第69話 サテライト
フィーたちと話し合ってから、ここでやる事をまとめた。
といっても、俺達は最後の仕上げを少し手伝うくらいしか、できないけど。
俺たちがやるべき事はシンプルだ。
ハテノ交信所のてっぺん百階まで登ったら、後は作業。
音魔法でサテライトという物体を打ち上げて、この世界全体に特殊な魔法が作用するようにしなければならないらしい。
屋上についたフィー達の組織の技術班が大きな機械をあれこれ見て回ったり、いじくったりしている。
コスモスはそれに色々アドバイスをしていっているようだ。
「あと、どれくらいで出来そうだ?」
「まあ、ざっと小一時間くらいかの? それまではゆっくりしておると良いのじゃ」
「なんだか、のんびりしてるな」
「気を抜いていられるのは今の内じゃぞ。ウチの計算じゃと、そろそろ横やりが入る頃だからの」
「横やり?」
コスモスが指を立てて、「何を分かりきった事を」と告げる。
「光明じゃ。奴らがフィー達が行動するのを、黙ってみてるわけがなかろう」
遠くでスズネやユキタカが猫と遊んでいるのを眺めながら、頷く。
「確かにな。でもフィーたちだってバカじゃない、この場所が敵に割れるのも織り込み済みのはずだ」
「それは向こうとて同じじゃ、だがそれを踏まえても向こうの方が一枚上手じゃぞ? ここに登ってくる時に見張りの意識に細工が施されとるのを感じたからの」
「なっ、なんだって!」
俺の大声で作業中の何人かがこっちを向いたが、コスモスが何でもないと手を振って、作業に戻らせた。
知らせなくていいんだろうか。
「ぬしらは気づかんかったようじゃが、ウチの目はごまかせん。操られてどっかいきおったわ」
「大丈夫なのか? そいつら」
「ちゃんと戻ってきたときにうちの手で解除しておる。フィーの坊主にも話は通しておるぞ」
「おお、すげぇな」
それなら良かった。
せっかくフィー達とうまくやれそうなのに、こんな時に犠牲者を出したくない。
人格は変わっているものの、コスモスがキレものである点は揺るぎないようようだった。
だが、感心している場合ではなかった。
「ほれ、噂をすれば、じゃ」
コスモスが指を指示した方向から、雷撃がとんできた。
「うぉ」
「ライトニング・コール」
「キャロ!」
真っすぐ飛んできたそれを避けて、床に転がると煙が流れ込んできた。
煙幕弾でも使用されたようだ。
しかし、すぐにそれを誰かの魔法で、無効化。
風が押し流していった。
しかし、一瞬の間で相手に準備の時間を与えてしまったようだ。
なだれ込んできた数人が、武器を手にしてこちらに襲い掛かってくる。
「敵襲だ!」「敵が来たぞ」「作業班を守れ!」
すぐに怒号が飛び交うようになった。
俺は、奥に守られている魔法の使い手たちを見つめる。
スズネ達は大丈夫だ。
フィーの仲間と一緒に頑張っている。
なら俺は、あいつを助けないと。
「キャロ!」
「ライトニング・コール」
「くそっ」
けれど、腕を上げたのか高速詠唱で何度も魔法を繰り出されて、なかなか近づけない。
「アイス・ニードル」
氷の粒が飛来するのを避けて回っているうちに、さっきより距離が開いてしまった。
これじゃあ、いつまでたっても近づけない。
連続して使用される音魔法を避けて、ソードガンを構えるが、このままだとこれが役に立つ場面まで持って行けそうにない。
視線の先にはキャロの姿があるが。
それだけに注視してもいられない。
他にも、見知らぬ魔法の使い手達がいる。
彼らが一斉に詠唱を始めた。
「まったく世話が焼けますね」
唇をかむ俺の横に、クオンが立って詠唱を始める。
「クリア・ランス」
瞬間、空から降り注ぐ透明な槍が敵へ殺到した。
仲間で良かった。本当に頼もしい。
「クオン、援護頼む!」
「了解しました。キャロを必ず助けてあげてください」




