは大丈夫だ。始めてくれ!」

「っ、わかったわ!」


 音魔法を詠唱しているキャロン達の支援は借りられない。

 補助なしの戦闘はきびしかった。

 だが、俺たちだけでもこれくらいなら何とかなりそうだ。


「でやぁぁぁっ! くそっ」


 キャロ達に近づかせまいとする。

 マルガリータ達やフィー達も援護してくれている。

 これならやりあえる。


 そう思ったのは束の間。


「なんだ、頭がくらくらしてきた」

「これはまずいです! 酸素濃度が下がってきています」

「酸素!? なんでまたそんなことが」


 フィーの言葉に理解が追い付かないでいると、背後から襲いかかってきたやつへの反応が遅れた。


 くそ、頭の回転が鈍くなってきたな。


「空を見てください。ここは密封されているようです」


 フィーの言葉で頭上を見上げれば、半透明のドームが出来上がっていた。


「どこかで空気調節設備が動いてるみたいですね。はめられました」


 空気がなくなったら振動が伝わらないから、音魔法が使えないんだったか。


「音魔法と機械設備を融合させているようです」

「その頭の柔らかさを新しい時代を迎えることに使えよな」


 くそっ。まずいな。


 キャロ達が行っている魔法は繊細だ。


 途中で止めたりしたら何が起こるか分からない。


「こんなところで、倒れてたまるか」


 消えそうになる意識を必死に繋ぎ止めていると、かすかな歌声が響いた。


 声の発生源をみると、そこにはアリスが歌っていた。


 スズネ達が驚いている。


「ライトニング・コール!」


 アリスが放った雷撃の魔法が透明な壁を壊す。


 風が流れ込んできて、一気に呼吸が楽になった。


「ふん、私たちを巻き込んでおいて。こんな所で勝手にバッドエンドにならないでくれる? そんなしょうもない連中を助けるためにさらわれたなんて思ったら、私が情けなくなるじゃない」


 アリスのセリフはきつかったが、病み上がりのせいか、その場に膝をついていた。


 ユキタカが走りよってそれを支えている。


 また、助けられちまったな。

 他の世界の人間に。


 情けないったらねえよほんとに。


 気合を入れるように頬を叩いて立ちあがる。


「負けられねぇのは俺達も同じなんだよ。うおおおおお!」






 アリスの一手から、徐々に押し返して行った俺達は、苦労しつつも敵をほぼせん滅。


 コロンゾを追い詰めた。


「なぜだ。私が導くべき世界が、こんな者たちに横取りされるなんて」


 横取りとか、世界を物みたいに考えてんじゃねーよ。


「私がが支配してこそ幸福になれるというのに。それすら分からないほど愚かか」

「お前みたいなやつに支配されて喜ぶ奴なんて、そっちのほうがいねーよ」


 俺は狼狽するコロンゾに、これまでのみんなの恨みを込めて一撃を叩き込んだ。


 なんとか撃破する事ができたな。


 それと同時にアーシェ達の音魔法が完成。


 この世界の上空に、人工太陽アークライズが浮かぶことになった。


 銀色の太陽が、空に打ちあがっていく。


 きらめく光の尾を引いて、天空にたどり着いたそれは、いつまでも落ちることなくそこにとどまり続けた。


 ……人間はちっぽけな存在だけど、力を合わせれば何だって乗り越えられる。先が暗くて進めないなら、手を繋げばいい。何があるか分からないなら互いに語り合って不安を紛らわせればいい。未来への希望を話し合えば、勇気に繋がるはずだ。そうして歩いていった先に、光はある。


 俺達はこの太陽なき世界にちっぽけな人の手で光をともして、そう証明してみせたのだ。



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