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魔道戦記  作者: taka@
13/20

第12章 闘技演武大会 シュウトレス対ガルシアス3

ゴーレムか。

サンクドが思う。

今、地面から土の魔法の最上位とも言えるゴーレムがセンセーショナルに召喚されたところを見て、観客達は沸きに沸いている。


サンクドにとっても例外ではなく、まさか1学生がこの短期間でゴーレムを呼び出せるとは思いもしなかった。

しかも、魔騎士学科だろ。ガルシアスは。

そう思いながらサンクドは、自分のマスクの銀色の牙を触り始める。

なるほど。確かに、今年の初学年は面白そうだ。

サンクドがマスクを触る時は、動揺している時かワクワクしている時だ。

サンクドはマスクに着いている牙を優しく撫で続けると、その牙が輝きを増すような錯覚に陥る。

そしてふと我に帰り

年甲斐にもなく、学生にワクワクするなんて。

と少し恥じるように思う。


しかし……。


ゴーレム召喚は、もう少し力を付けてからの方がいいな。

と、サンクドはゴーレムの背中辺りを見ながら付け足すように思った。


シュウトレスが一回戦から構えるなんて。

クトレヒトがアーマーを身に付けながら思う。


ガルシアスか。

強い相手なんだな。

と、アーマーの腰元に剣を装着したところで思った。


フレイ達は立ち上がってモニターを見ている。

と言うよりは魅入っている。

心の奥底から次の展開に何かしらの期待をしているのがフレイやフレスレスは自身で感じていた。

相変わらず、カリンとコレブンは違う意味で魅入っている。


試合では、ガングン・ソーラを構えたシュウトレスがゴーレムに向かって行くところだった。


シュウトレスが剣を振り上げる。

ゴーレムが構える。


シュウトレスが、剣を振り下ろす。

ゴーレムが拳を突き出す。


耳をつんざくような高い金属音がした後、ごとりとゴーレムの拳の半分が地面に落ちた。


シュウトレスが、拳を縦から切ったのだ。


シュウトレスは硬い衝撃が残る腕をフル回転させ今度は腰を切った。


再び高い金属音がする。

シュウトレスにすさまじい衝撃が走る。

シュウトレスは一層腕に力を入れる。


だが、ゴーレムの身体に切り込めない。

傷は付いているが、身体の中に刀身が入らない。


か・硬い。

そして、シュウトレスの剣が弾かれる。


次に、ゴーレムが半分になった拳をシュウトレスめがけ振る。

シュウトレスはそれを間一髪交わすと、後ろへ跳び距離を取った。


流石に硬いな。

シュウトレスはガングン・ソーラを構え直し思った。


そして、ゴーレムの半分になった拳がゆっくりと修復していく。


これがゴーレムの1番大きな特徴だった。


ゴーレムが、強い理由。

ゴーレムが、最上位の土魔法で、通常フェーズ8以上の召喚魔法の理由は正にここにあった


何度切られても、壊されてもゴーレムは自身で修復し、更に強固なものになる。


しかも切られれば強く、動きの速さに付いていけなければ速く、召喚してから常に強くなり続けるのだ。


それゆえ、魔道士によっては最強の武器となり得る召喚魔法だった。


しかし、余りに強い魔法のため、魔道士の疲労も激しく、召喚に時間がかかり、また、召喚後も、ゴーレムが傷を修復する度に魔道士に強烈な負荷がかかってしまう。

そのため、この召喚魔法を使う魔道士は少なかった。


その証拠に、今闘技場にいるゴーレムの背中辺りは常に岩から砂に変化し、さらさらと地面に落ちていった。

そして、ガルシアスは多大な魔力を使い、岩で背中辺りを常に修復していたのだった。

岩になったそばから砂に変わる背中辺りをサンクドは見て、中途半端に召喚してしまったゴーレムを勿体無く憂いた。


いい魔法だったのに。

サンクドが自身のマスクの牙を触りながら思った。

もう少し時間をかけて召喚すべきだったな。

サンクドは続けてそう思う。

そして、思うと同時にマスクの牙から指を離していた。


ガルシアスは、息も絶え絶えに、ゴーレムがそれほど長くはもたない事を悟った。


シュウトレスが、地面を蹴って切りかかる。

ゴーレムは顔を庇うように先程切られた腕を前に出した。

三度高い金属音がコロシアム中に響き渡る。


先程切られた拳と同じ場所を剣で切られる。

しかし、今度は傷1つ付いていなかった。


「す・すげー!」

フレイは、思わずそう声をあげていた。

シュウトレスは一瞬怯んだが、次は逆の腕を切り付けた。

今度は、少し低い金属音がすると、心なしか剣もすんなりとゴーレムの腕に入っていった。


また、ゴーレムの腕が落ちる。

とそれが地面に落ちるか落ちないかくらいのところで

シュウトレスの2撃目が先程復活した拳の方の腕の付け根を貫いた。

