表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後まで、Yes。ラインズ、グッド。  作者: 上之下 皐月
32/34

第四章 その3 『意味が通じない事を恐れない。その勇気だけでコミュニケーションはとれる』

「Where are you from?」

それが自分に掛けられた言葉と気付くのにわへいは十秒程時間が掛かった。 

振り向けば眼鏡を掛けたわへいと同い年くらいの青年。

ロードワークでも一緒に走っていた事を思い出す。

ジャージにはKoreaの文字。

「I…I from Japan」

答えた後、一瞬の間をおいてその青年がクスリと破顔する。

その意味を理解してわへいは赤面する。

「I came from Karuizawa」

慌てて言い直す。

「You?」

この聞き方は失礼かなと思いつつとりあえず会話を続けるわへい。

「Me? I came from Korea」

それが嫌味ではなくジョークだとわかり、わへいも吹き出し同時にその青年も笑う。

自分の英語力は全くだが眼の前の青年もペラペラと英語が話せる様子ではなかった。

それでも話そうとする意思は通じお互いが打ち解け合うのを感じる。

「My name is "Kazuhira Morishima"」

「Kazu…hera?」

「ああ、ええと…My friend call me "Wahei"."Wahei" is my nickname」

「"Wahei"?」

「Yes."Wahei" means peace」

「What a good name! Nice to meet you Mr.Peace!」

自分に新たなあだ名が付いたなと心の中で苦笑しながら、悪くないあだ名だとも思う。

青年がチームメイトに呼ばれ、その場を立ち去る。

立ち去った後で彼の名前すら聞いていなかった事に後悔するわへい。

また後で聞いてみよう。

そんな事を考えていると。

「よう、Mr.Peace」

「からかうなよ」

青野に声を掛けられる。

わへいが自己紹介した事や名前を聞き損ねた事を青野に話す。

「アイツか?ええと、シウ…。そう、李時友イシウという」

「シウ…」

「韓国たけじゃない。例えばそうだな。あのチーム」

青野が指差した先にはわへい達と同い年くらいの女性のチームが練習をしている。

一見して他のチームと変わらないが…。

「手話?」

「そうだ。デフリンピックという聴覚障害者の大会に出場するチームだ」

「デフリンピック?パラリンピックではなく?」

「そう。その辺りは宇葉コーチに聞いてみてくれ。その方が早い」

青野がそのチームに向け両手を挙げてひらひらと振る。

すると女の子達も両手をひらひらと振り返す。

「拍手の意味なんだそうだ」

「青野は色々知っているんだな」

「俺も教わっただけさ。こんなのもある」

青野が両手の親指と人さし指で輪を作り、 左肩の下あたりへ置く。

そして左右の手の上下を入れかえながら右方向へ輪を3回空中で作る。

「オリンピック」

「おお!」

わへいが感嘆の声をあげる。

「お前相手に話してると反応が面白くて飽きないよ」

「だろ?」

という返答と共にわへいの首に二本の腕が絡まる。

ヘッドロックで固められるわへいの頭。

「ぐへっ」

「お、教科書通りの良い反応だな」

何が教科書なんだかとツッコミを入れたいが喉元にも腕が食い込み声が出ない。

「松山、本気で締めるなよ」

「こいつを倒すには…まぁ、30%ってとこか。そしてこれが60%」

「ブ…V3(ぶいすりゃぁ)!」

両手でヘッドロックを外すわへい。

「外しただと!?」

腕は外したがまだ松山京が後ろから再びヘッドロックを掛けようと抱き着いてくる。

松山はわへいを合宿に誘った張本人で、身体は女性だが心は男性。

本人は男同士で戯れているつもりでも、わへいからすると背中に胸の感触があり冷や汗をかく。

「松山。ホールは神聖な場所だぞ。じゃれるな」

青野に窘められて松山がヘッドロックを解く。

「松山はほんとにわへいクンが好きだな。はしゃいじゃって困っている」

「波長が合うんだよな。森島とは」

「僕が合わせてるんだ」

「合わせやすいだろ?似た者同志だな」

「言ってろ」

「外でやってくれよ」

注意をしながらも二人を見つめる青野の目はどこか優しい。

「青野クン、練習の時間過ぎてるけど?私との約束は?」

「莉子、悪い。すぐ行く。すまん。わへい。抜ける」

いかにも気が強いです、と言わんばかりの鋭い目付きの女の子がポニーテールを揺らしながら去り、それを青野が追いかける。

蒼士(そーし)センパイ、カーリングしてるとカッコイイんだけど莉子センパイの尻に敷かれてるんだよな」

「今の女の子はdie sonne(ディゾネ)の?」

「そ。セカンドの宇葉 莉子(うば りこ)先輩。宇葉師匠…宇葉コーチの娘さん。MD(ミックスダブルス)も組んでる」

「付き合ってる?」

「たぶんな」

ああいう子と付き合うと大変だろうな、とわへいは他人事で考え、苦笑する。

きっと自分も相当癖の強い女性と付き合っている。

『リューリは元気だろうか?』

そして不機嫌な彼女の顔を思い浮かべる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 久々に続きが読めてうれしかったです 更新頻度は気にしてませんので、 ご自分の満足のいくようお続けください 感想への返信も、ありがとうございました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