表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道戦記  作者: taka@
11/20

第10章 闘技演武大会 シュウトレス対ガルシアス

 カーロスとサンクドが話している後ろで、椅子に腰かけながら、テーブルに置いた水を一気に飲み干した体躯のでかい男がいた。


 ドン・バッチだ。

 ドンはゆっくりと椅子から腰を上げると、カーロスの横まで来る。

「で、先日の事件の方はどうなんだ。進展はあったのか」

 とドンが言う。

「そうだな。少しずつ容疑者は絞られてきているようだ」

 カーロスが言う。

「やはり内部の犯行か?」

 とドンが聞く。

「と言うよりも、外部の者が内部に侵入し、何者かに変装しているという見方が濃厚だな」

 カーロスが言った。

 ドンがピクッと眉毛を動かした。

「何のために?」

 とドンが言う。

「それがまだよく分かってないんだ」

 カーロスが言った。

「そうか」

 ドンはそう言うと大きな身体を一度膨らませ、ふうと息を吐いた。

 そして、自分が座っていた席に向かう。

「あっそうだ。でも講師には、化けていない事が分かっているらしいぞ」

 とドンの背中に向けてカーロスが言った。

「だろうな」

 とドンが言い、また元の席に座る。


 一方、闘技場では、選手達が戦う場所の上方に大きな黒い板が設置されていた。

そこには、白い文字でトーナメント表が書かれていた。

 その文字は、白く光っている。

 自然界にある魔法を使った特殊な塗料で書かれており

 魔法で、簡単に消す事も出来れば、書き直す事や、また、演出で炎に包まれた文字を出す事や

文字が氷で包まれて消す事なども出来る。


 トーナメント表は4つのブロックに分かれており、一つのブロックは8人で構成されている。

そのブロックで優勝すると、決勝戦で各ブロックの優勝者同士が戦う事になる。

 その際、くじ引きで対戦者を決め、ブロック優勝者のみでトーナメント戦が行われる。

 そこで優勝した者が、今回の武道会の優勝者となるのだ。


 フレイとフリスレスがトーナメント表を見つめる。

フリスレスはⅠブロックで、シュウトレスと一緒のブロックだ。

 

