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王女

2機の機体が、太陽系防衛軍連合艦隊旗艦 宇宙戦艦アルタイルに収容された。


センカは自分のゼロから降り立つとすぐ、格納庫の隣に収容された白と金の機体に駆け寄った。主計担当の乗組員たちに囲まれた機体のキャノピーがゆっくりと開いた。

先ほどと同じ見慣れない宇宙服のパイロットが現れた。そのパイロットはゆっくりとヘルメットを外した。まとめられた豊かな髪が姿を現す。

肌は白く、髪も白みがかっている。そしてかすかに緑がかっていた。しかしそれ以外は、地球人やヒルタ人とも何ら変わりない。普通の美少女である。

センカもヘルメットを外した。それから、ゆっくり手を差し出した。彼女は戸惑っていたようだが、ゆっくりその手を取った。


「あなた方は何者か?」

突然たどたどしいヒルタ語で聞かれ、センカは思わず口をあけてぽかんとしてしまった。

「言葉……通じないの……。」

「通じている!」

センカは自分もヒルタ語でつづける。

「でも、なぜヒルタ語を?」

「これは……あの『忌まわしい敵』の言葉……。私たち、解析した。わたし、使えるようにした。」

「『忌まわしい敵』?」

「あの機械だ……。お前、倒した。」

「メカのことか……。」

「もう一度聞く。お前は何者だ!?」

少女のきつい視線に、何か悲しいものを感じて、センカは胸が締め付けられるような気がした。

「わたしは、ウエキセンカ。水の星地球生まれです。」

「水の星……?」

「たぶん……。」

センカはそう言って、自分の指先の皮を噛み切った。小さな血のしずくが浮かび上がった。

「血の色が……。」

少女は少し戸惑いながら、自分も指先を噛んだ。緑色の血が浮かび上がった。

「違う星の人……?」

「そのようね……。さっき、もう1人パイロットがいたの覚えてる?」

「ああ。彼女、『敵』と似た戦闘機に乗っていた。『敵』、機械のはずだ。彼女は人だ。助けてくれた。」

「彼女は青い血を持っている。」

センカは自分の赤い血を見せながら告げた。

「わたしたちも、あの『敵』に襲われたことがある。大きな戦争が起きた。戦争が終わった後、ある日偶然彼女……メイル・ノトメイアを助けた。私たちは違う星の人。」

センカは一瞬戸惑ったが、静かに告げた。

「メイルの星、鉄の星ヒルタが作った自衛システムという機械群が、我々を襲った『敵』になってしまった。私たちはいま、それをすべて探し出して、破壊しようとしている。」

少女はしばらく黙って考え込んでいた。やがて、顔を上げた。その姿は、何かに吹っ切れて、堂々としていた。

「私の名前はレイア。惑星リンネルーアの……。」

少女は一瞬戸惑ったが、すぐに言葉をつづけた。

「王位継承者たる王女にして、次期リンネルーア軍最高司令官です。」








リンネルーア王女のレイアと、センカはさっそく作戦を立てる作業に入った。第一作戦室は妙な緊張感に包まれていた。

「メカ……『敵』は戦艦ベルダーナのメイルが作ったプログラムによって、弱体化はしている。しかし油断は禁物。」

「それはよくわかっているわ……。」

レイアが悲しげな表情を浮かべたのを見て、センカは対応に困った。

「リンネルーア軍は、メカと頻繁に戦っているの?」

「いえ。なるべく手出ししないようにしている。」

「そう……。戦艦アルテミスと、戦艦ベルダーナだけでは心もとないし、何よりこの宙域はリンネルーア星のものだから……。」

センカはレイアを見つめた。

「リンネルーア軍の協力も得たい。地球の行政府の代表、国連宇宙機構戦略部長としてお願いしたいの。」

「さぁ、わたしにまだ実権なんてないもの。」

レイアが呟くように言った。

「でも、リンネルーア星に連絡を取って、要請することならできると思う。」

「ありがとう。ご協力に感謝するわ。」

「艦隊戦略長。」

若い戦術士官が、そういって資料を渡してきた。

「メカのデータです。」

「ありがとう。解析は?」

「シイナ艦隊情報長と、ノトメイア技術士官です。」

「ならば信用できる。ありがとう。」

騒がしい作戦室を、レイアは見渡した。









レイアが自身の戦闘機スプレプトの通信機を使って、惑星リンネルーアに連絡し、数隻の巡洋艦が送られてきた。

「ヒルタ語なら翻訳機のようなものもある。意思の疎通はできるはずだ。」

レイアは第一艦橋の通信士に声をかけると、ショウタのほうを振り向いた。

「ハシモト司令官、でいいな?」

「どうしました? レイア王女。」

「勝算はあるのか?」

「ヒルタ軍のおかげで、メカ総母艦を無力化できましたし、戦艦アルタイルと戦艦ベルダーナには強力な主砲を持っています。一点集中で狙っていきますよ。」

「そうか……。」

「ショウタ。」

センカがそっとつぶやいた。

「もう、メカを倒すために特攻する時代は終わった。そう胸を張って言うために、地球に帰るからな。」

「わかってる。」

ショウタはそういった。

「父上、母上……。」

レイアが、ヒルタ語ではない言葉をつぶやいたのを、センカは聞き逃さなかった。その時、ショウタが大声で叫んだ。

「主砲発射!」

数隻の戦艦や巡洋艦から一斉にレーザーやミサイルが放たれた。

戦艦アルタイルも被弾し、時に大きく揺れた。しかし何度目かのレーザーで、ついにメカ総母艦は沈黙した。

そしてついぞこの宙域で動き出すことはなかった。





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