第38話 プリズマ=ドット
数日後。
俺達は要人がよく泊まるホテルを訪ねていた。
国が経営してるホテルで、一般人は利用できない場所。
そんなところにいけたのは、組織長のコネがあったおかげだ。
あとで目一杯お礼をしなければならない。
受付の人や護衛の人、世話人なんかに紹介状を五、六回みせて、階段をのぼったり、色んな区画をいったり来たりしたのち、やっとアーシェのいる部屋にたどりつくことができた。
(少し前までは帰気軽にに話ができる間柄だったのに、あっという間に手が届かない距離になっちまうなんてな)
「あなた方は、数年前に国の依頼で功績をあげた、名もなき英雄でしたか。そうとわかれば、招待状などなくとも……」
途中で、護衛らしき一人にそんなことを言われたけど何のことやらって感じだ。
その英雄はきっと目立ったり、権力手に入れてふんぞり返るのがきらいdsったんだろう。
きれいな金装飾の施された扉の前にたどり着いた俺たちは、互いを見合わせたのち、向こう側へ声をかけてノックした。
「アーシェ、いるか?」
「いるなら返事して。それとも今は誰にもあいたくないっていうなら素直に帰るわ」
キャロの気遣いには頭が上がらないな。
おれだとそこまで気が回らない。
やあやあって、部屋の中からごそごそという音がして、ごんっと音がした。
目を丸くしていると、額に大きなたんこぶをつけたアーシェが、いきおいよく扉を開けた。
「オルタさん! キャロさん! 会いに来てくださったんですね!」
花が咲いたような笑みだった。
その顔を見て、俺は自分の行動が間違っていなかったんだと分かった。
部屋の中に招かれた俺達は、時間も近いからと一緒に昼ご飯をたべながら近況を報告しあった。
一流のホテルだけあって、味なんて感じなさそうな環境でもほどほどに楽しめるのがプロの手腕過ぎて驚いた。
そう言えば、アーシェが「料理人さんは、愛情しか入ってませんよっていうばかりで」と笑う。
掃除の人や護衛の人とも仲良くなったらしい。
落ち込んでたらどうしようとおもったけど、想像していたよりは元気そうだ。
このまま楽しい話だけしていたいところではあったけど、にげてはいられない。
俺とキャロは例の話をきりだした。
俺たちは、いやなら逃げていい、とそう言ったけど……。
「私は、私にできる事をします。父や母、なくなった人達、オルタさんやキャロさんのために」
アーシェの決意は変わらないようだった。
だから、作戦は彼女を中心として進められていった。
それが、彼女の望みなら俺たちが邪魔できるわけがない。
そして、数か月後。
作戦が決行される。
アーシェを護衛しながらついたのは、プリズマ=ドット。
けれど、その周囲には蝕がわんさと密集していた。
あいかわらずひどい数だ。
遠くから双眼鏡で確認してみたら、そのやばさがよくわかる。
何がとは言わないが、絨毯かと思った。
「蝕が集まりやすい場所だって分かってたけど、やっかいね」
「ここ来るたんびに死にそうになるよな俺達。まあ今回は十分な支援があるから、余裕はありそうだけど」
過去のいろいろなあれこれを思い出して、思わず視線が遠くなる。
いろいろと大変だった。
「そうね。それだけ大事な仕事だってことだものね」
キャロと二人で話していると、組織長がメンバーを呼び集めた。
他の町からの応援も含めてざっと百名。
蝕はその3倍以上はいる。
が、こちらの質も高い。計算上では、敵の全滅すら見込める顔ぶれだ。
あちらも多いがこちらだって、一応勝機を見込んで戦力を整えている。
「諸君、これからの作戦は……」
集合場所で組織長からの話を聞きながらも、護衛対象であるアーシェの様子を眺める。
彼女は緊張しているようだ。
無理もないだろう。
普通に生きていれば、何百もの蝕の群れを見かけるなどそうそうない事なのだから。
一般市民がそんな群れを見たら、ほとんどの場合は数時間もしない内におそらく死んでる。
彼女は今何を思っているのだろうか。
この世界を守るという責務の重さを噛みしめているのか、大きな脅威のひしめく後継にのまれそうになっているのか。
いずれにしてもここまで来てしまったのなら、もう引き返せない。
アーシェは選んだ。
なら、俺達は友人としてアーシェの手伝いをするしかない。




