表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道戦記  作者: taka@
3/20

第2章 頼み事

 サン・イル・トマレイ国の隣の国ゲルタハルマン国に、世界を代表する凶悪犯ばかりを収容しているドグマ・カズラと言う刑務所がある。


建物自体が全体的に黒で統一されていて、西洋式のとんがり屋根が3つほど連なっている。

遠くからみると、何処かの砦と勘違いしそうな建物だ。


今、大雨が降りそそぎ、ただでさえ不気味なこの刑務所が、より一層怪しくその存在感を放っていた。


 ドグマ・カズラ地下5階、凶悪犯の中でも突出して凶悪な者ばかりを収容しているフロアの一番奥の部屋に

このドグマ・カズラでも最悪クラスの凶悪な者が収容されている。


 そこには、優秀な魔導士100人でも破れない程、強力な結界が張られており

常に魔法を無効化している。


 その部屋に身体をまったく動かす事が出来ないように全身を拘束具で縛られ

また呪文を唱えられないように口が開かないマスクを取り付けられた男が居た。


 その男は、虚ろな目をし

もう5時間も全く動かなかった。


 背は高く、身体は細い。

一見するとひ弱そうな印象を受ける。


 突如、その男が目を開いた。


 何か来る。


 そう思った瞬間だった。

自分の部屋を覆っている結界が解かれ始めた。


 そして、静かに黒い重そうな鉄で出来た扉が開き始める。


 始めは、逆光でよく顔を確認出来なかったが

 目が慣れてくるにつれ、そこにはフードを目深にかぶったローブの男が立っている事が分かった。


 全身がローブで覆われているため、拘束された男には、体型や、大きさがいまいち分からず

顔も確認出来なかった。


 「何者だ」


 と拘束された男がテレパシーを放つ。


 ローブを着た男は少しそのまま動かなかったが

やがて


「解放者だ」

と一言だけテレパシーで告げた。


 拘束された男は、ふっと声だけで笑った。


 「解放者が何の用で」


 と拘束された男がテレパシーで聞く。


 すると、ローブの男が

 「お前に頼みたい事があって来た」

 と言う。


 拘束された男が、少し目を細める。

 「俺の事を知っているのか」

 と拘束された男が聞く。


 「知らない訳がなかろう。

あれだけ殺戮の限りを尽くし、なおなんの痕跡も残さず

煙のごとく消える。有名な〈暴虐の魍魎〉ゴズリフ・ユプを」

とローブの男が言う。


 拘束された男はまた表情がない笑みを漏らす。

 「そうだな……。

だが今は、この通りだ。」

 そう言ってローブの男をじっと見つめる。


 ローブの男は一度拘束具を見ると

 「お前には、結界が消えた今、その拘束具はなんの意味もなさないだろう」

とローブの男が言うと

「だな」

とゴズリフが言った。


瞬間。

拘束着から男が消える。


と拘束着の下から

煙のような物が現れる。


そしてそれは、ひと塊となり

ローブの男の後ろに回り

人の形を作り出した。


次の瞬間、先ほど捕らわれていたゴズリフが全裸でそこに立っていた。


「そして……。

ここで貴様を殺す事も出来る。」

とゴズリフが言う。


 ローブの男は、その姿勢のままで

「素晴らしい」

と返す。


 ゴズリフは静かに左手で魔法陣を空中に描き出すと

ボウっと緑色の魔法陣が浮かび上がった。


「頼み事とは何だ。その内容によっては、お前をこの場で殺し

俺は去る。」

 ゴズリフは静かに言った。


 ローブの男は静かに振り返り言った。

「実は、サン・イル・トマレイにある選別の時間〈とき〉を奪い、俺の元へ持って来てほしいのだ」


 ゴズリフは、手に作った魔法陣をさらに強めた。

魔法陣の緑の光がさらに強くなる。


「そんな事であれば、他のやつでも出来るだろう。」

とゴズリフが言う。


ローブの男は顔を今よりも深く沈め、やがて肩が小刻みに動き出した。

「くくくくっ。確かにな」


 ローブの男は笑っていたのだ。


「さっき言った選別の時間〈とき〉は今、サン・イル・トマレイのグレイグ魔騎士防衛学校にある。」

とローブの男が言う。

「だからなんだ。」

とゴズリフが返す。


「その学校に、今、お前を捕らえた魔導士リオンの息子、フレイ・リオンが通っている」

 そうローブの男が言うと、ゴズリフが目を見開いた。


 「なんだと」

 ゴズリフは声を震わせながら言った。

 ゴズリフの手から緑色の魔法陣が消える。


 「あの行方不明になったリオンの息子が……」

 ゴズリフが続けて言うと

 「そうだ」

 とローブの男が言った。


 「そのフレイはどうなってもいい……。

と言うよりも、何をしてもいい。とにかく選別の時間〈とき〉を奪い取ってきてほしいのだ」

ローブの男が言った。


 ゴズリフはしばらく考えた後、ゆっくりと手を降ろし

「面白い」

と言った。


「分かった。手伝おう。しかしやり方は俺に任せてもらう。」

とゴズリフが言う。

「お好きなように」

とローブの男が返す。


「だが気を付けろよ。グレイグ魔騎士防衛学校には、サン・イル・トマレイ最高の騎士や魔導士が揃っている。」

とローブの男が続けた。

「分かっている。俺なりのやり方でやってやるよ」

とゴズリフが言うと、にやりと不敵な笑みを浮かべた。


 それをローブの男は見ると、再び深く頭を垂れ、肩をゆすり始めた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