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魔道戦記  作者: taka@
12/20

第11章 闘技演武大会 シュウトレス対ガルシアス2

雲がぽつぽつと数えられる程度しかない青く晴れ渡る空の下

グレイグ魔騎士防衛学校のコロセアムは、異様な熱気に包まれていた。


闘技場では、1人の大男と、3つの岩の塊〈小さなおっさんに見える〉が激しくぶつかり合っている。

観客は、その小さなおっさんに見える岩の塊と大男の今まで見た事がない闘いに歓喜していた。


飛び交う歓声の中、ガルシアスは静かに闘技場に座し、魔法を唱えていた。


ガルシアスの前に、茶色の魔法陣がうっすらと浮かび上がっている。


ガウレムと名付けられた3つの岩の塊は、素晴らしい連携で、ある時は噛みつき、ある時は蹴り、ある時は殴りかかった。


相手をしているシュウトレスは、直撃はしないまでも、攻撃を受け切れず、幾度かの攻撃によって少しずつアーマーの防御力が削られていった。


ガルシアスが、ふと上を見上げる。

シュウトレスの防御力を示す数値が、土煙に包まれて少しずつ減っていく。

しかし、その減る数値は大きくなく、噛みつきが決まった時の5が最高だった。

くそっ!もう少し魔法を練れれば、でかいダメージを与えられていたのに!

ガルシアスが思う。


また、ガウレムの蹴りが腹に決まり、防御力が3減った。


なんなんだ。この小賢しいやつらは。

シュウトレスが思う。

スピードはそれほど速くはない。

だが、それを連携でカバーしている。

こいつらはテレパシーか何かで繋がっているのか??


ガウレムの1体がシュウトレスに殴りかかったとシュウトレスが思い、剣をそのガウレムに振ると、別のガウレムがそいつを蹴り勢いを付けてシュウトレスに殴りかかる。

当然シュウトレスの剣は空を切り、ガウレムの拳がシュウトレスに当たる。


マイナス2だ。


「すごーい!!」

と感嘆しているのはカリンだ。

カリンが来ているアーマーは、動きを最大限に活かすように設計された薄手の物で、全身タイツのようにピッタリ体にフィットしている。よくみると網目状に特殊素材の樹脂で出来た軽いワイヤーが張り巡らされ、その上を生地が覆っているのが分かる。

スピードは最大限に活かせるが、防御力が低いのが難点だった。

最近、女魔騎士が増えてきた中で人気があるアーマーである。

そしてカリンの腰には細い普通の剣の半分くらいしかない剣が収められている。


スピードと突きに威力を発揮するレスピアスと言う剣だ。

この武器も女子には人気がある。


カリンが珍しく、感情を表に出しはしゃいでいる。

コレブンもそれを見てカリンと一緒にはしゃいでいる。


フレイは相変わらずモニターを見ていた。

フリスレスは、カリン達を一度見たあと、試合に目を戻しフレイに

「これどう思う??」

と聞いてきた。

フレイはフリスレスの方を向くと、ちらっとカリン達を見た。

「カリンの、かわいいって発言には驚いたな」

とフレイが言う。

「ちげーよ!!試合だよ!」

とフリスレスが笑いながら突っ込んだ。

「ああ。そっちか」

「たく。カリンがいるとなんかフレイの調子が狂うよな」

「そっそうか?」

今思えば確かに。

フレイは、いまいち性格が把握出来ないカリンがいると本調子になれない。

フレイは、歪んだように苦笑している顔を改め、モニターをじっくり見た。

「そうだなあ。シュウトレスは明らかに本気じゃねーし、ガルシアスも、あの魔法陣の出し方じゃあ、まだ何か隠し持ってそうな気がするんだよなあ」

とフレイが言う。

「だよなあ。なんかあの土魔法、違和感がするんだよなあ」

フリスレスが同意する。


確かに、ガルシアスが出した魔法陣は薄い。

普通であれば、どんなに小さな魔法でも、魔法陣はくっきり映る。

その薄さや、違和感を感じていた者は、フレイ達以外にも、クトレヒトやカザフ、ジュード、ダロなど複数人がいた。


 だが、シュウトレスは違っていた。

ガウレム達の頑張りにより、上手くガルシアスから注意をそらされ、薄い魔法陣に気付いていなかったのだ。


 初めての攻撃に少し焦ったかな。

 クトレヒトがモニターを見ながら思う。

 少し吊り目で鼻がすっと高く、顔のパーツが整いすぎているとまでは行かないが

部類としては端正な顔立ちの部類にクトレヒトは入るだろう。髪は耳にかかるくらいで、センター分けだが、くせが強いのか全体的に少しくねっとウエーブしている。それが彼の特徴だった。

