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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【大学生編】ちょっとした勢力均衡
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春と冥府の女神の名を持つ勢力と

いよいよ新章突入です。

大学生になったセンカたちの、日常です。ええ、日常です。

「全員、いいかげんにしてくれ!」

ある夜、タケルの部屋はトウキの怒鳴り声でいっぱいになった。

「ごめんなさい……。」

いつもは当たり前のように、くつろいだり、騒いだりしているチームゼロの10名が、今夜は妙に静かだ。家主のタケルは苦笑いをした。

「まあまあ……。」

「タケルも!お前も被害者だろうが!」

「お前ほどじゃねえよ。」

怒りで暴れまわるトウキにタケルが無理やり水を飲ました。

「おちつけ。」







ことの発端は、定期宇宙便の整備についての計画だった。

航海局航海第1課、LSSE側では、鉄の星ヒルタや緑の星リンネルーアとの定期宇宙便の整備を本格的に進めようとしていた。今まではLSSEが中心となって官営の宇宙船を不定期に出していたのだが、民間の力も借り、定期便を作ることを計画していた。天の川憲章による法整備をきっかけに交流が本格的になるからこその計画だった。

一方、航海局航海第3課、宇宙移民自治政府側でも辺境を含む移民星をつなぐ定期便の整備を計画していた。

どちらも似た計画だった。行先が違うだけ。

そのためニイムラトウキ航海局航海第1課長は、この2つを同時に進めた。共同でできる部分は共同で助け合っていくことにしたのである。これは当然のことであったし、共同で進めていくことでよかった点もたくさんあった。

「ったく、航海局コッチの身にもなれよ!」

まだトウキはわめいている。


計画は順調だった、だがその後、第1課と第3課の意見が割れた。

実際に定期便を運用する際、LSSEと宇宙移民自治政府のどちらが管理をするかということだ。一緒に計画を進めたため、太陽系内外を含めそのままテラポルトスで管理をしたいという第1課と、太陽系内の移民星を結ぶ便は宇宙移民自治政府が管理したいという第3課。

どちらの意見も一理あったため、トウキはその場で判断することを避けた。そしてチームゼロの面々に意見を求めた。10人はあれこれ話したが、結論を見いだせないままであった。幸い急いで進める話でもなかったので、特に結論もなく、ただのたわいもない話として忘れ去られた。

そんなある日、地球防衛を任されている第2軍と、世界各国の軍隊との協力体制についての打ち合わせの席で、ショウタがこのことを口にした。もっとも定期便を含む民間船などの防衛任務も重要であるから、ここで口にしたことは間違いではない。

一方、カズマもこの情報を第3軍側に話した。どちらが管理するにせよ、辺境での防衛任務となれば、カズマたちの手を借りる必要があるからだ。

だが、この情報がどういうわけだか噂話として歪んで伝わってしまった。それを知った独立派の過激な人々が、ユウキとカズマに意見を求めたのである。曰く、定期便の管轄は宇宙移民たちが自分たちで行うべきである、と。また、保守派や革新派の人々も、テラポルトスに意見を求めた。曰く、定期便の管轄は地球でまとめて行うべきである、と。

10人は特に大ごとでもないと思ったので、特に何も考えずにコメントしたのであった。

「そうですね。宇宙移民自治政府としては、宇宙移民たちが宇宙で故郷の地球から自立し、よりよい未来を築いていきたいです。定期便は発展するために必要なものであり、宇宙移民の生活とも密着したものですから、定期便の管理も我々の手で行い、自立の一歩にしたいですね。」

ユウキはこんなふうにコメントした。一方テラポルトス側の意見を求められたウエキセンカ戦略局戦略第1課長は、思わずこんなことを言った。

「ええ。太陽系内外の定期便を共に充実させることが、太陽系の未来には必要です。テラポルトスでしっかり管理運用していきたいですね。」


この2つのコメントに特に悪意はなかった。さらにいえば、これは本心というよりも、それぞれ自分の求められている立場として答えただけであった。

だが、過激な人々はこれに過剰に反応してしまった。地球人の意見は第1課派と第3課派に分かれてしまった。

しかもチームゼロの面々は、議論が白熱することは特に問題ないと思っていた。むしろこのような議論を重ねることでよりよい選択をすることはいいことだととらえた。だからみんな半分面白がって、わざと第1課派と第3課派に分かれて意見を述べた。

こうしてますます盛り上がってしまい、定期便の整備計画を中断しなければならないほどになってしまったのである。


「トウキ、まじごめん。」

「本当に申し訳なかった。」

それぞれがあれこれ言い、なんとかトウキが落ち着いた。無理もない。今まで死ぬ気で進めてきた計画を、ちょっと面白がった大学生の友人たちにめちゃくちゃにされたのだから。

「とにかく、なんとかしてくれ。」

トウキが荒い息で全員を睨んだ。

「これは、センカの仕事だな。戦略担当さん。」

コウスケがちらっとセンカを見た。

「うちは、ユウキの担当だ。戦略委員長?」

カズマもユウキをちらっと見た。

「奇しくも、戦略局内での対立になりそうね。」

「よかった。じゃあLSSE内の内乱で片付きそうね。」

リンカの言葉に、スズナがくすっと笑った。

「でも、もうそうはいかないだろう?」

ショウタが不安げな顔でみんなの顔を見渡した。

「世論は相当盛り上がってる。派手にしっかり終わらせないと、納得しない連中も出てきてやっかいだ。」

「ええ。そうね。」

センカはユウキをちらっと見た。

「LSSE vs 宇宙移民自治政府ってところかしらね。」

「テラポルトスvsプロセルピナ、か。」

ユウキはそういってにやりと笑った。


プロセルピナとは、冥王星に作られたプロセルピナシティのことである。春と冥府の女神の名を持つプロセルピナシティは太陽系辺境では最大の街であり、移民星の自治政府の集合体である宇宙移民自治政府の本部が置かれている場所でもあった。国連宇宙機構やLSSEといった革新派の勢力を本部の名前から「テラポルトス」と呼ぶように、辺境移民再建協会や宇宙移民自治政府といった独立派の勢力は「プロセルピナ」と呼ばれるようになった。ちなみに、保守派は暗殺未遂事件などもあり、最近はめっきり勢いを失っているが、強いて言うなら国連が保守派の穏健な中心勢力に近いので、「ニューヨーク」と呼ばれている。もっとも国連は今でも地球上ではかなりの影響力を持っており、センカやユウキも国連総会は無視できない存在となっている。

こうして、宇宙を巻き込んだ壮大なパワーゲームが、テラポルトスの職員用マンションの一室で始まったのである。


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