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太陽の子供たち ~宇宙に進出した地球人の物語~  作者: さうざん
【高校生編】銃声が守りたかったもの
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第1回天の川銀河会議

ついに、第1回天の川銀河会議が開催された。

天の川銀河の3つの星の代表が集まり、様々な問題について意見を述べていく。

その歴史的瞬間に立ち会えることに、ユウキは興奮を抑えずにはいられなかった。


会議は、鉄の星ヒルタのヒルタポリスの、巨大な競技場で行われた。数日にわたって開かれ、大勢の人が競技場を訪れていた。普段は得点などを表示する巨大スクリーンには、発言者の顔やパワーポイントのデータなどが映し出され、発言者の声が競技場いっぱいに響き渡る。

ヒルタ語とリンネルーア語を、受験勉強の合間に勉強し続けていたユウキとカズマにとって、それはとても愉快な場面であった。翻訳機をわざと切って聞いてみると、まったく違う言語で議論しているのである。それは少し滑稽で、とても素晴らしい光景であった。


今日は最終日とだけあって、人が特に多い。もうすぐ天の川憲章が採択される。その歴史的瞬間に立ち会おうと、3つの星から人々やマスコミが集まっていた。

何度目かの休憩時間になった。いよいよだと人々は噂しあった。

「お兄ちゃん、トイレ行きたい。」

ミノリが兄の袖を引っ張った。

「ミズキも、行っといたほうがいいな。」

カズマがユウキの目を見つめる。

「俺が席を抑えてるから、今のうちにトイレに連れてってやってくれないか?」

「わかったよ。」

ユウキはすこし渋々した表情でおどけて見せた。

「よし、行くぞ!」

人混みをかき分けてトイレに向かう。さすがに混んでいた。

「お兄ちゃんここで待ってるから、トイレに行っておいで。」

「はーい。」

「ありがとう。」

2人が女子トイレに消えてしまうと、ユウキはなんとなく人混みを眺めていた。

「すごい人混みだなぁ。」

思わずつぶやいたとき、一人の男に目が留まった。

「なんだろう。すごく見覚えがあるな。」

必死で思い出す。少し嫌な予感がした。

「まさか?」

一時期、なんどか会った、スーツの男を思い出した。

「最後にあったのは、あの日か。」

テラポルトスの第一食堂で追い払ってからは、見かけていなかった。面白い考えの持ち主だったが、国連宇宙機構をただ悪く言うような姿勢が気に食わなかったのだ。

「あいつ、結構過激……なこと、言う奴だった……よな。」

男の背には、細長い形をした大きなリュックが背負われていた。それに何か嫌なものを感じた。

「まさか……。」

ユウキはそっと上着のポケットに触れた。愛用の銃が冷たい感触を伝えてくる。

会場に入るときに、荷物チェックや身体検査が行われていたが、名前を登録すれば銃を持ち込むことは自由であった。

ユウキは顔が知れていたので、割とすんなり持ち込ませてもらったのである。銃を持ち歩くのは、辺境戦争からの癖だった。いまでも辺境移民を中心に、そんな人が大勢いる。

銃を確認すると、ユウキはじっと考え込み続けた。やがて妹たちと席に戻ったが、それでも悩み続けていた。

「おい、ユウキ。なんか顔色悪いぞ。」

カズマが不安げに声をかけてきた。

「緊張しているのか?」

「ああ。」

ユウキはそうとだけ答えた。









いよいよ天の川憲章が発表された。ショウタは万感の想いで、思わず天の川憲章の第1節をつぶやいていた。

「天の川に住む人々は、いかなることがあろうとも、常に互いを信じあい、共に歩んでいくこと。」

この言葉を刻むために、どれだけの苦労をしたか。ショウタは今までのことを思い出しながら、ゆったりため息をついた。

周りを見渡すと、チームゼロの面々は嬉しそうな顔で、天の川憲章を刻んだ石碑を見上げていた。Z作戦により未来を託されてから、ずっと追いかけてきた可能性が「希望」として現実になった瞬間だった。


会場は割れんばかりの拍手と歓声で埋め尽くされていた。様々な言葉が聞こえる。その拍手の中、センカとメイルとレイアが立ち上がり、天の川憲章の前の台に向かった。

3人は今や、「ファーストコンタクトの3人」と呼ばれ、3つの星の友好の象徴であった。もちろんそれぞれ、大切な人を機械メカで失った。それでも歩み寄った3人は、象徴としてふさわしかった。もっともこの3人はうんざりしているようだったが。







