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23、初恋は実らない物である

 はぁ、関東はこの時期でも暑い。弓道は荷物こそ重くはないがただ物が多い。

 弓だって長いし2mくらいあるし目立つしはっきり言って邪魔でしかない。

 それになんでか分からないけど袴を着た後に限ってトイレに行きたくなる。着たまま出来ない訳ではないけれどまぁちょっと面倒くさい、汚れちゃうんだよね。


 今年の選抜は群馬で開催される事になり選抜という事もありよく弓道雑誌で見る人ばかりで溢れている。

 田口さんは全国常連で何度か雑誌に取り上げられている。


「おーしお前ら分かってるな、ここは群馬で治外法権だ1人になってはぐれでもしたら死ぬからな〜」

 担任注意を呼びかける。


 いやいや、同じ日本だよ。偏見で物言うな群馬県民に謝れ!これだからねらーは


「二宮君、緊張してる?そんな時はね・・・顔をパチーン!て叩けば治るよ!」

 割とおもいきり頬を叩く田口さんあー、赤くなってるよ。でも可愛い。


「ごめんそれ多分田口さんしか効かないと思うな」

 苦笑いしながら返す、確かに緊張はしてる。あんまりでかい大会にはこれてないから。

 思い返すとまともに話したの夏祭り以来な気がする。

 あの時は海野の件で一杯一杯だったしな


「でねーこの前座射で待ってる時に足が痺れちゃって立ったとき転んじゃったんだよね〜」


「あるあるだね。結構辛いよね順番待ち」

 他愛のない話をしていると緊張も取れて来て楽になってくる。

 あぁ、やっぱり田口さんと話していると落ち着くな・・・俺、一回振られてるんだよなこの子に。

 田口さんは今好きな人いるのかな?



 何だろう、私緊張してる?顔痛い!思い切り叩き過ぎたよ〜二宮君もなんか引いてる気もするし空回りしてるのかな。最近彼を見てると胸が苦しくなる、圭君の一件以来更に意識している気がする。

 友達の為にあそこまで出来るって凄いよね、関心しちゃう。告白されるまでただの友達だと思ってたし、憧れていた。弓道ばっかやってる私に恋人なんて出来るわけもないし。何しろ・・・彼にふさわしくないんじゃないかな?

 彼は人気者で綺麗な人が周りにいる、私は彼女たち程綺麗じゃないし頭も良くない。ちょっと弓道が出来るってだけの普通の女の子、この気持ちはどっち?好き?憧れ?どうしたら良いのかな?



「あー何とか予選勝ち抜いたな・・・ギリギリだった」


「二宮君お疲れ様、予選通過おめでとう」


「ありがとう。田口さんこそ通過してたね、楽勝って感じがするよ」


「楽勝なんかじゃないよ〜、私だって緊張くらいします。いつもマイナスな事考えていつも大事な場面で失敗しちゃう」

「ねぇ二宮君。二宮君はさ夢を本気で考えたことってある?」


「夢?」


「そう、将来の夢。私はさ弓道でオリンピックに出るのが夢なんだ」


「でも弓道は・・・」


「分かってる、弓道は競技人口が少ないから、まだメジャーじゃないし難しいかもしれない。私はねこの素晴らしいと思える弓道を皆んなに知って欲しい、楽しんで欲しいんだ」

「今は無理でもこれから何十年かけてそれが叶ったら、それって凄いことだと思わない?私はそれを実現したい。知ってた?自分を信じていれば出来ないことは無いんだよ。あっでも時には何かを犠牲にしなきゃ達成出来ないこともあるけどね・・・」

 田口さんは自分の夢を嬉しそうに語る、そんな彼女は俺が見た中で1番輝いて見えた気がする

 あぁ、彼女は夢のために必死なんだ。圭や文香さんの様にそんな彼女に俺が入り込める余地はなかったんだ

 そんな彼女に俺は何が出来る?もう一つしかないだろう。


「はーすっきりした。こんな話二宮君にしか話したことないんだからね!二宮君なら馬鹿にせずしっかりと聞いてくれると思ってたんだぁ、二宮君は夢はある?」

 自分だけ話さないなんて許さないんだからと言わんばかりの表情で聞いてくる


「夢・・・」

 俺は、そんな事深く考えてなかった。

「俺は、ただ皆んなと笑って過ごせてたら、それが夢かな」

 キョトンとした顔で此方を見つめる田口さん、やがてニコッと笑い


「二宮君らしいね」


 本選が始まり俺は負けてしまったけど田口さんは決勝リーグまで残っている。側から見るとだいぶ緊張しているな。

 ここまで来るとハイレベルな戦いで一本のミスも許されない、本選は4本を2回戦、計8本の命中で決まる。数人が射抜いていき残りは2人になり、そんな時田口さんが矢を外してしまったのだ。

 相手は未だノーミス、残りは2投、場に緊張感が漂う。相手は次も当てる。

 田口さんは何とか残り2本を当て、勝敗は相手のミスをするかしないかで決まる

 その時強めの風が吹き相手選手の矢が外れる、同数という事で決着は射詰となった。


 相手は先程のミスで集中が切れたのか的を外す。田口さんと目が合った、俺は拳を握りしめ口パクで応援した。

「が・ん・ば・れ」


 届いたのか分からない、けど俺に出来ることはこれしか無い。祈ることしか出来ない。

 田口さん冷静だった、静かに弓を引く


「二宮君最後のあれ届いてたよ、ありがとう。あとね伝えて起きたいことがあるの

私貴方のことが好きだったんだと思う、多分初恋だったよ。これからも友達として宜しくね。」



大会が終わり学校に戻ると大きい垂れ幕が


『田口和恵 全国高等学校弓道選抜大会 優勝』

 部室には優勝した時の写真が飾られており、彼女の夢が一歩進んだ瞬間だった

こんにちは、今回は田口さんの夢について書きました。

ではよしなに


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