第6章 夕暮れ時
雨がしとしとと柔らかく地面を濡らしている。
今は夜の帳がおり始めた昼とも夜とも言えない微妙な時間である。
生憎厚い雲によって太陽は見えないが、空の暗さからゆっくりと山の向こうに沈もうとしているのは分かる。
その山に囲まれた大都市の中央当たりに大きな怪物のような建物があった。
この国の名だたる騎士や魔道師を生み出してきた学校だ。
そこは、この国でも屈指の魔法技術を使い、世界最高峰のセキュリティを実現している。
しかしつい一週間前、ここで、首なしの死体が見つかった。
現在は、この国の、治安維持部隊が、全力を挙げて事件の究明に当たっている。
それもそうだろう。
世界でも最高峰のセキュリティを破られ、この学校始まって以来、初めての事件が起こったのだから。
今、その学校から、一人の男が出てくる。
その男は、門の近くですれ違った女魔道師、ソフラと挨拶をする。
ソフラは、体型がしっかりと分かるランニングシャツに少しダボッとしたパンツを穿いている。
少し魔法の鍛練を近くでしてきたようだった。
ソフラはその男を見ると笑顔で挨拶をした。
男も笑顔を返す。
そのまま二人はすれ違い男は外へ出た。
微妙な雨に傘をさそうか男は一瞬悩んだが
結局、傘はささずに駅へ向かう事にした。
その男の足下では、ズボンの裾からちらちらと獅子の紋章が垣間見える。
そこに申し訳無さそうに1滴2滴と水滴が付く。
男はそんな事も構わず、駅の方へ真っ直ぐ歩いている。
他の国にある魔具も揃いはじめている。
やはり、一番収集が難しいのは選別の時間〈とき〉だな。
男が思う。
男は一度後ろを振り返り次第に小さくなる巨大な怪物のような建物を眺めた。
そして、今度はソフラに見せた屈託のない笑顔をしていた男とは考えられないほど不気味で不敵な笑みを浮かべた。
だが、なんとしてもやり遂げなければならないのだ。
古よりの預言が語っている。
世界を壊せと……。
そしてその後、救世主の下、1つになると……。
そして男は前を向くと、駅の方へ向かっていった。
そこにはもう笑顔はなかった。