ショウタは拍手を送る人々を見渡していた。観客席を埋め尽くす人々が、一斉に歓声を上げている。まさに「希望」だ。

嬉しくなって、あたりを見渡していると、その中で拍手をしていない人影があることに気付いた。

1人ではない。会場のあちこちにいる。

「まさか……。」

ユウキはその人影が銃を構えているのを見るや、通路に飛び出した。

「お兄ちゃん!?」

「ユウキお兄ちゃん!?」

ミノリとミズキの驚いた声に、カズマが気付いた。

「ユウキ!?」

だが、ユウキはゆっくり銃を取り出して、構えた。








スダーン、ズダーン。

レーザー銃の乾いた音が3発して、人々は静まり返った。

「うっ。」

「いたっ。」

うめき声をあげて、メイルとレイアが倒れた。足から青と緑の血を流している。センカは腕を撃たれ、そこを抑えていた。3色の血が、天の川憲章に飛び散っていた。

ショウタはとっさに立ち上がって駆け寄った。遠目からだが急所は外れている。あたりを見渡すと、銃を構えた影があちこちに見えた。

「まさか!」

ショウタは慌てて弾が飛んだほうを見た。

「ゆ、ゆ、ユウキ……なのか?」

その人影は、よく見慣れた姿だった。

「なんなんだ……。」

ユウキは銃を構えて、何かを狙っているようだった。

「センカ!」

チームゼロの全員が叫んだ。センカはじっとユウキを見つめていた。赤い血がぽとりと地面に落ちた。

「あいつを撃て!」

警備のヒルタ兵たちが、センカの前に立ちはだかり、ユウキを狙った。

再び、銃声が鳴り響いた。













「あ、ああああああ。」

ヒルタの警備兵が、銃を落とした。そのまま震えながら膝をつく。彼の銃口は、センカの脇腹にぴったりとついていた。

発砲した瞬間、警備兵の前に、センカが立ちふさがったのである。

センカの体がどさりと崩れ落ちた。

「うっ……。」

センカは脇腹を抑えた。血が激しく流れている。

「誰も……悪くない……。」

センカは血まみれの手で、警備兵の頬を撫でた。

「誰も……あの人も……。」

そこまで言うと、センカはどさりと倒れた。恐ろしいまでの静寂があたりを包んでいた。






「早く!早く手当てを!」

ハルカが半狂乱になって叫んだ。人々が騒ぎ立てる声がどんどん大きくなる。

「担架で運び出すぞ!」

「いいか、持ち上げるぞ!」

「せーの!」

「お願い!センカを!」

さっきまで議論をしていたメンバーは、警備兵が持ってきた担架に、3人を乗せて、運び出す作業に追われた。意識のあるメイルとレイアは、泣きじゃくってセンカの名を呼び続けた。

その合間にショウタがユウキのほうを見ると、そのあたりには人だかりができていた。警備兵らに、ユウキは連行されていったようだ。その横に泣きじゃくるミノリとミズキを抱えたカズマを見つけたショウタは、センカたちへの対応をハルカに任せると、リンカに近づいた。

「リンカ、うまいこといってカズマとミノリ、ミズキを戦艦ベガに保護してくれ。」

「わかったわ。」

リンカはそっとポケットから携帯電話をとり、メッセージを送った。

「俺がカズマたちを、この後迎えに行く。」

タケルがそっとショウタ告げた。ショウタは頷くと、トウキの耳元でささやく。

「タケルとスズナと一緒になるべく早く戦艦アルタイルと戦艦デネブに戻ってくれ。すぐに動かせるように。」

「わかった。」

トウキはそっと2人に目配せした。さりげなく混乱に乗じて3人が離れる。

「ヒュンベルガー首相。」

ショウタはさりげなく、鉄の星ヒルタ首相に近づいた。彼は部下に囲まれ、あれこれ報告を聞いているところだった。

「何かね。」

「犯人を裁くのは、地球側で行いたいのですが。」

「ここはヒルタポリスだ。我々の法律がある。」

「しかし、容疑者は地球人です。我々には彼を保護する義務があります。」

ショウタの目に、ヒュンベルガーは何か感じたらしい。

「わかった。警備隊に連絡して、容疑者を君たちに引き渡す準備をさせよう。ところでハシモト君。」

シャスタ・ヒュンベルガーはそっとショウタに近づき、周りに聞こえるか聞こえないかくらいの声でささやいた。

「本当に彼の仕業かね?何か裏があるようにしか……。」

「僕からは何も言いません。ヒュンベルガー首相。知らないし、言えないんです。」

ショウタはそう言って敬礼すると、混乱する会場を鎮めるべく動き始めた。

「くそっ。」

思わず日本語で悪態が飛び出す。

「守れなかった……。」

その日、会場内を動きまわった警備兵たちは、ハシモトショウタが時折涙を落としていたのを見かけ、その光景を生涯忘れまいと心に誓ったそうだ。


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