第17章 闘技演武大会 フリスレス対カザドレン
晴天の下、グレイグ魔騎士防衛学校では、Ⅰブロックの最終戦 魔騎士学科初年度フリスレス対魔騎士学科最終年度カザドレンの試合が行われようとしていた。
ソフラが例によって闘技場の真ん中で選手の入場を見守る。
初めに入場してきたのは、カザドレンだった。
カザドレンは、シュウトレスよりも大きな体躯で、髪は長く後ろで束ねている。前髪は長く一本だけ垂らしている。それが歩く度にゆらゆら揺れていた。
顔は、ごつごつとしており、角ばったあごのラインが、体格の良さを顔でも表現しているように見える。
目はつぶらで、黒目が大きい、
一目で、力でなぎ倒すタイプだと分かる。
カザドレンは所定の位置に着くと、対戦者の登場を仁王立ちで待った。
剣は大きく分厚い、相手を正に叩き切ると言う事が当てはまるような剣だった。
そのような大剣を利き手の右手に持っている。
続いて、フリスレスの登場となった。
歓声が沸き起こる中、入場口から颯爽と登場する。
そのまま闘技場へ跳ぶように入場し、剣を右手で掲げ、観客にアピールした。
一層、歓声が大きくなる。
そして2回3回と剣を突き上げ、観客を煽る。
観客は、それに合わせて、歓声を上げ下げする。
4回目で剣を今までよりもさらに突き上げたため、後ろへ転びそうになった。
会場から軽い笑い声が上がる。
「フリスレスのやつ、張り切ってるな」
コレブンが言う。
「ああ、わくわくしているのがモニター越しからでも分かるぜ」
フレイが言った。
カリンは黙っている。
「面白い登場の仕方だな」
カーロスが言う。
「だが、強い」
サンクドが言う。
カーロスはちらっとサンクドを見るとにっと口角を上げ
「ああ。強いぜ」
と合わせた。
やっちまったやっちまった。
カッコつけようと思ってやり過ぎたな。
さて、集中集中。
そうフリスレスが思い、カザドレンの方を向く。
こう見ると本当にデカいな。
俺も背が高い方だが、横にも縦にも一回り大きい。
魔法で攻めるというよりは、力で行くタイプか。
フリスレスはそう思って、カザドレンと対峙した。
「構えて!!」
ソフラが言う。
二人は、それぞれ得意な構えをとった。
フリスレスは左足を前に、剣の切先を相手に向け、顔辺りまで持ってくる。
ガングン・ソーラだ。
対するカザドレンは、大剣を顔辺りまで持ちあげ縦に両手で構える。
剣技に優れたメガトル・ソーラだ。
やっぱり、メガトル・ソーラで来たか。
魔法での戦いは、始めから頭にはないようだな。
フリスレスが思う。
そして、試合開始のホーンが鳴る。
フリスレスはぐっと剣を持つ手に力を入れた。
カザドレンが一瞬、身体を沈み込ませた。
来る。
とフリスレスが思った瞬間、カザドレンが一気に踏み込んできた。大剣を、思いっきり横へ薙ぐ。
それをフリスレスは、体勢を低くする事で交わす。
そしてそのまま剣を伸ばす。
剣はカザドレンの横腹辺りをかすり、そのまま空を切った。
カザドレンがわざと体勢をずらし直撃を避けたのだ。
カザドレンが今度は大剣を頭の上に上げ、思いっきり振り下ろす。
フリスレスは、伸ばした剣をそのまま頭上に掲げ防御の体勢をとった。
けたたましい金属音と共に、フリスレスの身体にカザドレンの全体重がのし掛かる。
フリスレスの身体が地面にめり込みそうになる程、沈み込んだ。
そして、体勢を崩す。
なんなんだ。あの一撃は。
フリスレスが思った。
カザドレンがもう一度高く剣を構える。
また来る。
今度は体勢が崩れているので防御体勢が取れない。
フリスレスが体勢を崩したまま、思いっきり身体をひねった。
剣は、フリスレスの脇を通り、地面を強く叩いた。
地面から低い金属音と共に火花が散る。
フリスレスは仰向けの体勢のまま、背中が地面に付く前に、剣を、カザドレンの腕目掛けて、突き上げる。
フリスレスの剣がアーマーに突き刺さるように当たった。
そのままフリスレスは地面に背中を付くと、
一瞬で手許から風の魔法を出し、自分の身体を後ろへ吹き飛ばすと同時にカザドレンに風魔法のフェーズ1、鎌鼬を出す。竜巻がカザドレンを包み込むとアーマーの腕や足に軽い剣で斬られたような傷が付いた。
そして、ある程度距離を取ると今度は、斜め下方向へ風魔法を放ち、カザドレンの方へ向かって斜め上に跳ぶ。
カザドレンよりも頭1つ分高く跳ぶと剣を思いっきり振り下ろした。
カザドレンが頭上に剣をかざし防御の姿勢をとった。
ガキン
大きな金属音を立て、剣と大剣が火花を散らす。
ぐぐっと、そのままカザドレンの身体が押し込まれる。
「ほう。すばらしい。流れるような攻撃だな」
サンクドが、人に聞こえるか聞こえないかくらいの声で言う。
「うおー!すげーぜ!あのデカブツ、カザドレンを押し込んでる」
コレブンが言う。
フレイも興奮を隠せず両手の拳に力を入れながらモニターに魅入っている。
カザドレンの膝が地面に付いた。
ぬう。
カザドレンが険しい表情をする。
唐突にカザドレンが剣を持つ手に今以上の力を入れ凪ぎ払おうとした。
フリスレスは、その力の伝わり形を剣越しに感じ、凪ぎ払われる直前に自分から跳んで距離を取った。
フリスレスはカザドレンと少し距離を置いたところに降り立とうとしたが、カザドレンの凪ぎ払おうとする力に少し巻き込まれたため、着地した瞬間に少しバランスを崩してしまった。
「おわっと」
フリスレスがよろめきながら、しっかり地面に足を着けガングン・ソーラを構え直す。
やっぱ、すげー力だな。あれだけでバランスを崩すなんて。
カザドレンはゆっくりと膝を地面から上げる。
カザドレンの掲示板の数字が65になっている。
カザドレンの左腕は、フリスレスに突かれたため動かない。
「ふん」
モニターを見ながらシュウトレスが鼻から息を漏らす。
強いな。
カザドレンが思った。
このままではシュウトレスと戦う前に、こいつに負けてしまうかも知れぬ。
やむを得ない。
この技は、シュウトレスの為に取って置いたが、今出すしかないな。
そうカザドレンが思い、呪詛を唱え始めた。
カザドレンの前に緑の魔法陣が現れる。
なに。
魔法??
力で攻めるタイプじゃないのか?
フリスレスが思う。
とその時、何を思ったか、カザドレンが緑の魔法陣を自分へ向けて放った。
緑の魔法陣が、カザドレンの身体に吸い込まれる。
何だ。
緑の魔法陣を取り込みやがった。
一体何が始まろうとしているんだ。
フレイ達は呆気に取られている。
カーロスは、ほうと唸っている。
ドンは、口にナッツを入れる手を止めた。
それをするか。
ドンが心の中で呟く。




