華やかなパーティー
ニューヨークの巨大なパーティ会場は、世界中、いや宇宙中の要人が集まるとだけあって、厳重な警備が敷かれていた。
そこに、1台のバイクが乗り付けた。黒いライダースーツに黒いヘルメット。背中には物騒な形のショルダーバック。たまたまそれを見かけたある大統領は、一瞬チームジパングと名乗る、真の自由さを持った日本のスパイの存在を思い起こした。
ライダースーツの女は、バイクを颯爽と止めると、報道陣やセレブであふれかえった入口ゲートへ向かった。
「お客様……。」
「パーティの招待状はこちら?」
「あ、はい。」
女が差し出したのは正真正銘の招待状だった。
「ええと、ウエキ……ウエキセンカLSSE戦略局戦略第1課長?」
「ええ、そうよ。」
「大変失礼しました……。しかし、このパーティにはドレスコードの指定が……。」
「ここに入っているわ。」
センカはショルダーバックを見せた。
「急遽テラポルトスでの仕事が入っちゃって、ゼロで飛んできたのよ。支度は中でもいいかしら。お手洗いで構わないし。」
「わかりました。でも、一応ボディチェックはしますよ。だからその太ももについてる銃を外してください。」
「太陽系防衛軍の命令で、要人警護もかねた銃の携帯を認められているのだけど……。」
「確認します……。あ、そうでしたね。失礼しました。ですが銃の登録はお願いします。」
「ええ、ベレッタ型宇宙レーザー銃よ。」
「新開発されたものですか?」
「ええ、おしゃれでしょ?せっかくおめかしするなら、持っていきなさいっていただいたんです。」
「そうでしたか……。それではあちらにトイレがございますので。中もマスコミでいっぱいですから、気を付けてくださいね。」
「ありがとうございます。」
センカはそういうと、颯爽とレッドカーペットを歩いた。フラッシュが輝いた。
「よしっ。」
センカはトイレの個室で赤いドレスに着替えた。シンプルで、膝を覆い隠すくらいの長さの、少しふんわりしたドレスだった。髪はポニーテールを少しアレンジした程度のアップスタイルで、大きな飾りは身に着けていない。それでも黒髪と赤いドレスが際立っていた。
「スズナに感謝しなきゃ。」
アドバイスしてくれたスズナに感謝しつつ、センカは最後に赤いリップを塗った。
センカが女子トイレから出た時だった。
「よお。今日は随分めかしこんでるじゃねーか。」
聞き覚えのある声に思わず振り向いた。黒いフォーマルなスーツ姿。
「ユウキ。あんたもきてたんだ。」
「そっちは1人か。」
「ええ。みんな忙しくてパーティどころじゃないって。本当は行きたくなかったんでしょうけど。」
「それこそ慰霊祭みたいな弔問外交みたいな、とんでもない外交合戦になるのは目に見えてるからな……。俺もカズマに拒否られた。行きたくねぇ、戦略委員長が行けと。」
「まぁこのパーティをここまで大ごとにしたのは、例の定期便計画だから、仕方ないか。」
「あれをきっかけに、地上の国々も動き出した。各移民星もだ。正直定期便とは関係ない利害関係も動き出しちまった。」
「ところでさ。」
センカはぐっとユウキに詰め寄った。
「今は敵の、宇宙移民自治政府の戦略委員長さんは、なぜわざわざ話しかけてきたのかしら。」
「きれいだったからさ。」
「うそつかないで。」
しばらく沈黙が続いた。
「君はニューヨーク到着後も、ちょっとやることがあって、市内巡ってから来ただろ?」
「ええ。チームジパングやフェシカ姉妹が残した、スパイ用の支援設備を少し見て回ったの。悪用するつもりはさらさらなかったんだけど、いざというとき頼りになるし。」
センカがひそひそと話した。
「僕は火星にいたから、テラポルトスに降りて、そこからニューヨークに向かった。君とは2時間くらい差があったな。で、テラポルトスで何をもらったと思う?」
「さ、さぁ……。」
「ショウタとカズマ、太陽系防衛軍が集めまくった、今回のパーティを狙った暗殺計画がごまんとあった。お前暗殺計画と縁ありすぎじゃないか。まぁまぁ。で、これもらった。」
翻訳機型の通信機だった。
「メイルの時、コウスケがばらまいた小型人工通信衛星を使う通信機兼翻訳機だ。どうせお前、銃持ってるんだろ。」
「ええ。」
「俺もだ。だから会場で外交合戦しながら、いざというときは……。」
「わかったわよ!」
センカは通信機に向かってどなると、耳に着けた。通信機の奥から、ショウタと思われる「いてえ……。」という声が聞こえてきた。
「リンカがハッキングに成功して、パーティ会場内の防犯カメラをジャックした。もちろん合法的に。」
「まじか。」
「たっぷり暴れてくれよ。」
センカはとほほという顔で、ユウキを見た。
「ああ、忘れてた。」
ユウキはにんまり笑いながら、小さなブローチを渡した。
「小型カメラやGPS内臓だ。」
「ありがとう。」
センカはそれを受け取ると、太ももに隠すように潜ませていた銃をもう一度ドレスの上から触って確認した。
「じゃあ。」
センカとユウキは並んでまばゆい会場に入った。セレブたちの間をぬって歩く。
「センカの今日のToDoを共有してほしいな。」
「絶対しないよ。」
センカは宇宙移民の要人たちを探して後ろを振り向いた。その時だった。
「ああ、君たち!」
向うから見覚えのある顔が近づいてきた。
「ああ、めんどくさい。」
「俺、もう日本人じゃないし!」
「ばか。日本国籍とアス星籍の2つでしょ?」
2人はお互いを突っつきあう。祖国日本の首相夫妻だった。
「こんばんは、総理。」
「お久しぶりです。」
「やぁ、君たちにここで会えるとはな。驚いたよ。」
華やかな外交の火蓋が切って落とされた。
大学が始まってしまい、更新がすっかり滞ってしまいました。
大学では歴史を中心にいろいろ勉強しているので、この物語に反映させたいですね。また時間を見つけて更新していくので、時々覗いて見てください!




