準備
当面の目標が片付くと
外が気になる
結界の向こうに黄色い目がいくつも浮かぶ。
エルダーフォレストウルフ・・・
そういえば鑑定ってあったよな
と自分のスキルを思い出したので使ってみると
【鑑定結果】
- **エルダーフォレストウルフ**
- レベル:8
- 状態:警戒・空腹
- 特徴:群れで狩る森の狼。素早く、連携を得意とする。
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「エルダー多くない?」
『この森は古い森じゃからな』
「名前にエルダーつければ強そうになると思ってません?」
『実際強いぞ、進化個体じゃしな』
「は?進化?」
『そうじゃ』
「そうか・・・シンカ・・・
奥に大きいのいる気がするんですけど!」
『鑑定したらどうじゃ?』
【鑑定結果】
- **エルダーフォレストウルフリーダー**
- レベル:12
- 状態:観察・警戒
- 特徴:群れを率いる個体。知能が高く、隙を狙う。
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「リーダー・・」
怖い。
正直、どこかいってくれないかなぁ。
「鑑定・・もうちょっとこう
弱点とかステータスとかわかるといいんだけど」
『熟練度上げればみえるようになるぞ』
「今必要なのに」
『今は無理じゃな』
エルダービッグボアの時は、ほとんど事故だった。
折れた枝が都合よく刺さって、物理耐性でギリギリ生き残っただけだ。
でも、あいつらは違う。
群れだ。
連携する。
囲んでくる。
しかもリーダーつき。
「……勝てる気がしない」
『今はな』
女神の声は、珍しくからかう響きが少なかった。
『じゃが、準備すれば勝てる』
「準備……」
『おぬしにはスキルがある。適性もある。家も結界もある。食料もある。井戸もある』
「風呂は?」
『ない』
「そこだけ本当に納得いかない」
『狼に風呂は関係ないしの』
「においとか・・」
『風呂入っても消えんじゃろ』
俺は深呼吸した。
結界の外で、狼たちはこちらを見ている。
すぐには襲ってこない。
いや、襲えない。
なら、その間に俺が強くなるしかない。
快適に引きこもるために。
安心して寝るために。
肉を干してもビクビクしないために。
「……どのくらい」
『ん?』
「結界もちます?」
『どうじゃろうな』
「女神の結界ですよね?」
『まあの』
「一週間・・で変わるかわかりませんが」
『ほう?修行か?』
「やれることはやってみようかと」
『いいことじゃな』
「その間にいなくならないかなとも」
『だとよいな』
俺は学習する男である。
無謀と勇気を混同しない男でもありたい。
翌朝。
結界内の敷地はかなり広い。
大きなスーパーの駐車場くらいひろい
「まず何をすればいいんですか?」
『走れ』
「シンプル」
『体力がなければ何もできぬ』
「異世界に来て最初の修行がランニング……」
『身体強化をかけながらじゃな』
「はい」
俺は身体強化を薄くかけて走り出す。
最初は気持ちよかった。
体が軽い。
足が前に出る。
前世の運動不足な体とは違う。
五分後。
「ぜぇ……はぁ……死ぬ……」
『早いのう』
身体強化は万能ではなかった。
体を強く動かせる分、消耗がはやい。
魔力も減る。
無理に使うと、逆に体が重くなる。
「身体強化ってチートじゃないんですか……」
『補助じゃ。使いこなせぬ者にはただの燃費悪化じゃな』
「燃費悪化……」
俺は地面に転がった。
空が青い。
異世界の空は綺麗だ。
俺は死にそうだが。
『いつまでも寝てるでない』
「いや・・たおれて・」
ピカッ
「イエッサー」
『木剣が倉庫にあるのじゃ』
「なんで木剣があるんですか」
『武器はいらぬか?』
「いります!」
「でも真剣のが?」
『つかえるのか?』
「無理?」
『無理じゃ』
「ですか・・・」
俺は木剣を構える。
……構え方がわからない。
『部屋に本がある』
「そうだった」
≪死なないための戦闘基礎≫
パラパラと呼んでいく
「なるほど・・こうか?」
足幅はこぶし一個ぶんくらい
体重は両足か少し前目を意識?
腰の向き。
肩の力は適度に抜くと。
「……お?」
『それじゃ』
木剣を振りおろす。
ぶん。
空気を切る音。
もう一度。
ぶん。
十回。
二十回。
五十回。
腕が・・・。
『井戸の水かけてみるのじゃ』
「え?」
言われたままに水を腕にかけると
少し腕が楽になった
「この水すご!」
『わしが出したのじゃ!』
「ランニングの後に教えてほしかった・・」
徐々に体が覚醒しているような気がする。
俺は木剣を振り続けた。
きつくなったら井戸の水をかけて
『ランニングもするのじゃぞ!』
「まじすか」
『マジじゃ』
まじか・・・
そんな訓練が二日間・・何とか剣の振りがましになってきた・・のか?
