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魔道戦記  作者: taka@
19/20

第18章 闘技演武大会 フリスレス対カザドレン2

緑の魔法を取り込んだカザドレンの身体が一度大きく波打つ。

 そして、2回、3回と心臓の鼓動に合わせそれが続く。


 なんだ。

 フリスレスが思う。


 次の瞬間、カザドレンの身体の色が変化を始めた。

綺麗な褐色をした足元から、少しずつ少しずつ魔法陣と同じ色に近づいてくる。

フリスレスには、アーマーから出ている褐色の肌部分が緑色に変化して行くのが見て取れた。

 そして、2本の肌色の線が首筋から目を通り、額の方まで通っていく。

 それが顔の右、左に通った。

 どこかの部族の化粧を思わせるような顔だ。


カザドレンが、一度大きく息を吸い込む。

周りの全ての空気が無くなるのではないかと思う程、猛烈な勢いだ。

そして、一気に吐き出す。

今度は、コォーッと言う奇怪な音と共にカザドレンの周りの空気の密度が高くなるような錯覚を覚える猛烈な勢いで空気が吐き出された。


 そして今、フリスレスの眼前には、完全に緑色になったカザドレンが立っていた。


 アーマーの上からでも分かる隆起した筋肉。

 浮き上がった化粧にも似た身体の模様。

 身体の色。

周りを取り巻く空気。

 

 見るからにやばそうだとフリスレスが直感的に感じる。

 

 ナッツを食べる手を止めていたドンは、再びナッツを噛み始める。

 サンクドが、会場が見える方から話しかけてきた。

「これって、ドン・マスターと同じ技なんじゃないか。」

「ああ」

 ドンが答える。

「まだまだ、鍛錬を積む必要があるがな」

ドンが少し口角を上げながら言う。


緑の魔法には、トリッキーな特徴がある。


通常、魔法は、召喚魔法を除いて、術者から対象に向けて行う事が標準とされている。

しかし、トリッキーな魔法が多い緑の魔法だけは少し違う特徴がある。

いくつか緑魔法独自の特徴があるのだが

その内の一つが術者自身に使用する事が出来ると言う事だ。

それは、基本要素よりも、闇魔法のように自分自身を闇に紛らせたり、光魔法のように光速で移動する時に使用する古代要素の魔法に近い存在とも言える。


そして、緑魔法を自身に使用した時の効果と言うものが自分の身体を頑強にするもので、常人の域を軽く超える身体能力を発揮するものなのだ。

ドン・バッチもこの能力を高いフェーズで使用する事が出来、巨大蜘蛛ドラミキュラを素手で打ち倒したと言われる所以もそこにある。


マジか?!

ヤバい。

フリスレスが思った。


緑魔法を取り込んだカザドレンは一度、二度と大きく呼吸する。


来る。

フリスレスが直感的に感じた。


三度目の空気を吸い込んだと同時に、カザドレンが地面を蹴り、飛び込んできた。


ズゥーンと重い地面を震わすような音と共に、一瞬でフリスレスとの距離を詰める。


カザドレンが居た地面からは煙が上がる。


フリスレスが咄嗟に剣を構えたが、すかさず防御の態勢を取る。


けたたましい金属音と共にフリスレスの防御体制の剣とカザドレンの横に凪ぎ払われた剣が交錯した。


火花が散る。

そのままカザドレンが剣を振り切った。

吹き飛ぶフリスレスの身体。


見ているフレイ達は、知らず知らず驚きの声を上げていた。


フリスレスは、空中で身体を安定させると、闘技場に足を着けて、踏ん張る。

砂煙を上げながら、少しずつスピードが落ち、身体が完全に止まった。


フリスレスが顔を上げて、カザドレンの方を見る。


いない。


と、嫌な予感がし、フリスレスが上空を見上げた。


居た。


そこには高々と剣を掲げたカザドレンが、正にフリスレスへ剣を振り下ろさんとしていたところだった。


おわー!

フリスレスが横に転がり、カザドレンの太刀を交わす。

もの凄い轟音と共に、カザドレンの剣が空を切った。


フリスレスは距離を取るためそのままごろごろと転がる。

芋虫が横に転がっているようだ。


観客からは乾いた笑いが起こった。


今は距離をとりてーんだよ!

笑うなよ!