 髪の色はブルーとサン・イル・トマレイでは珍しい髪の色をしている。

 体型は中肉中背でフレイより少し小さいくらいだ。

 今は、アーマーを着るために全身がピタッとしたタイツのような下着を着ている。戦闘用に開発された最も動きやすいと評判のシュレッド・アンダーだった。


 ちまちまとうぜーんだよ。

 闘技場では、シュウトレスが小さな岩の塊と戯れるように苦戦しながら思っていた。


 もう少しだ。

 ガルシアスが思う。

 頼むガウレム達よ、もう少し持ち応えてくれ。

 その思いに呼応するようにガウレム達は正に普段以上の実力を見せていた。

 それは、今までに戦った事がない強い相手を前にし、ガルシアスの魔法自体が研ぎ澄まされ、試合の中で進化を遂げている事に相違ない。


 だがそのガウレム達にも終わりが近付いていた。


 シュウトレスがもう一段階スピードを上げる。

その瞬間から、ガウレム達の攻撃が空を切り始める。

シュウトレスの防御力は80程である。

 そこからなかなか減らない。

 試合時間は3分を切ろうとしている。


 次の瞬間、シュウトレスが、殴りかかってきたガウレム1体の足を掴んだ。

 そして、シュウトレスに噛み付くために飛びついて来たもう1体のガウレムにぶつけた。

 ガウレム2体が砕け散り砂塵になり消えた。


 残るは1体だ。

 だがその一体は他の2体がやられるのを見ると

 シュウトレスから距離を取りだし、避ける方に専念しだした。


 この岩の塊もガルシアスと一緒か?

 この臆病者めが!!

 シュウトレスが怒りに任せ一気にスピードを上げる。


 彼はこういう戦い方が最も嫌いだった。

 戦場ではもちろんルールなんてない。

 しかし、彼の中では、敵前逃亡という選択肢はなかった。


 一瞬で、シュウトレスはガウレムに追いつく。

 そこは、初めにガルシアスが立っていた場所。

 土の魔法陣を地面に放った場所だった。

 

 シュウトレスがガウレムめがけ剣を突き立てる。

剣はガウレムを捕らえ、喉元奥深くに突き刺さる。

そしてそのままガウレムは砂塵となって消滅し始める。


いいぞ!ガウレム!

よくぞその場所へシュウトレスを誘きだしてくれた!!

ガルシアスはそう思い、魔法に力を入れた。

ガルシアスの前の魔法陣が一気に光り出す。


「今だ!いけ!!」

 ガルシアスが叫ぶ。

 その瞬間だった。

 土の魔法陣を放った地面から巨大な拳を握った腕が現れる。

 その拳の真上には、シュウトレスがいる。


 な……何???

 シュウトレスが思ったとほぼ同時くらいに、その巨大な拳は、シュウトレスの顔面を捉え、思いっきり振り抜いた。


 上空へ吹き飛ぶシュウトレス、今度は、その巨大な腕が地面を叩き、もう片方の腕が現れた。

そして次に頭が、身体が、足が、地面から這い出すように現れる。


そのごつい腕は、何個も岩を重ねたように太く、身体は、巨大な岩石で出来ており、足も手同様に太かった。


まさに黒い岩が、何とか人間の形をしているような感じを受ける。そして、足は短いのに対し腕は、地面すれすれまで長かった。


背は、シュウトレスの2倍くらいで、顔は、黒くて表情までがよく分からない。


シュウトレスは、上空で体勢を立て直し、地面に降り立つ。

そして、そのでかい岩の塊を見上げる。


ゴーレムか。

シュウトレスが思った。


控え室では、フレイとフリスレス、コレブン、カリンが立ち上がってモニターに釘付けになっていた。


他の選手も例外なくモニターから目を離せなかった。


「ゴーレムだ。」

 フレイが言う。

 後ろでカリンが目をハートにしながらゴーレムに魅入っていた。

「か・かわいい」


「まさか、ゴーレムが出てくるとは思わなかった。」

 フリスレスが目をモニターから離さず言う。

「初めて見た」

 コレブンが言った。

「俺も」

 フレイが同意する。

 ゴーレムは、召喚する事に時間がかかるのと、魔法の中では最上位に難しいためなかなか使う者がいなかった。

 また、非常に強い魔法のため、体力の消耗も激しく、身体の負担を考えると

いざと言う時にしか使わないどちらかといえば敬遠されている魔法だった。


 シュウトレスの数字が60になる。

 シュウトレスはゆっくりゴーレムを見上げる。


 ふん。面白くなってきた。

 シュウトレスが剣を構える。


 ガルシアスは掲示板を見た。

 あれで、防御力が20減っただけか。

 あいつ、直撃を直前で避けやがったな。

 

そうなのだ。

シュウトレスは、拳が当たる直前に身体をひねり出来る限り衝撃を逃がしていたのだ。


シュウトレスはガングン・ソーラの構えを見せる。


さあ。行くぞ。


シュウトレスが思いっ切り地面を蹴った。


そして、ゴーレムめがけ剣を振り上げた。

ゴーレムも構える。


シュウトレスが剣を思いっきり振り下ろす。

それと同時にゴーレムはその巨大な拳を突き出す。


二人の剣と拳が交錯した。


フレイやフリスレスはモニター越しに見ながら

次の展開の成り行きに息を飲んだ。



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