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アーク・ライズ 地平線から昇る太陽を夢見て  作者: 仲仁へび
第二部 未だ幸福だった日々

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第33話 アーシェ



 一時間後。


 もうあれから一時間経ってしまった。


 だが、状況は……。


 ――進展ならず。


 道端に思わず座りこんでしまう。


「ああっ、どうすりゃいいんだ!」


 猫に翻弄されるばかりの現状に嘆いて頭を掻きむしっていると、声をかけられた。

 相手は女の子だ。


 なんだか緊張しているようだ。

 視線をあちこち移動させながら、体をかたくしている。


「あの、オルタさんとキャロンさんですよね」

「ん、そうだけど」


 知り合い、ではない。

 目の前の少女に見覚えはないはずだった。

 なら、そんな人間が何の用があるのだろう。


 疑問に思いながら受け答えすると、少女がぱっと笑顔になった。


「わぁ、本物だ。サインください」

「へ?」


 声をかけてきた女の子はなにやら浮かれているようだ。


 けれど、こちらは相手の事を知らないというのに。


……勘違い、とかじゃないか?


 たぶん初めて会った人だと思うが、向こうはこっちの事を知っているようだ。

 突然の事に動揺していると、こっちの驚きの意味を女の子が誤解したようだ。


「あ、ごめんなさい私ったら、私の名前はアーシェです。始めまして」

「お、おう、俺はオルタだ。で、あっちはキャロ」


 一応離れた所にいるキャロの事も紹介する。


 キャロが何事かという顔でよってきた。


「はい、よく知っています。ヒューマ=ブリッジでの戦いからファンなんです」


 自己紹介を経た後に、出た言葉に記憶を刺激される。


 それは昔、蝕におそわれた街で住民達を避難させるために戦った場所だ。


 何かを思い出したらしいキャロが、アーシェに尋ねる。


「もしかして、あの時の住民の人?」

「はい、そうです。命をかけて助けてくださったオルタさん達にずっとお礼を言いたかったんです」


 個人については覚えてはいないようだったが、心当たりはあるようだった。


「別に良いのよ。私達は好きでやってるんだから。オルタだって、難しい事なんて考えてなかったんだから」


 けれど、アーシェはそれでは気がすまなかったようだ。


「そんな事言わずに、何かお礼をさせてください。お二人のお役に立てる日が来る事をずっと待ってたんです」

「そう言われても」


 キャロンが困ったような視線を送って来るけど、俺も同じ気持ちだった。


 別に生活に困っているわけでもないし、何か欲しい物があるわけでもないからだ。

 純粋な好意を無下にするのは、心が痛むが。


 俺達の生活はこの世界でも結構いい方で、特別に頭を悩ませる事はないからな。

 世界の行方とかは別として。



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