フリスレスはそう思いながら、転がっている。


「あれも、習ったっけ?」

コレブンが聞く。

フレイは

「うーん。いや、ないな。」

と苦笑しながら応えた。


ある程度転がったところで起きあがる。

勢いよく起き上がったフリスレスがぐらりとバランスを崩した。


駄目だ駄目だ。

回転し過ぎて目が回っちまった。


フリスレスがふーっと大きく深呼吸をする。

たがカザドレンは待ってはくれない。

フリスレスが顔を上げた瞬間目の前に緑色の身体があった。


やべー。

とフリスレスが思ったと同時くらいにカザドレンが剣を降り下ろした。

今度はフリスレスが、ほぼ反射的に顔の上で剣を斜めに構え防御態勢を取った。

カザドレンの剣が、フリスレスの剣に当たり、耳障りな高い金属音と共に、フリスレスの剣を滑り落ちた。


「うまい!」

カーロスとサンクドがほぼ同時に声を出した。


フリスレスが上手く力を逃がしたのだ。


「あいつの格闘センスはおそろしいな」

とカーロスが評価した。


そのままフリスレスは斜めにしていた剣を、頭の上で回転させるように降りカザドレンの首を切った。


アーマーに当たる剣の金属音が会場に響きわたる中、

フリスレスは、一度距離を取った。


首を確実に切った。

数字はどのくらい減る?


フリスレスが咄嗟に上空の掲示板を見る。

カザドレンの下の数字が剣で切られたように二つに分かれた。

そして数字が現れる。


63


マジ??

2しか減ってない。


フリスレスが驚愕し過ぎてあんぐり口を開けてしまった。


そこへカザドレンが距離を詰め、もう一度剣を上から下へ叩き付けるようにして降り下ろす。


また大きな金属音と、火花が散ると共に、フリスレスの身体にすさまじい衝撃が走る。


カザドレンがもう一度剣を振り上げる。

たまらずフリスレスが距離を取った。


不意に上空を見上げる。


掲示板では、自分の数字が樹に絡まれ5減った。


それを見たフリスレスはふたたび口をあんぐり開けそうになった。


嘘だろ!

しっかり防御態勢で受け止めたのに、5も減るなんて。

衝撃が凄まじ過ぎるのか。


カザドレンはゆっくりフリスレスの方へ歩く。

フリスレスは、態勢を低くしたまま、カザドレンが歩いた分だけ距離を取った。


どうする。

フリスレスが自分に問いかけるように思った。


首を切った攻撃で2しか減らないってことは、普通の攻撃は効かない可能性がある。


またジリッとカザドレンが距離を詰める。

フリスレスが同じ分だけ離れる。


そんな行為が何度か続く。


その時、フリスレスは、今までの授業を思い返していた。


魔法の講義や、鍛錬、剣技の鍛錬、ソーラと呼ばれる型の講義、実践、何か使えるものはないかフリスレスの脳がフルスピードで、回転し始めたその時、剣技授業の時カーロスから言われた事を思い出した。


魔法は様々な使い方がある。

通常魔法を使用する時は対象物に対して使うが、中には自分自身に使うものや、対象物を指定しないで使う事も出来る。

召喚魔法がそうだ。


しかし、それら全てに言える事は決して使用している魔法のフェーズ以上の事は出来ないと言う事だ。

どんなに強く見えようとも、どんなに弱く見えようとも、使用している魔法のフェーズが高ければ、強いし、低ければ弱い。


見た目に惑わされるな。


その言葉がフリスレスの心に残り、エコーのように繰り返される。


それが重要な事だと気づいたのは、もう少し後の激しい攻防が繰り返されている時だった。


カザドレンは、フリスレスの距離の取り方に苛つき、強引に距離を詰め始めた。

フリスレスは、剣で必死に防御態勢を取りながら、後に下がる。


カザドレンが攻撃を始める。

フリスレスは防御に徹しながら相手との距離を置こうとする。

それが良くも悪くも、力を上手く逃がす事が出来、カザドレンの攻撃を交わす事が出来ていた。


それでも衝撃により、5の防御力は減り続けていた。

そんな、一方的にも思える攻撃と防御が繰り返されているとき、フリスレスはふと、何故カザドレンの攻撃を受け続ける事が出来ているのか、そして、何故簡単に力を逃がす事が出来、大したダメージを負わないのか。不思議に思い始めた。


カザドレンが横に大剣を薙ぐ。

それをフリスレスがしゃがんで交わした。


さっきよりカザドレンの動きが見える。

フリスレスが考える。

スピードが遅くなってきたのか?

