メイルの家
鉄の星ヒルタ、首都ヒルタポリス郊外。
鉄の星ヒルタの太陽は、青白く輝く恒星だった。そのためヒルタは昼も夜も青白い世界だった。加えて、元々鉱物に恵まれた星であったため、植物よりも機械や建物が目立つ星になっていた。
高度な機械化による恵みも弊害もあった。そんな星である。
管理された街路樹が並ぶ郊外の道を、1人の女がバイクに乗って走っていた。この星では自動で走る車が多い中、バイクは珍しくもあり、便利でもあった。
女はライダースーツのようなものを着ていた。いや、ライダースーツなどではない。太陽系防衛軍の戦闘服だった。
地球の未来を作る最前線に立つ少女、ウエキセンカであった。
雨でぬれたヒルタポリスは、その青白さもあって、美しく光っていた。そこを一気に走り抜け、細い道に入る。
そこには大きな建物があった。
「ノトメイア研究所」
の看板を確認すると、センカはその裏側、ノトメイア家の邸宅に入っていく。
「センカ、よく来たね。」
メイルがにこやかに出迎えた。
「ごめんね。他のみんなはいろいろ忙しくて、わたしだけになっちゃった。」
「仕方ないよ。出航は明日だし。」
「うちもすごいんだ。姉さんが明日出航だから、準備がいろいろ忙しくてね。」
「こんばんは、スタワード。」
スタワードは笑ってセンカと握手をした。
「それはそうと、メイル。」
センカは改めて姿勢を正した。
「士官学校卒業と、技術士官への任官おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
センカとメイルはわざとらしく敬礼した。
「まさか、もう任官とは思わなかった。」
「こんな事態になって、わたしが政治的に高いポジションにつく必要が出てきたらしくて、とりあえず軍人になったまでよ。まだ私はヒルタ技術高専の学生でしかないわ。」
メイルは舌をぺろりと出す。
「それより、地球も大変なんじゃない? また人類宇宙委員会やら国連総会やらで派手なことしたんじゃ……。」
「今回は特に芝居がかったことはしたつもりないわよ!」
「へぇ、ほんと?」
「姉さん。センカさん。とりあえず中に入りなよ。せっかく遊びに来てくれたんだから。」
「そうね。」
「おじゃまします!」
随分大きな家だった。しかし部屋の半分も電気がついていなかった。
「姉弟2人だけじゃ、広すぎるのよ。一晩だけでもにぎやかになって嬉しい。」
メイルは寂しげにあたりを見渡した。
翌朝、戦艦ベガを鉄の星ヒルタに残し、太陽系防衛軍連合艦隊の旗艦アルタイルと、ヒルタ宇宙軍の戦艦ベルダーナが出航した。未知の宙域をめざし、2隻の戦艦は宇宙を進んでいった。