 対決をするのは、ブロックの決勝になる。

その他、最近魔導士学科でメキメキと実力をつけていると噂がされているジャロスが同じブロックだ。

 ジャロスとは、お互いが勝てば、2回戦で当たる。

「お、いいねえ。シュウトレスと同じブロックだ。しかも、噂のジャロスもいるぜ」

 フリスレスが、武者震いを止められないかのように、少し声を震えさせながら言う。

「俺は……」

 フレイが自分の名前を探す。

「おっⅣブロックだ。初戦は、クトレヒトか」

 フレイが言う。

「そいつも知っているのか?」

 フリスレスが聞く。

「ああ。目立たないが、クトレヒトも相当の実力だぜ。」

「ほう。フレイの方も面白そうだな」

 フリスレスがそういうと、フレイに笑顔を向けてきた。

「ああ、フリスレスと一緒で俺もわくわくしてきたぜ」


 一通り、トーナメントを確認すると、二人は、控室に引き上げた。

 控室には、巨大なモニターがあり、そこから試合を観る事が出来る。


 闘技場の真ん中で、ソフラがアーマーに身を包み、簡単にルールを読み上げていた。

 試合時間は、1回5分、アーマーの防御力をゼロにするか。5分経った後、どちらの防御力が高いかで勝ち負けを判定する。

武器や防具は自由に使用する事ができ、魔法などにも、特に制限はかかっていない。

 つまり、実戦形式に近いルールになる。


ソフラが、一通りルールを読みあげると、鼓笛隊が、学校独自のファンファーレを壮大に奏でる。

そしてファンファーレが終わった後、入場口から一回戦の選手が一人ずつ入場しはじめた。


一人目は、初年度学科のガルシアスだ。

ガルシアスは、勢いよく、入場口から登場すると、持っていた剣を大きく掲げ、観客にアピールした。

身長は、それほど高くないが、整った顔立ちに、魔法も、武術もそつなくこなし、大きな特長がある訳ではないが、逆に他の者に劣るような物もなく、安定して強い男だった。


ガルシアスが、観客に自分をアピールしながら、闘技場に立つ。

そして、一息着くと、次に出てくる対戦相手を見定めるために、入場口を見た。


少し間が空くと、空気が変わった。

入場口が急に暗い深い穴に見える。

観客も敏感に、空気が変わった事を感じとり、コロセアム全体が異様な空気に包まれた。

しばらくすると、その暗い闇の奥の方から、のそりのそりと何かがやってくる。

ガルシアスが警戒する。


少しずつ闇から、何か朧気にやってくるのが分かる。

そして、それは入場口をゆっくりと出た。


これでもかと盛り上がった筋肉、岩のような体躯、周りを威圧するような殺気、どれをとってもこいつはただ者ではないと思わせるオーラを放っている男が立っていた。


シュウトレスだ。


「マジか」

その殺気に、流石のガルシアスも苦笑いをするしかなかった。

シュウトレスが、闘技場に入る。

こう目の前で見ると、オーラで圧倒されそうになる。


「魔法や、力が強いだけで、試合に勝てる訳ではない」

そうガルシアスは自分に言い聞かすようにつぶやき、相手を見た。

そうなのだ。戦場や試合ではいかに力や魔法が強くても、必ずしも勝てる訳ではなく

魔法や、武力を様々組み合わせる事で初めて勝つ事が出来る。


今までにも、多くの偉人達がそうやって戦い勝ってきた。


そう思うと、ガルシアスの方は力が抜け、ちょうどいい緊張感になった。

いっちょやってやるよ番狂わせを


「構えて!!」

ソフラが、声量大きく叫ぶ。


 試合開始のホーンが鳴り響く。

ガルシアスは、大きな剣を両手に持ち、左足を前に出し、剣の切っ先を相手に向けたまますっと顔辺りまで持ち上げる。

攻撃力が高い型、ガングン・ソーラだ。

そして、一度右手を剣から離し、人さし指と中指を、2回、時計回りに廻す。

するとそこに、茶色い見えるか見えないかくらいの魔法陣が現れ、地面に落ちて消えた。

ガルシアスは剣を握り直す。


シュウトレスは、通常の剣を右手に持ったまま仁王立ちで立っている。

構えないのか。

ガルシアスは、シュウトレスを見ながら慎重に近付く。

構えないと言っても、現在この学校最強の男だ。

油断は出来ない。

ガルシアスはそう思いながら少し間合いを詰めた。

まだ、シュウトレスは動かない。

もう一歩、ガルシアスが近付く。

シュウトレスは動かない。

そう思った瞬間、シュウトレスの左手が一瞬動いた。

ガルシアスはその瞬間を見逃さず一気に間合いを詰め、

剣を突きだした。


手応えは……。


ない。


ガルシアスは剣を突きだしたまま、少し横に視線を向ける。

そこにはさっきと同じ体勢のシュウトレスが居た。


か、交わされた。

って言うかどう動いたか見えなかった。


そしてシュウトレスが、剣を持った手を動かした。

と思った瞬間、

ガルシアスの両手に激痛が走る。


「ぐわっ」

ガルシアスが、激痛の余り声を出す。

シュウトレスがガルシアスの伸ばされている手を上から切ったのだ。

実際にはアーマーの上からと練習用の剣なので、切れた訳ではないが、戦場ならこれで終わっていただろう。

剣が虚しい金属音を立てながらその場に落ちる。


闘技場の上にある掲示板にガルシアスと書かれた文字があり、その下に枠で囲まれた100と書かれた数字が、剣で切られたように、右上から左下に閃光が走り、数字が二つに割れたと思った瞬間、新たに21と言う数字が現れた。

