第35話 奇跡の歌声
一体どうやってこんな短時間で猫を……と聞くと、ただ歌を歌っただけらしい。
アーシェの歌には特別な力があって、昔から歌を歌っているとよく動物が集まったらしい。
それを聞くとキャロが感心したような声になる。
「天然物の力なのね、私のような人工声帯が奏でるものじゃない。才能のなせる技だわ。珍しいのよね。一般人でいるなんて」
掛け値なしの誉め言葉だ。
俺はそこのところはよく知らないけど、とにかくすごいということは分かった。
「よく分かんねぇけど、すげぇんだな」
またあらたに猫を抱えたアーシェが俺たちのことへやってくる。
足早に近づいてきて成果を見せるその様子は、妹分ができたみたいなそんな気になってくる。
「あの、お役に立てたでしょうか」
不安そうにこちらを見つめるアーシェに安心させるように笑いかけた。
「文句なしだぜ。その調子でびしばし捕まえてくれ」
「はい、任せてください」
むしろ嫌だと言われてもこちらから頼みたい。
それだけ困っていたのだから。
気合をいれて歌声を披露するアーシェの周りに続々と集まる動物達。
目当ての猫だけではなく、鳥や昆虫、犬まで来たのは驚いたが。
アーシェの歌は、飾り気のない素朴なものだ。
でも俺としては、けっこう気に入った。
やさしくて、温かみのある歌だと思った。
耳を済ませるキャロも同じようだ。
「報酬、3・3・4で決まりね」
どちらが3でどちらが4かは、いわずもがなだ。
「2・2・6でも良いくらいだ。俺達の方がオマケになりそうだな」
そして、アーシェのおかげで、その日の内に逃げ出した猫はだいたい捕獲できてしまった。




