第29話 任務前
決行当日
拠点にしている場所から一週間。
それだけの距離の位置に任務をこなす大地があった。
「あそこ、人っていないんだよな」
「あたりまえでしょ。職の影響を受けてるんだから」
「なら、気兼ねなく行動できるからいいけど」
組織の仲間達と共にやってきた場所から、遠くにある町を双眼鏡で眺める。
付与魔法というものが開発されたおかげで、双眼鏡を使用する者に身体能力が上がっている。だから、寂れた様子がよく分かった。
……道具に魔法を付与して、人に影響を及ぼすって地味にすごいよな。
どうやってやってるのかさっぱりわからないが。
「ボロボロだな、どこも」
「放棄されて長いらしいわよ」
「それにしたって、寂れすぎと思うけど」
「喰がなかったら動物とか、ならず者とか植物とかがお世話になってることもあるけど、それすら無理だもの」
「そっか」
人がいなくなった町が廃れるのは早い。
今は人類にあだなす蝕が住みついているから、なおさらだろう。
死にゆく町の姿を見つめていると、アース切断の準備が整ったようだ。
マリオンのおっさんが肩を回しながら声をかけていっている。
「作戦開始だてめーら、きばっていけよ。油断すんな」
その言葉を合図に、キャロと同じように人工声帯を持った者達が、歌い始めた。
今回はそれだけではなく、別の者達も力添えをしている。
楽聖と呼ばれる人達だ。
特殊な素材を使用して作った楽器を奏でる人達がいる。
彼らの旋律は、人工声帯をもっているキャロン達のような攻撃魔法を使う事はできないが、多くの人の潜在意識に語りかける力を持っている。
彼らは楽器を奏でながら、人工声帯で魔法を使っている人達の力をブーストしているのだ。
控えている楽聖隊の中にはクオンの姿もある。