訓練三日目
初めのランニング、素振りが終わったころに
『ちょっとステータス確認してみるのじゃ』
「え?ステータスですか?」
ステータスを見ると
剣術(Lv1)がふえてる!
「おおお」
『素人に毛が下手レベルじゃがな』
「それでもいいんです!」
『これから魔法の訓練にいくのじゃ』
「俺の火魔法が火を噴くぜ!』
『火魔法じゃしな。ハエに火を噴いてたな』
「・・・・・・・」
火魔法Lv1。
狼相手には火が有効らしい。
『獣は火を恐れる。完全には止まらぬが、怯ませることはできる』
「つまり牽制用ですね」
『そうじゃ』
俺は手のひらに魔力を集める。
「ファイア」
ぽっ。
小さな火。
俺は少し多めに魔力を込めた。
「ファイア!」
ぼふっ!
あぶなっ
また頭燃やすところだった。
髪は燃えてた。
「うわああああ!」
慌てて井戸に頭を突っ込む
「あぶねぇ・・」
『あ~~はっはっはhっ・・ヒィ~ッw ゲホッ、ゲホッ
・・・・・・・・・w』
・・・・・
『本を読めといっとるじゃろうにw』
「そうだった本だ」
>火種ができたら次は火球の魔法です
>火種に過剰な魔力を注ぐと暴発するだけで攻撃魔法にはなりません。
おお
書いてあった・・・
『ぷっwクククww』
ちくしょう・・
>まず火の玉をイメージします。
>イメージが固まったら目標に向けて発射し
>着弾したら爆発のイメージも追加すると瞬間的な攻撃力が上がります
>応用として日がまとわりつくイメージでの発射もできます。
なるほど
火の玉・・・火の玉・・・
小さな火球を飛ばす。
目標の丸太に当てる。
外れる。
また撃つ。
魔力が尽きて倒れる。
これを繰り返した。
次の日
ランニング、素振り、火魔法の訓練を一通りやった後に
女神が言った。
『避ける練習をするぞ』
「え?」
『倉庫に訓練用の魔道具がある』
「また倉庫」
出てきたのは、拳大の木球を発射する装置だった。
要するにピッチングマシーン・・・
「嫌な予感しかしない」
『低速設定にしておく』
「絶対ですよ?」
『たぶん』
「たぶん!?」
装置が動いた。
ぽんっ。
木球が飛んでくる。
俺は横に・・・。
「ぐっふっぅ!」
避けきれず、腹に当たった。
その場でしゃがみ込む
『物理耐性Lv3があるからその程度じゃ』
「これ低速じゃ・・・」
『ほれほれw』
ぽんっ。
「ああっ」
ぽんっ。
「ぐへっ」
ぽんっ。
「ぐふっ」
「ちょ・・いてっ・・まっ・・ぐふぅぅ・・」
木の玉が止まらない・・・
でも続けているうちに
ときどきゾワッとする部分がある
次の瞬間ゾワッとしたところにボールが当たる
「これか……!」
『そうじゃ。考えるな!』
「ぐへぇぇっ……!」
だが、何度も当たっているうちに、少しだけわかってきた。
飛んでくる前の音。
空気の動き。
装置の向き。
体の重心。
俺は学習する男である。
痛みからも学習する。
できれば痛くない方法で学習したい。
今日も井戸の水はすごかった。
夜寝る前に
マジックボックスの使い方をためす
便利収納
だが、戦闘にも使えるかもしれない。
「石を入れておいて、投げる」
『基本じゃな』
「ナイフを出す」
「熱々の燻製肉を出す」
『狼が喜ぶだけじゃ』
「だめか」
俺は庭で小石を拾い、マジックボックスに入れる。
出す。
入れる。
出す。
手元に瞬時に出せるようにする。
最初は床に落とした。
次は足の上に落とした。
「痛い!」
次の日
俺は燻製肉の失敗作をいくつか用意した。
塩が強すぎるやつ。
硬すぎるやつ。
焦げたやつ。
「これを餌にする」
『狼相手には効果的じゃな』
「俺の失敗料理が役に立つ日が来るとは」
『失敗から学んでおるの』
俺は結界の外、ぎりぎり届く位置に肉を投げる練習をした。
狼たちは、まだ周囲にいる。
完全に居座っている。
「粘るなあいつら……」
『獲物と肉の匂いがあるからの』
「俺、獲物判定なんですね」
『弱そうじゃからな』
「なんもいえねぇ・・」
簡単な罠を作る
- 足を取るロープ
- 尖らせた杭
- 逃げ道を狭める木柵
- 火をつけやすい枯れ枝の束
すべて本に載っていた初心者向けのもの。
俺は何度も確認した。
自分が引っかからないように。
自分が燃やさないように。
自分が逃げられるように。
「準備、大事」
『ようやくまともなことを言い出したの』




