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弟子入り、という名の同行スタート

港町の宿の前、朝の光の中で、マリンはすでに荷物を背負って待っていた。


手には、健一が渡したのと同じ種類の串。

かじる仕草まで、心なしか似ている。


「……その食べ方、真似してます?」


「別に。ただの朝ごはん」


「その言い方も、なんか似てきてる気がするんですが」


「気のせい」


即答されると、それ以上追及する気も失せた。



歩き出してすぐ、マリンが思い出したように尋ねてくる。


「ねえ、弟子には何を教えてくれるの」


「弟子じゃなくて、同行者です」


「じゃあ、同行者には何を教えてくれるの」


「……それ、結局同じこと聞いてますよね」


マリンが、にやりと笑う。

三人組とも、レオンのパーティとも違う、遠慮のない距離の詰め方だった。


しばらく、二人は無言のまま街道を歩いた。


(また保護者が増えた気がする……)


ふと漏れた内心の呟きに、隣から鋭い声が飛んでくる。


「今、変なこと考えてたでしょ」


「なんでわかるんですか」


「顔に出てる」


(ニナといい、この子といい、そんなに顔にでてるのかな?……)


内心で頭を抱えつつ、健一は表情を取り繕う努力を、早々に諦めた。



やがて、街道が二手に分かれる場所に差しかかる。


健一は、クローデットに渡された地図を広げた。

マリンが、横からひょいと覗き込んでくる。


「次はどこ行くの」


「まだ決めてません。……どらさんへの土産を探しながら、ですかね」


「どらさんって?」


「師匠です。……まあ、俺が勝手にそう呼んでるだけで、本人は否定しますけど」


「じゃあ、弟子の気持ちくらい、あんたが一番わかるはずじゃん」


「……その理屈はずるいです」


マリンが、得意げに胸を張った。

反論の隙を、うまく突かれた形だった。


「悔しいけど、否定できない」


「でしょ」


「でしょって言われると、余計悔しい」



地図を畳んで歩き出したところで、健一はふと空を見上げた。


今日も、どこまでも青い。


久しぶりに、あの声が割り込んできた。


『ほう。二人旅になったのか』


「(……久しぶりに喋った)」


健一は、小さく息を吐いてから答えた。


「そうなりました」


『悪くない面構えの子じゃな』


「え、今の誰の声?」


マリンが、驚いたように辺りを見回す。


「気にしないでください。長い話になるので」


「気になるんだけど」


「そのうち話します。……たぶん」


マリンは、しばらく不審そうに健一を見ていたが、やがて肩をすくめて、それ以上は追及してこなかった。


「まあ、いいや。あんた、変な人だし」


「よく言われます」


もう何度目か分からないその台詞を、健一は今度は、隠すことなく口にした。



一人旅から、また賑やかな旅へ。


隣を歩く足音が、一つ増えている。


その事実が、思っていたよりずっと、悪くないことのように感じられた。


健一は、荷物の重さを一度肩の上で確かめてから、また歩き出した。


「……次の町にも、串焼きあるといいですね」


「また串の話?」


「大事なことなので」


「変な人」


「否定はしません」


空は、今日もどこまでも青かった。


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