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帰り道

レイア・リンネルーア王女と緑の星リンネルーアの代表団、そして水の星地球の戦艦アルタイルと鉄の星ヒルタの戦艦ベルダーナが、緑豊かなリンネルーア星を出航したのは、それから1週間後であった。


リーヒ女王は、船団が飛び去っていくのを、王宮のベランダから見送っていた。

「リーヒ女王。やはり、不安ですか。」

廷臣のホーリ・ボロウがそっとリーヒに声をかけた。

「こんなところでまで、臣下の態度をとらなくていいわよ。」

「そうですか……では、リーヒ。やっぱりレイアのことが不安なのか。」

「ええ。ちょっとね。」

リーヒは笑った。

「あの子が随分自分勝手なの、知っているでしょう?」

「そういうやんちゃで、自分で考えて動けるところは、あの子のいいところでもあるけれどね。」

ホーリも笑って返した。

「幼いときから見ているけれど、きっといい女王になるよ。」

「そっか。そうだね。」

リーヒはそういって宙を見上げた。

「もう10年前か、ルヒート兄さんとレイピアさんが亡くなって……幼馴染のあんたには、ずいぶんお世話になったわ。」

「父親が必要だからね。もっとも僕なんぞじゃ、ルヒート王の代わりになんてなりませんでしたが、ね。」

ホーリはそっとリーヒの肩を叩く。

「叔母さんとしては、結構感慨深いんじゃないの。あの復讐心の塊だったレイアが、宇宙に旅立っていくって。」

「ええ。本当に。」

リーヒは宙に手を伸ばした。星をつかむ動作をする。

「あの子は、わたしにはできないことをきっとやり遂げるわ。」

リーヒは星がつかめない自分の手を見て、少し笑った。







船団はまず、鉄の星ヒルタに向かった。ヒルタポリスで戦艦ベガと合流した地球の連合艦隊は、そのまま地球のテラポルトスへ帰還することになっていた。

一方、緑の星リンネルーアの代表団は、鉄の星にしばらく滞在することになっていた。センカは、いったんメイルとレイアから離れることになる。

少し寂しいものだったが、センカはすでに他のことで頭がいっぱいだった。新組織の構想を進めなければならないし、緑の星の技術や情報をどう太陽系で生かすかも検討しなければならない。何よりも、高校に通わなければならない。そして、もうすぐ訪れる辺境戦争終結1周年に向けて、動き出さなければならない。


「ふーん。センカって大変なんだね。」

「でも、改めて考えるとすごいよね。」

不思議そうに鉄の星のミネラルドリンクを飲むレイアの横で、パソコンを叩いていたメイルが顔を上げた。

「あんたまだ16歳の学生でしょ。なのに太陽系全体、約100億人の未来を背負ってるって。」

「自分でもびっくり。」

「なんとかならないのか。」

レイアがミネラルドリンクを飲み切ってから言った。

「普通に考えて、おかしいだろう。それにもし、今センカたちチームゼロが何らかの理由でいなくなってしまったら、どうやって太陽系を回すんだ?」

「それに答えられないのが今の太陽系なのよ。」

センカはミネラルドリンクを一気飲みした。

「メイル、レイア。そろそろお暇するね。なんてったって、艦長がいないと作業が進まないって戦艦ベガから苦情が来てしまって。」

「はいはい。」

「またうちに遊びに来てね。」

「もちろんよメイル。レイアも鉄の星ライフ楽しんでね。」

センカはそう言ってバイクのヘルメットをとった。

「あ、センカさん帰るの?」

「あらスタワード。お邪魔してました。」

「次に会えるのはいつごろ?」

「うーん。当分地球にいるかな。」

「そっか。じゃあしばらく会えないね。」

「残念だけど、そのようね。今度地球にも遊びに来て。うちの生意気な弟を紹介するよ。」

「へぇ、楽しみ。じゃあ気を付けてね。」

センカは手をひらひら振って、ノトメイア家を出た。








2か月後、チームゼロは地球で相変わらずの激務に追われていた。

「おつかれ。」

ぐったりした顔のスズナとタケルに、ショウタが飲み物を持ってきた。いつものあの席である。

「もー、予算の計算が面倒すぎる。」

「こっちも、会場の設営がきつすぎるよ。」

「まぁ、慰霊祭だから仕方ないな。」

ショウタはそう言って、自分も飲み物を飲み乾した。

「もう1年経つのか。」

「まったくだよ。」

コウスケが隣に座ってきた。

「よぉ、おつかれ。」

「おつかれ。もう1年だぜ。あれから1年。いろいろありすぎだよ。」

コウスケのつぶやきに、やはり飲み物をもって座り込んだリンカも同意する。

「本当にいろいろあった。」

「ところでリンカ。」

センカが割り込んできた。

「よぉセンカ、おつかれ。」

「おつかれみんな。ねぇリンカ、YURIKAシステムなんだけど……。」

「不具合でも起こした?」

「別に。でもあのコンピューター、開示されていない情報多すぎない? 結構その辺のクレーム対応するの大変なんだよ。この間もそれを出汁に交渉されそうになって困ったんだから。」

「それ、どこの国?」

トウキが割り込んでくる。

「さる自由と正義の国の有名なスパイ組織さん。」

「オブラートに包めてもいないよ、センカ。」

ハルカも割り込んできた。

「まァ……そのうちわかると思う。開示できる情報はもっとわかりやすくまとめるよ、いずれ。」

「ええ、頼む。」

センカはそういってため息をついた。

「よぉ、国連宇宙機構の皆さん。」

カズマとユウキが現れた。

「ひさしぶりじゃないか!」

「元気だった?」

「辺境はどうだった?」

声が次々と飛ぶ。

「ああ、前よりだいぶよくなっていた。もうすぐ避難民の帰還が可能になると思う。」

ユウキが肩をすくめた。

「今回の慰霊祭がちょうどターニングポイントって感じかな。被害の比較的少なかった星から、住民の帰還を始めるんだ。ただ……アスはまだまだかな。」

「そう、でもおめでとう。」

スズナがそういってカズマの肩をぺちぺち叩いた。

「本当に、ありがとう。正直鉄の星と緑の星への対応でいっぱいいっぱいで、辺境の再建に関しては、辺境移民再建協会のあなたたちに任せっきりだったから……。」

「いや、むしろ自由にやらせてもらえて助かったよ。」

カズマがそういって、飲み物を飲み乾した。

「でも、ここから先は難しくなる。機構のより一層の協力が必要不可欠だ。」

「ええ。わかってる。」

ユウキの言葉に、センカは黙って飲み物を飲み乾した。

「明日は寝坊できないぜ。寝坊したらたぶん、チームジパングの誰かに殺される。ひっそりとね。」

ショウタがみんなを見渡した。

「今日は早目にお開きにしよう。」

「はーい。」

「へいへい。」

「了解。」

バラバラと返事が返ってくる。ショウタは一瞬、アルテミスケノン・ベースキャンプでの日々を思い出した。


物語の一番最初に、第1話として予告編を投稿しました!

ストーリーが長くなってしまい、ハードルが高くなってしまったかなと思ったからです。もしよろしければ、そちらもお読みください。

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