そして一気に剣を振り上げる。


半分以上剣で切られた腕は、人間で言えば、皮1枚で胴体と繋がっていた。

当然腕の機能を果たさない。

しかし、シュウトレスの連続攻撃は止まらない。

今度は、顔めがけて剣を突き出す。


ゴーレムの顔の真ん中辺りに深く剣が突き刺さった。

砂の塊に剣を差し込んだような音と感触がする。


シュウトレスは一度剣を抜き、今度は右足を切る。

剣は難なくゴーレムの足を二つに別った。

バランスを崩すゴーレム。

治りかけの腕を衝立にしようとするが上手くいかない。

そのまま、ゴーレムは地面に伏した。

何とか短い腕と足で立ち上がろうとするが上手くいかない。


そのうちに身体自身が砂のようにさらさらと零れ落ちていく。


零れ落ちていく身体から新しい身体が作られようとしているが、少しずつ零れ落ちる身体の砂塵が多くなり、回復する身体の岩を超え始めたように見える。


まるで、小さな噴水のように、ゴーレムの身体の中心部分から砂や岩が溢れては、地面に消えていく。


「ああ!ゴーレムちゃんがー!」

カリンが言う。

ゴーレムちゃん??

フレイがカリンの方を向く。


カリンは如何にも泣き出しそうな顔でそう呟いていた。

コレブンは、ゴーレムの変容ぶりにモニターを見ながら微動だにしない。

フリスレスは、何も言わずじっとモニターを見つめていた。


シュウトレスがゴーレムを背にゆっくりと歩く。

ゴーレムは、何とか原型を保ち、シュウトレスを捕まえようと躍起になって今は無い拳を突き出している。


そして、シュウトレスはガルシアスの前にたどり着いた。


ガルシアスは動かない。


シュウトレスの後ろではゴーレムが、志半ばにして無い拳を突き出したまま溶けて無くなり出した。

まるで熱い鉄板の上で氷が急速に溶かされたように跡形も無く消え去っていく。


カリンはそれを泣き出しそうな顔でモニター越しに見ている。

「ああ!消えるー!」


フレイはカリンやコレブンの嘆きをそのままにゴーレムの最後とこの戦いの結末を見届けようとした。


シュウトレスが剣を振り上げる。そしてそこでピタリと剣を止める。

「俺が間違っていた。お前は臆病者なんかではなかった。最善の方法で俺に挑んでいたのだな。」

ガルシアスは動かない。両手は、無造作に床に付いている。

「両手を使えなくなったお前に対して、まさか剣を構えるなんて思いもしなかった。」

シュウトレスもまだ剣を動かさない。

剣は日光の光りを反射して、キラリと煌めく。

「認めよう。お前は強い。」

シュウトレスはそう言い、構えを解きゆっくりと剣を下ろした。

そしてくるっと方向転換をし、シュウトレスは出口の方へ向かった。


ゴーレムは崩れさり今は跡形もない。

その上を、シュウトレスが通る。

「俺がこの大会で戦った中で、魔力を使い果たし気絶するまで戦った奴は、お前が初めてだ。」

そう言ってシュウトレスは一度ガルシアスの方を向くと、剣を縦に自分の顔まで持ってきた。

騎士がやる敬意の表し方だ。

そして、それは試合が終わった事を表す行為でもあった。

アーマーの防御力は減っていない。


観客は何が起こったかも判らずあっけに取られている。

闘技場の脇に構えていた医療班が、顔をお互い見合せながらガルシアスに近付いた。


「こ・これは……。」

ガルシアスの様子を見た医療班の1人が言う。

そして別の1人が

「気絶している。」

と続きを言うように言った。

慌てて医療班は担架を呼ぶ。


事を理解し始めた観客から拍手がパラパラ起こり始めた。


やがて、大きな拍手と歓声が会場を包み込む。


ガルシアスは、座ったまま気絶していた。

これは、シュウトレスが言ったように魔力を使い果たしたからに他ならない。


通常の戦場では魔力を使い果たす事は死を意味する。


しかし、この大会では、アーマーが制限をかけているおかげで、魔力が無くなり死ぬ前に、ガルシアスを気絶させたのだった。


ガルシアスは、正に気絶覚悟、魔力ゼロ覚悟でゴーレムを召喚していたのだった。


その戦い方は無謀とも言えるが、勇気とも言える。


とにもかくにも、シュウトレスには、ガルシアスの戦い方が勇敢で知恵があるものに映った。

だから、不断は決してしない、騎士の敬意の払い方で試合を終えたのだ。


ゆっくりとシュウトレスは出口に向かう。

反対側の出口には担架で運ばれるガルシアスがいる。


観客の拍手は、二人の戦いの余韻を残すように

二人が居なくなった後も暫く続いた。


シュウトレスはアーマー防御力60、ガルシアスはアーマー防御力21。


この不思議な戦いの残り時間は2分だった。













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