一気に防御力が79も減ったのだ。


「ウソだろ!」

コレブンがフレイと、フリスレスがいる控え室で言った。

コレブンは、フレイとフリスレスを応援しに来ていた。

「あいつ、強すぎだろ」

「なあ、フレイ、あいつ強すぎるぜ!」

と、唾を飛ばしながらコレブンが言う。

「お前、応援しに来たのかビビらせに来たのかどっちなんだよ」

と、フリスレスが突っ込む。

「そりゃあ、応援しに来たに決まってんじゃねーか!」

コレブンが、当然とでも言うように腕を組み言った。

「でも、すげーなあ。シュウトレスが避けたとこもそうだけど、攻撃したとこも見えなかったぜ!」

コレブンがモニターを見ながら言う。

ほんとにどっちの味方なんだよ。

そうフリスレスが思いながら、モニターを見た。

フレイはじっとモニターを見ている。


このアーマーは、実戦により近付けるために作られた特注品で、アーマーが腕を切り落とされたり、足を切られたりすることを認識すると、その体の部位が使えなくなる。


今、ガルシアスは、両手が切られた事になっているので、アーマーが動きを制御し両手に力が入らない。

剣も持つことが出来ない。


万事休すか。

ガルシアスが思う。


剣は、先ほどシュウトレスに腕を攻撃された辺りに落ちている。拾う事はもう出来ない。


ちくしょう

 ガルシアスがひとりごちる。


 ガルシアスが一旦距離を置くと、シュウトレスを見据えた。

 そしてシュウトレスがゆっくりとガルシアスの方へ歩く。

 それと同時に、ガルシアスが一歩シュウトレスと距離を取る。

 再び、シュウトレスが一歩踏み出す。

 また、ガルシアスが一歩距離を取る。


 そうやって、シュウトレスが一歩動くと、ガルシアスが一歩距離を取るという行為がしばらく続く。

 その内に、観客から、ブーイングが飛んできた。

「男らしいとこを見せやがれ!!」

「こそこそ逃げんな!やさ男が!」

 

 だが、ガルシアスは一向に間を詰めない。

「いつまで、逃げる気だ。愚か者めが」

 シュウトレスが一人つぶやく。


 「ガルシアスは逃げてるよね。これ」

 とコレブンが不思議そうに言う。

 ガルシアスは、この個人戦の武闘会に選抜されるだけあって

 勇敢な男だった。

 少なくとも、同じ学年のフレイやフリスレスと練習していた時は

 逃げる事など一度もなかった。

 コレブンはそれを知っていたから不思議に思ったのだ。


「うーん。いや。気になる事が一つあるんだ。」

 とフレイがあごに手を置きながら言う。

 フリスレスは、そう言ったフレイの方を目だけ動かし見た。


 コレブンは

「え、何が何が??」

 とモニターとフレイを交互に見つめた。


「もうすぐわかるんじゃねーかな。なんかやりそうだし。ガルシアス」

 とフリスレスが言う。


 チクショー!

 いきなりピンチかよー!!

 もう少し、時間が経ってから、とっておきの物を出そうと思ってたのにー!!

 もう出さないといけねーのかよ!

 まだ十分魔法を練れてねーのにー!


 そうガルシアスは思うと、シュウトレスから走って思いっきり距離を取る。

 シュウトレスは動きを止める。


 何かが始まる?!

 そう思った瞬間だった。

 ガルシアスが地面にあぐらをかいたと同時に、シュウトレスの近くの地面から

3体の小さく丸い石が出てきた。

 大きさはシュウトレスの膝くらいである。


 よく見ると、丸い石ではなく、顔もあり、身体もあり足もある。

 丸いのは、身体の部分で

 中年のおじさんがぽっこりお腹が出ているように見えた。

 その丸い顔をした、短足のおでぶな岩の塊が出てきた。

 顔は柔和そうな顔をしている。


 まさにやさしさなら誰にも負けない親戚のおじさんみたいな顔をしている。


 なんだ。

 シュウトレスが眉を顰める。

 

 今出すしかなかった。

 ガウレム達ごめんよ。

 ガルシアスが思う。


 そして、きっとシュウトレスを睨むと、

「いけ!!ガウレム!!」

 と号令をかけた。


 すると今まで、柔和そうな顔をしていた岩の塊ガウレム達が、鬼のような形相になり

 シュウトレスに飛び掛かった。


 シュウトレスは一瞬ひるんだが、ガウレム達を振り払うために剣を低く地面すれすれに薙いだ。

 

 それをガウレム達は、交わすと、一気にシュウトレスに向かう。


 フレイが目を見開く。

 こういう事か。

 試合前に、土の魔法の魔法陣を地面に放ったのは、ガウレムを召喚するためだったのか。


 「か・かわいい」

 フレイのすぐ後ろから声がする。

 びくっとして、フレイが恐る恐る後ろを振り向く。

 カリンだ。


 か・かわいいか??

 てかいつの間に後ろにいたんだよ。

 とフレイが思う。


 するとカリンは

「ああ。今、いつの間に後ろにいたんだよって思ったでしょ」

と言う。


 ええー!また思考を当てられた!!

 てかなんで、なんでわかるんだよ。

 フレイは、動揺を隠せなかった。


 そんなやり取りを笑いながら見ていたフリスレスが、モニターを見つめ言った。

「見てみろよ。カリンが好きなガウレムちゃん達頑張ってるぜ」


 そのモニターには、信じられない光景が映っていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