第58話 再会に向けて
逃げ出した俺達が向かったのは、以前スズネ達が行方不明になったという場所だった。
「なあ、本当にここで良いのか?」
クオンが言うには、ここから飛び込めという事らしいが、さすがに躊躇う。
今までいろんな場面で決断してきたけど、さすがに生きては戻れないと言われる虚無に自ら飛び込みに行ったことはない。
「大丈夫です。コスモスが拾い上げてくれる手はずになっているので、問題ありません。まったく心配は無用です」
「そう、大丈夫連呼されるとかえって不安になるんだけどな」
「平気です」
「そっか」
「平気です」
「?」
自分に言い聞かせてるような気がして彼女の顔を見てみたら、血の気がちょっと引いていた。
どうやら彼女も平気ではなかったらしい。
「なあ、くお……」
「平気です」
「……そうだな」
しょうがないので見なかった事にしてあげた。
「まあ、何とかなるか。今までも何とかなってきたし」
意味があるか分からないが、とりあえず準備運動。
途切れた大地の切れっ端。
足元の遥か下に虚無が覗く崖っぷちに立つ。
絶望した人間が身投げするにぴったりの場所だな、と思って慌てて頭から振り払う。
縁起でもない。
隠しきれていない震え声で、クオンが手を差し出してきた。
「不安でしょう。手を繋いでいてさしあげます」
「……」
「なんですかその顔は」
「いや……」
意外とかわいいとこあるんだなと思ったけど、言わないほうが良さそうだ。
気がついてなさそうだけど、手が震えている。
いっぱいいっぱいらしい。
それでも虚勢をはるところがクオンらしくて、意味もなく笑いそうになった。
「何をにやけているのですか。とっとといきますよ」
「おう」
うわずった声を放つクオンに頷いて、俺達は同時に深淵へと身を投げ出した。
必死に悲鳴を噛み殺すクオンが途中で気絶してしまったので、離れ離れにならないようにかかえこむ。
落下の速度が上がっていくなか、そこに満たされる深淵が俺たちの体をのみこんだ。