いや、スピードはそのままだ。

ならば何故……。


そこでカーロスが以前言っていた事を思い出した。


--使用している魔法以上の事は出来ないという事だ--


そして、実践講義中、皆が召喚魔法に苦労しているなかフェーズ5の炎龍を出している自分を思い出した。


その時フリスレスの中でもやがかかっていたものが急に鮮明になりだした。

まるでどんよりとした暗い天気から雲が無くなり太陽が地面を照らし出すようにフリスレスが魔法の特性を理解し始めた。


そうか。

そういう事だったのか。


俺は火の魔法が強い。

多分火の属性が得意なのだろう。

だから、緑の魔法に対する耐性も身体的に強いのだ。


初めは、緑の色の身体を見た瞬間、心理的にビビってしまったが、よく考えれば攻撃が見える。


なーんだ。

そんな事か。


そう考えたフリスレスは、カザドレンから一気に距離を取った。

そして、赤い魔法陣を出す。


カザドレンが不思議に思い眉をひそめる。


ドン・バッチがモニターを見ながら、ソファーを座り直した。

何かするつもりか。

ドンが思う。


カザドレンが、構わず攻撃を加えようと、フリスレスとの距離を一気に詰める。

カザドレンが踏み込んだ場所から、また地響きのような音が響き渡る。


カザドレンが剣を振りかぶった。

フリスレスは咄嗟に斜め左前に踏み込む。

ちょうどカザドレンの脇へ潜り込んだ形だ。

そこでフリスレスはカザドレンの脇に剣を突き刺す。

鈍い金属音がし、剣が弾かれた。

そしてフリスレスはまた距離を取った。


小賢しいやつめ。

カザドレンが怒りを覚える。


再びカザドレンが踏み込む。

今度は、フリスレスは少し後ずさり距離を取った。

カザドレンは構わず、今度は大幅に距離を詰めてきた。


その瞬間だった。

フリスレスが呪詛詠唱が終わり、手を前に出す。

フリスレスの前にある赤い魔法陣が光り出し、中から巨大な何かが噴き出すように現れた。


それは一度上空へ突き上がると

カザドレン目掛けて急降下する。


カザドレンは、フリスレスに攻撃しようとして必死になっているため、気付くのが一瞬遅れた。


そのままその巨大な何かは、地面ごと壊すような勢いで、カザドレンにぶち当たる。


そのまま何かは、地面に当たる。

もう一度、その召喚された何かは、上空へつき上がる。

ある程度上空へ舞い上がると、またカザドレン目掛けて急降下する。


カザドレンは先程の一撃を受け、地面にめり込むように伏した。

またカザドレンごとその巨大な何かが地面を打つ。


凄まじい轟音と共に、カザドレンは、地面に沈み込んだ。


「腕だ」

カーロスが自分でも気付かない内に言葉を発していた。


「なんと」

サンクドが素直に驚きの言葉を口にした。


フリスレスが出した赤い魔法陣からは、なんと巨大な左腕が出ていたのだ。


その腕が、拳を握り2度、3度と鉄槌の如くカザドレンに振り下ろされていた。


5度程振り下ろされた所で、腕は動きを止めた。


「あ、あれは」

コレブンが目を見開きながら驚きに声を震わせ言う。

「ああ……。炎帝ソラスの腕だ」

フレイも驚きを隠せず声を震わせながら言った。


闘技場に現れていたのは、炎帝ソラスの腕だったのだ。

現在のフリスレスの能力では、勿論、炎帝ソラスを召喚することは出来ない。

しかし、フリスレスが火の属性魔法が得意な事と、その類い稀なる格闘センスによって、ウィズエレメンタルを凝縮し、一瞬のみ、全てのそして最大限の力を放出する事で、炎帝ソラスの腕だけだが、召喚する事に成功したのだ。


これは、思い付いた事も凄いが、実際に成功する事もとてつもなく凄い事だった。


そして、闘技場ではソラスの腕と共に、魔法陣が消える。

掲示板では、カザドレンの数字が炎に包まれ0になった。


フリスレスは、構えをとき、カザドレンを見た。

カザドレンの方には医療スタッフが駆けつけている。

気絶しているようだ。


そして、パラパラと会場から拍手が聞こえてくると、やがて大きな歓声となって会場を包み込んだ。


そんな歓声の中、ソフラより、フリスレスの勝利が告げられ、片手を挙げながら、拳を握り、会場を後にした。


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